伊吹風子は「ぷち幻想世界の少女」だった?〜CLANNAD、CLANNAD AFTER STORY 考察

 ニコニコ動画CLANNAD AS関連のを見ていたんですが、コメント欄での風子への理解度の低さに少しだけ驚きました。とは言え、ニコ動でコメントを書くようなユーザーって若い人たちでしょうし、原作をプレイしてなさそうな感じだったので当然と言えば当然でしょうか。アニメだけでは読み取ることが不可能な部分が多すぎますんで。例えば風子がAFTERでデレた場面。バカデレなどと称されていますが、あれもちゃんと伏線があるんですよね。
 色々とありますが、個人的にはタイトルどおり『風子は「ぷち幻想世界の少女」だった』という解釈です。意味がわからないという方はともかく、「風子は幻想世界の少女によって助かった」と解釈している方、たぶん違います。僕の解釈では、ですけど。ま、この前のCLANNADの考察記事でたくさんのコメント・解釈を頂いて、人の数だけ考察ってあるんだな、と思うので僕のが正しいとは言い切れませんけども。それでもそれなりに自信がある考察だったりします。
 ただし、長文ですのでそれなりにご覚悟ください。
 
 まず言えることは、風子は「学校における幻想世界の少女」であることです。意味フという方にわかりやすく、幻想世界の少女との関連性を説明していきます。学校編(アニメ一期)ベースです。AFTER編以降の風子とは別なので区別してください。
 風子は、学校にいます。しかし、病院で寝たきりの状態でもあります。二人の風子が存在しているということになります。まあ、学校の風子は幽体離脱とか幽霊とか色々と言えそうですが、ここで注目したいのが、風子は公子さんが結婚したいけど風子が回復しない限りはできない、ということを風子が知っているということです。風子はもちろん、公子さんとは話せませんし、学校の風子は会う事も公子さんが見ることも出来ないわけです。なら何故その情報がわかるのか? おそらく、寝たきり状態の風子は公子さんの話す言葉とかは聴こえているんじゃないかということです。芳野さんのことも「ユウスケさん」とはっきり知っていましたしね。公子さんが寝たままの風子に名前を言ったんじゃないかと思います。事故前に話していた可能性もありますけども。
 つまりは、風子は意識のある状態で二つの場所に存在している、ということです。
 CLANNADにおける「場所」の概念も個人的には「世界」と解釈しています。例えば、学校編であれば「学校という世界」、そしてAFTER以降であれば「町という世界」という風に。もちろん「学校」は「町」に内包された小さな世界ですが、「学校」というのも独立した世界だと考えています。そして、「学校」という世界で「生きている」のが、学生の朋也であり渚であり、そして実体化してしまった風子である、という事です。朋也と幻想世界の少女が、現実世界と幻想世界の二つの世界で意志のある存在として実体化しているようなことが、風子でも起こっている…という概念ですが、理解できる文章になってますかね?
