戸越まごめ氏を再評価してみる

 戸越まごめ氏がKeyを離れてからしばらく経ちますが、個人的には思ったほどKeyでの評価が高くなかったのが気になります。そして、Keyとして離脱したのが一番痛かったのは、久弥さんや涼元さんではなく、まごめさんだったのでは?とも思ってます。Keyに入って最初の仕事が、KanonのBGMをアレンジした「anemoscope」の制作だったという話も有名ですね。「anemoscope」は外注で受けた仕事だったようで(入社が決まった後ではあったらしい)、という話です。
 
 戸越まごめさんの曲で、皆さんは何が印象に残っているでしょうか?
 普通のBGMとしては、CLANNADの「は〜りぃすたーふぃっしゅ」が印象的ですが、主には歌曲。作曲としては、AIRのエンディング「Farewell song」が秀逸の一言。その他、「小さなてのひら」「Ana」「Life is like a Melody」などの編曲を手がけるなど、その編曲能力は、もはや音楽は1から10までKey内で完成させてしまえるほどの高さだったと思います。
 特に思うのは、麻枝准作詞作曲の曲との親和性でしょうか。「小さなてのひら」はもちろんなんですが、「Life is like a Melody」も鍵っ子の中では隠れた泣き歌として認知されている歌ですし、呼吸がぴたりと合っている…、そんな印象を受けるのです。共に別のボーカルに提供している歌でもありますし、かつユーザーに強烈な印象を与える仕上がりになっている…。特に「Life is…」のほうは、ゲームの評価が分かれているのに曲自体の評価が高いので、よりその編曲技術の高さも言及しなければならないと思いました。
 
 何でKeyを辞めてしまったか、ですが、やはりKey所属のままでは「折戸・麻枝の万年三番手」になってしまうこととか、あとは「Keyでのポジションが便利屋的だった」(KeyのBBSの管理者をやられていたとか)こととかでしょうかね?
 まごめさんはかなり色んな曲を描けるようで、日常曲から戦闘シーン、そしてベターな曲まで何でもありました。が、ここ一番の曲と言うのは、ほとんど麻枝さんが描いているんですよね。ですから、どうしても麻枝さんの曲の印象の方が大きい、と。折戸さんは歴史もあり、歌曲はすべて親しみやすいメロディーラインで描かれているので評価が下がることは無い…。まごめさんがメインで曲を描くようになってから、折戸さんはかなりサボり気味ではありましたしw(智代アフターではメイン作曲でしたけど)
 麻枝さんと折戸さんが描けない曲を描いて、なおかつKeyの曲のクオリティやレベルを総合的に上げた立役者は、戸越まごめさんの他にいないと思いますし、Keyの楽曲がこれだけ脚光を浴びるようになった一翼以上のものを担っていたとも思います。それだけに、リトバス途中で離脱したと言う話を聞いたときには、本当に落胆したものですが…。
 しかしながら、Keyから離れたまごめさんが、いち作曲家として評価を不動のものに出来るかどうかはまた別問題です。評価の高い曲をいくつも手がけていたのは事実ですが、Keyのシナリオがあったからこその部分もありますから。他所でも、凄いシナリオ・ゲームに出会えるかどうかは全くわかりませんし、音楽単体のみでギャルゲーは売れませんしね。
 またいつか、興味を持ったゲームがまごめさんの音楽だった時は、じっくりしっかり聞かせてもらいたいものです。