舞台の高低差が意味するAngel Beats!の世界観とは?〜Angel Beats! 考察

 episode_zeroさんの記事を興味深く読ませてもらったところで、その中に出てきた『「天」から「地」へと徐々にその視線の行方を変化させている』という部分が非常に引っかかりました。というか、麻枝准的な世界観を考えると、確かにここ最近の傾向として、空から地へと変わりつつあるからです。

 まあそれとは間接的に関係することですが、Angel Beats!において、その舞台にはっきりと高低差が描かれていることは言わなくてもわかるとおりだと思います。そして、物語が始まる1話においても、最終回においても、音無は校舎から階段を降りる描写が入っています。「下っている」んですよね。これはどう考えても何かを示唆していると思うのです。そこで、色々な場所の高低差を考えてみることにします。

 AB!の世界の中で一番高い場所にあるものは何だろう? と考えると、校長室なんですよね、確か。校長室はもちろん、死んだ世界戦線(SSS)の本部がある場所です。
 低い場所には何があるだろう? と考えると、視認できるものでいえばグラウンドですよね。マニアックなところでいえば、魚釣りをした川が一番低い場所にあるようです。見えない部分で言えば、地下にあるギルドですし、AngelPlayerが管理されていた第二コンピューター室が「低い場所」に当たります。これが示しているものは何でしょうか?
 これは、オープニングを見ればわかる気がします。やはりこの世界に来る→降りてくる(落ちてくる?)という意味でしょうし、昇天する→天に昇るということだと思われます。
 つまりはどういうことかと言えば、高いところこそ昇天に近い場所を示しているのではないかということです。とはいえ校長室で昇天したメンバーはいないわけなので、そこにいる、所属しているってことが昇天に近いということを示唆しているのだと思われます。逆に、例えば13話でいつの間にかNPCが復活している(あるいは見えているだけ?)のは何処かといえば……グラウンドなんですよね。この高低差こそが、戦線メンバーとNPCな生徒たちとの決定的な差を生み出しているように思います。
 ガルデモが歌うのは何処かといえば、体育館ですが、ガルデモの立つ場所はステージですよね。一般生徒たちはその下にいます。更に言えば、ゆりは必ず高い場所にいたりします。やはり高低差を描いているんですよね。
 ちなみに戦線メンバーがグラウンドなど低い場所で活動したのは数度あります。例えば、前述の魚釣り回。学校から出て川で釣ったわけですが、その後に一般生徒たちに魚を振舞ったのはグラウンドでした。あとは野球回ですよね。一般生徒たちに混じってやってました。魚のときと野球では意味合いが違ってくると思いますが、野球は一般生徒たちのルールに則ってやったものですよね。つまり、戦線メンバーがNPCたちに合わせた、とも取れるわけです。逆にガルデモライブなどは、戦線メンバーの側に一般生徒たちを引っ張ってきた、となります。
 では地下は? ギルドは? となりますが、ギルドと第二コンピューター室が同じ地下にあったことで、マテリアルを生み出すものが地下という役割で間違いないでしょうね。麻枝准の頭の中はよくわかりませんが、地下=資源という考えで、生成していく場所、という考えだったのかもしれません。それがAPの場合にはプログラムだった、というだけで。この世界の動力みたいなものが地下だったのでは無いかと思ってます。
 そう考えると、例えば赤目天使ちゃんがかなでを連れ去って隠したのは旧ギルドでしたし、そこでハーモニクスを繰り返させて戦線メンバーの力を削ごうとしてたのは、世界を正常化させるためだったとも言えます。NPCを影化してPCをNPC化していく動きも、地下から発せられています。つまり、地下はこの世界そのものがある場所で、生み出すものもリセットする動きもどちらも持っているということにならないでしょうか?
 
 話を戻しますと、つまり、低い場所はNPCの世界で、高い場所はゆりたちPCの世界、ということになるわけです。そう考えると、第1話でゆりが天使を狙っているシーンの高低差も理解できますよね。天使は一応ですが、NPCたちの側に立っているキャラですよね。そしてゆりっぺや日向はそれと対峙しているので高い場所にいる、というのはまさに分かりやすいですよね。
 そしてあの場所に現れた音無ですが……やはりグラウンドではなくゆりたちと同じ高さで登場しているということで、NPCではなくゆりたち側のキャラであることが確定していたのでは無いでしょうか? そしてここからの動きが面白いですよね。
 音無はゆりの勧誘を断り、階段を降り、そしてグラウンドにいた天使ちゃんに話しかけます。これって、NPCになろうとする動きなんですよね、たぶん。天使ちゃんが刺したのも、音無に言ってた「あなたが変なこと言うから……」という言葉通りだとそのままで受け取ってしまいますが、死なないことを証明してくれ、という音無の言葉通りに受け取っただけではなく、あなたのいる場所はここじゃない、っていう意思表示の意味もあったんじゃないかと考えています。
 
 
 何となく分かっていると思いますが、あの階段ってのは、PCの世界とNPCの世界との境界線ですよね。言い換えると、成仏を目指すグループとこの世界に留まろうとするグループとの。
 第1話で出てきた天使ちゃんは、音無と出会うためにこの世界にとどまっていたわけです。それが最終話では、この世界に残ることとこの世界から旅立つことの葛藤からか、階段の途中まで来るわけですね。本当なら、ゆりたちと同じように、体育館のような高い場所で、グラウンドに近づくこと無く旅立てば良かったわけですが、あれは音無と、かなで自身にもこの世界への未練があったために階段まで来たという描写だったのではないかと思っています。
 10話の描写も面白いですよね。ユイが何でグラウンドでサッカーしたり野球したりしてるのかと言えば、この世界で普通に学校生活を送る(体を動かす)ことに対しての未練が強すぎたためとも考えられます。日向は途中ではユイや音無に協力はしていましたが、野球の時にはやや高いところから眺めていたようなシーンがありました。ユイをこの世界から解き放つのがいいのか、あるいは留まって欲しいのかと迷っていたものと考えられます。
 お、何か繋がった感じですね。全部を見切れていませんので、こういう観点で見るとまたAB!の舞台や背景が面白くなるんじゃないかと思いますがどうでしょうか?


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