 朋也と渚(幻想世界の少女)の出会いは、朋也が「この町が嫌いだ」「学校が嫌い」という、本来なら感情を向けるはずのない「場所(世界)」へ負の感情を持っていたために、他の生徒(場所・世界のことに感情を持たない・関心が無い)では見つけられなかった渚の中にいる少女を見つけることが出来たわけです。あの出会いの瞬間から、幻想世界での少女と人形(光の玉)が生まれたわけで、CLANNADが始まった瞬間にもなりました。
 同じようなことが朋也と風子にも言えます。朋也は風子を、たまたま通った空き教室に入るかどうかで見つけることになります。が、風子は朋也以外には見つけられないんですよね。それは何故か? 少女と同じパターンです。風子は、学校に対しての思いいれや公子さんが結婚して欲しいという願いが、学校で具現化をしてしまうくらいの強い感情の持ち主ですから、当然学校が好きだと言えます。対して朋也は学校が嫌いです。だからこそ、そんな思いのカタマリでしか無かった風子を見つけられたのでは無いかと。だから実は、朋也と風子の出会いって、あの印象的な朋也と渚の出会いくらいのインパクトがある…はずなんですけどね(汗。ただ、風子がなぜ学校で具現化できたのかははっきりと描かれていません。タイミングとしては、朋也と渚が出会ったくらいなんでしょうけども…。ヒトデ作りが最初は全然下手くそでしたからね。その後は徐々に上手くなっていったところを見ると、まだ彫り始めて間もなかったんじゃなかろうかと。朋也と渚という、二つの世界で存在する者が出会う、という「町という世界」ではとてつもなく大きな事があったために、風子もその影響を受けて具現化できたのではなかろうか?と考えていますが…。
 あとは、風子シナリオで風子は何故消えなければならなかったのか? というか、消えていったのか?ですね。これもある程度は幻想世界の少女と同じような解釈が出来ると思います。
 風子シナリオでは、まずは関係の浅い大多数の無名の生徒たちから無視されだします。そして、入院して眠ったままの風子を見てしまった人間は問答無用で記憶から消されてしまいます。ここは、本来であれば二つの世界が見えないような人間では、二つの風子は認識できない〜現実の風子の記憶を上書きしてしまうんだろうと。何せ、春原とか早苗さんとか、学校で具現化した風子に親近感を持って接してきた人間が忘れてしまうわけですから。想いが強すぎる早苗さんは、ああやって抗うわけですが(風子を迎えようと、全く違う方向に歩いていって「見えないんですっ」って泣き叫ぶシーン)。そして次には、近かったはずの渚や朋也でさえも忘れ始めます。
 ゲーム本編の渚は、途中までは渚ルートと共通で進められる仕様になっていて、途中で演劇部再興を渚が断念するというイベントがあります。その後は完全に渚と風子は姉妹のような感じで進んでいくわけですが、ラスト手前で渚は例の病気でダウン。回復もしないまま、芳野・公子さんの結婚式にも出席しないままでフェードアウトしてしまいます。アニメではちゃんと出席しているんですけどね。ただこれも、意図のある演出だったんだと思います。恐らくは、二つの世界に存在する者が三人もいるという状況が異常だったんじゃないかなあと。それに、「町」という世界の象徴だった渚(の中にいる少女)と、「学校」という世界の思いが具現化した風子は、惹かれあう一方で拒絶反応も起こしたのかもしれません。それを窺わせるのが、渚シナリオ〜AFTERでの風子の登場の仕方です。渚シナリオでは、風子ルートから離脱すると一切出てきません。そしてAFTER。渚が死ぬまで一切出てこないのはアニメでも同じでしたね。要は、渚と風子は共存できない関係だったのでは無いかと言う事です。じゃあ風子と汐は??となりますが、それは後述します。
