『俺と俺たちのバレンタインデー』(リトルバスターズ!恭介中心SS)

『俺と俺たちのバレンタインデー』



「今日はバレンタインデーですよー」

 リトルバスターズの和み部隊隊長の小毬がそう発言した。ちなみにリトルバスターズの和み部隊の隊員は彼女一人だが。
 その刹那、彼女いない歴=年齢の俺たちは固まった。
 いや、まあ俺はチョコレートくらい貰ったことはあるし、理樹もそれなりに貰えていることは把握している。だが今年のバレンタインは……違う。リトルバスターズが拡大して初めてのバレンタインデーだからだ。
 特に、銀髪のパイナップルヘアーの胴着姿の大男と、短すぎる学ランとハチマキ姿の大男の二人は、明らかに動揺して見えた。……うん、まあ二人の外見を説明していて、こいつらにバレンタインなんて無理じゃないか?って思ってしまった。……すまん。真人、謙吾。

「あれぇ? みなさんどうしたんですかー? 私なにかおかしいことでも言ったかなあ?」
「いや、いやあ、違うんだ。別に動揺なんてしてないんだ。なあ! 真人、謙吾」
「「!!!」」

 そう振っておいて俺は後悔していた、あいつらの動揺が加速していくのを見ていて……。火に油を注いだようなものだからだ。
 事実、二人は俺のフリには何も反応出来ていない。

「ふえっ、そうなんですか。よかったあ」

 自己完結してくれる小毬。正直助かった。小毬が深く詮索してこない性格で。ああ、お前は良い子だなあ、と思わず頭を撫でたくなったが、あまりに馴れ馴れしいので自重した。何者だ、俺は。

「今日はバレンタインデーなので、いっぱいお菓子を持ってきました」
「おおっ」
「あんまりたくさんだったのであたしが手伝った」

 と、後ろからひょいっ、と顔を出すわが妹。さっきからいたのか……。俺たちの動揺が見られていなかったのかが心配だ。何せもう俺の「良い兄」ポイントは底を尽きかけてるからだ。

「心配せんでも、とっくに底を尽いとるわーーーっ!」

 激しいツッコミとともに飛んでくるしなやかで細い脚。俺はそれを避け切れずに直撃を食らった。

「おふぅ……」
「鈴ちゃんダメだよー。そんなに恭介さん蹴ったら……。真人君みたいに頑丈じゃないんだから」
「大丈夫だ。こいつはこんなのでダメージを食らうようなタマじゃあない」

 小毬のフォローは助かったが、何気にひどいことを言ってるような……。
 それに、愛する妹に蹴られ続けててダメージの無い兄なんて、この世に存在するのだろうか? いるとしたら、俺なんかとは比べものにならないほどのマゾヒスティックなド変態だろう。そんな兄の気持ちになってみたいと一瞬でも思ったが、そうなってしまえばもう人間として終わりな気がしたので自重することにした。
 しかし、心の中のつぶやきにまでツッコミのハイキックを入れるとは、お兄ちゃん泣きそうだ……。

「では謙吾くん、真人くん。どぞー」

 いくつかの机を引っ付けて作ったスペースに、袋いっぱいのお菓子を二人が出した。
 チョコレートがメインなようだが、アメやらスナック菓子やらドーナツやら、バラエティ豊かなラインナップだ。……と言うかこれっていつも小毬が持ってるようなお菓子だよな? 量は多いがあまりいつもとの違いは感じないのだが……。

「な、なあ……いいのか? 神北」
「そうだぜ? 今日はバレンタインだぜ? 俺たちに……本当にいいのかよ?」
「おまえらにやるとは言ってない」
「「えーっ」」
「もう、りんちゃんもいじわる言わないでー。もちろん、謙吾くんや真人くんにあげるために用意したんだよー」
「すまない……ありがとう!」
「へへっ。くそっ、涙が出てきたじゃねえか」
「良かったな、お前ら」
「おうよっ」
「おうともっ!」

 二人の大男がバレンタインに義理チョコ?で涙している……。二人からすれば感動的な出来事なんだろうが、どう見ても滑稽にしか映らない。何だろうか? この、本人たちが発している空気感と、周囲の空気感の違いは……。
 

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