 朋也が風子を忘れ始めたのは、風子自身の生命力が弱ってきたからでしょう。この辺になってくると、AFTERの朋也と汐の最悪の結末と重なってきます。朋也と風子って、相当に強い絆があったと思うんです。が、そんな朋也でも忘れ始めた…幸村の一言で思い出しますが、何とか記憶をとどめたのみで、結婚式の場面ではやはり風子自身のことは忘れてしまってます。これは、二つの世界で存在しているけども、本体が生命の危機になれば、もう片方の存在も希薄になってしまうのでは無いのかということです。むしろ風子シナリオで説明するよりも、汐編と幻想世界の最後で説明するほうが早いですかね。要は、風子自身の生命力が弱ってしまったために、人と人との関係を保てなくなってしまった、という事です。汐編の最後でも同じようなことが起きてますよね。ま、汐編の最後と風子が違うのは、最後の最後で風子は自身の願いである「公子さんに幸せになって欲しい」ことと「たくさんの友だちと祝ってあげたい」ということを実現したことや、「自身で公子さんにヒトデをプレゼントできた」というオマケまで実現できたことです。これは、風子は目標を達成するという思いが強かったから+サポートする朋也が最後の最後まで風子の夢実現のためにサポートし続けたからこそでしょう。
 あとは、風子と公子、そして幸村の存在です。風子シナリオについては、幸村先生の存在が大きく関わっていると考えています。
 まずは、前述の、朋也が一旦風子のことを忘れますが、結婚式の準備をしている幸村に、朋也が結婚する公子さんの妹は誰だったかと聞くシーンがあって、そこで幸村は「伊吹…風子だったかの」と名前を出します。実はこのシーンの前に、公子さんからは「ふぅちゃんが…」と、風子のことは話題に出てました。が、朋也の認識の中では、学校にいる風子は「風子」で、公子さんや渚がいう「ふぅちゃん」では無かったのでしょう。だから、いくら「ふぅちゃん」と言われても、どのシナリオでも朋也は、風子シナリオの風子を思い出しません。
 そんな中で幸村ですが、幸村ってこの学校の象徴というか、想いを背負った人物だと思うんですよね。今は進学校って感じですが、もっとやんちゃな生徒がたくさんいた頃からの生徒指導の教師で、でもいい子ばかりの学校になってしまい、閑職になってやりがいも無くしたまま定年を迎えるだけの老教師だった。それが、朋也と春原という二大バカを卒業させる、という最後の仕事を与えられて、やりがいを取り戻した、という感じです。それはたぶん、本来であれば学校が、勉強を教えるだけの場所=世界ではなく、人間性を育てる場所だという昔の本分を取り戻すという意味合いもあったんでしょう。そんな古い学校の想いを持っていたのが幸村だったのでは無いかと。ですから、少し気持ち悪いですけど、学校における幻想世界の少女というのは、学校への強烈な思いと姉の結婚式を成功させたいという想いだけで具現化してしまった風子と、学校という場所・世界が持つ想いを持っていた幸村とが合わさったようなものではなかったのかな?と思うんです。
 幸村は、風子にかなり関わってきます。例えば、風子ルートの一日教師役は、アニメでは早苗さん一択でしたが(ならAFTERの古河塾イベントは入れるべきだった気が…)、原作では幸村との二択になります。とぼけながらも、いい感じで教師を引き受けてくれます。早苗さんVer.もいいですが、幸村Ver.もなかなか味があって良かったです。そして、朋也が風子のことを一旦忘れた後に幸村の一言で思い出す場面。あとは、幸村エンドで公子さんが風子のことを語る場面…など。幸村エンドは風子とは直接関係ありませんが、公子さんが風子のことを語る場面で朋也は、風子のことを認識していないにも関わらず、風子のことを思い光の玉を送ってます。ここのイベントはかなり繊細で、ゲーム上では色々なフラグのカラミが関係してきます。幸村エンドを通るまでに光の玉をゲットしていない場合、光の玉を送るイベントが発生しないために、例えその他の全シナリオをクリアしたとしても、AFTERで風子が登場しません。光の玉を持っていたとしても、風子シナリオをクリアしていない場合には同様の現象が起きます。そして幸村エンドってどういう位置づけか?と言えば…幸村が本懐を遂げたエンドでした。アニメでは普通にそれでしたが、朋也と春原が幸村に「ありがとうございました!」と言って卒業していくエンドです。最後の仕事だと思っていた朋也と春原の二人を無事卒業させるということを遂げた上に、感謝までされて卒業していくんですからね。光の玉が降りてくるに相応しいエンディングだったと思います(実際のゲームでは、誰とのルートにも入らずに進めれば入れるエンディングなんですがw)。
 つまりは、学校の本来あるべき姿にやりがいを感じてなかった幸村が、最後の最後で本懐を遂げた=学校に対する未練が無くなった瞬間とも言え、風子が学校という世界から解放されたのではないか、と思うのです。幻想世界の少女が幻想世界の最後のパートで「もう十分だよ」などと語った部分にも通じるものがありますよね。少女は人間であること、人から愛されることの
 あとは、幸村は「学校にいる風子」と「事故に遭った風子」の両方を知っている唯一の存在なんじゃないかと。加えて、学校にいた公子さんの記憶も併せ持つ存在ですからね。美人ランキングでも最上位と認識しているくらいですからw
 町の歴史をすべて知っている(はず)の少女には敵いませんが、幸村自身もおそらくは40年前後の学校の歴史を知っている人物です。なので、学校という世界を象徴する存在にまでなっているんじゃないかって思うわけです。
 そんな幸村と風子。直接の接点はありませんが、学校という世界においてこの二人の関係性はとても重要じゃないかと思います。何せ、幸村エンドで風子を想って光を還さないとAFTERで風子は復活しないんですからね(もちろんトゥルーエンドでも)。渚の卒業式でもゲスト参加していますし(恐らくは、学校の歴史上で一番の美人教師だった公子さんの最後の教え子だった渚が、一人残されているのが気がかりではあったため? 演劇部繋がりかもしれませんけど)、「学校」という世界の括りにおいては、これだけ重要人物はいません。
 幸村のことを書きすぎましたね(汗。風子についてに戻ります。とは言え、書きたかったのは幸村と風子の関係についてなんで、もうほぼ書ききってるんですが(さすがに)。
 風子編の最後で、風子も想いを遂げます。朋也が頑張ったおかげでオマケまでついて。その後、原作の風子シナリオでは風子が復活するんですが、それは何故でしょう? 個人的には、既に「学校という世界」から離れて、在校生は誰も知らない存在だったはずの公子さんの結婚式に、大勢の在校生が集まったという「奇跡」が起こっているわけで、そんな幸せな場を祝う=心を一つにする瞬間が起きているわけです。それに、風子が地道に配ったヒトデも効力を発揮しているわけです。
 以前のエントリでも書きましたが、風子のヒトデって「星=光」だと思うんですよね。本人がヒトデにこだわる理由は、風子自身の誕生日が旧海の日(7月20日)設定だと言うことからわかるように、海属性を持ったキャラだからです。そこから渚〜汐へとも繋がるという話ですから。
 まあそんな光の玉みたいな存在のヒトデを多数の生徒に配ったわけですが、公子さんの結婚式の後もヒトデは消えていませんでした。しかし、風子の記憶自体は消えています。ただその後、ちっこいのが姉の結婚式を祝おうと頑張っていた、という「感覚」だけは残っているんですよね。その「感覚」が「思い」に変わり、多数の生徒が「願った」ことから、風子シナリオでは短時間で復活を果たしたのでは無いかと思うんです。それこそ、学校という世界で奮闘していた風子のことを思う力が集まった結果では無いかと。そこで、風子が渡した木彫りのヒトデたちも、そんな思いを結集して眠れる風子に届けるキッカケになったのかもしれません。
 これって、幻想世界の少女が最後に具現化したのと似ているんですよね。「小さなてのひら」を経て、朋也たちとの旅行を完遂した少女は完全に思いを遂げます(その旅行を見守ったことが、思いを遂げたのかもしれませんが)。そして、抜け殻同然だった少女は、朋也が作った新たな光の玉(街灯だったり町に住む人たちの団欒の明かりだったり)=想いで具現化してしまった姿が、あの最後の場面だったのではなかろうかと。要は、もう思い残すことが無いくらいだったのに、予想外にこの世界に戻ってしまったってあたりが、AFTERの風子とトゥルー後の少女が似ている点です。トゥルー後の少女を風子が見つけられた理由は、風子自身がAFTER汐編で、汐の(中にいる少女)のにおい(という感覚)を記憶していたからですし、風子自身が病院という場所=世界を嫌いだという感情を持っていたからこそ、「願いが叶う場所」というあの場所=世界が好きな少女を見つけられた、という解釈が出来るわけです。
 
 …6500字とかどんだけww いや実は、これでも全然書き足りて無いわけですが(ぇ、ここまででも2日間掛かりましたが、これ以上は流石にブログ記事としてのまとまりを欠くので止めておきます。要は、風子は幻想世界の少女を作品内でオマージュしたというか、示した姿だということです。AFTERで風子が朋也にバカデレしたって説明までは至らなかったのが残念ですが。でも、ここまで読んでくださる方がいたらそれだけで嬉しいです。風子の地位向上に少しでも貢献できれば…。風子かわいいよ風子。