「カップリング」として見る魔法少女まどか☆マギカ

 万人受けしないはずの要素がてんこ盛りのまどか☆マギカですが、ほぼ今期の覇権を握ったと観ていいかと思います。評判やそこから聴こえるキーワードの数々が惹きつけているような気がします。まあ全員が全員、どう面白いと思って観てるのかはわかりませんが。
 さて今回は「カップリング」として魔法少女たちを見ながら、まどか☆マギカのキャラたちがどう関係し合い、どう影響しているのかを考えてみることにします。というのは、7話で杏子がさやかに「自業自得の人生」を受け入れるように話したけど受け入れてもらえなかった後に彼女がリンゴを食べるシーンが口元をアップにして描かれていましたが、あのシーンの口元の歪む様は、1話でなかなか夢の中であった(ような)ことを聴いてこないまどかに対してほむらが口元を歪めて苛立っていましたが、あの場面と少し似ているな、と。つまりは、杏子→さやかの関係と、ほむら→まどかの関係が、です。ついでに言えば、言いたいことや自分の考えを相手が理解してくれなくて苛立つ、ということがです。
 魔法少女たちは互いにどう影響しあって、その結果としてどうなっていくのか、そんなことを妄想をしながら考えてみたいと思います。

  • マミとまどか

 まどかは魔法少女にはなってませんが、マミには大きな影響を与えていました。割と大きなことではあるんですが、マミはさやかには助言を、ほむらには嫌味や攻撃的な発言をしていましたが、逆に彼女たちからは影響を受けていないのです。むしろ、まどかにだけ影響を受けているんですよね。
 マミはまどかたちに、魔法少女になるのには慎重になるようにと諭しますが、むしろまどかが魔法少女になって一緒に戦いたい、って言ったときには歓迎してましたからね。本当なら孤独でキツい魔法少女稼業であるはずなので、そういう存在に一緒になってくれるってことはあまり喜んでもられない気がするんですが、それでもそうさせてしまったのは、一重にまどかの持つ優しさに触れてしまったからなのかな? と考えています。
 そもそもマミって、さやかに対しては厳しいことを言いますし、ほむらに対しては歩み寄ろうともせず挑発したり実力行使をしたりとあまり他者と馴れ合おうとはしないんですよね。杏子もマミのことを知ってましたが、共闘することなく見滝原市をマミのテリトリーとして認めていたようでしたからね。それが、まどかにだけはかなりの親近感を持っていましたし、心情を吐露してもいましたし、ある意味で弱さを見せていましたよね。それが命取りになったとも言えますが……。
 逆に、まどかやさやかには多大な影響を与えたのがマミです。ただ、さやかは魔法少女としてのマミの生き方をリスペクトしていますが、まどかはその殺され方にショックを受けてしまいますが、その死がその後のまどかに大きく影響したのは間違いないでしょうし、魔法少女としての生き方をイメージするためにも役立ったのではないかと思います。とはいえ、マミが受けた影響ほどにはまどかには影響を及ぼしていないようにも見えます。まどかはその後に魔法少女になろうとしてましたからね。

  • さやかと杏子

 さやかと杏子は互いに影響しあってると思いますが、どちらかと言えば、杏子がさやかにもの凄く影響されてしまってますよね。杏子は最初、自分のためだけに生きているようなことを言ってさやかを殺そうとしますが、魔法少女のカラクリを知ってさやかが自宅でふさぎ込んでいる時に訪ねてきて、自らの生い立ちや魔法少女になったキッカケ、何を願ったかなどを語り、むしろ親近感や好意を抱いているようにさえ見えます。さやかが指摘してましたが、そもそも杏子は自分のためだけに生きてきてて、魔力も自分のために使うような生き方をしてきたはずなんですが、さやかの願い事とその心の葛藤を知ってからは、むしろさやかを助けようとさえしているあたりから、もはや自分自身のためにだけ生きているようには見えませんよね。
 ちなみに、杏子の過去を話した相手はさやかしかいないんですよね。要は、自分の出自を話すことでさやかの生き方を変えようとしていたわけで。そして、変わらなかったさやかを観て7話ではイライラしていましたが、7話の終わりがけにはさやかが戦っている場面でピンチになると救出したり、さやかの代わりに戦おうとしたりもしています。ここでもさやかには拒絶されてしまうわけですが、8話では冒頭で一旦拒絶されたのに、ほむらがさやかを殺そうとした場面で割って入りさやかを逃しましたが、ここまで来てようやく杏子の言う事をさやかは聞いた(逃げろ、っていうあたり)ようにも感じました。
 杏子は、全てに絶望して魔女になりかけてるさやかを捜しまくっていたりと、もう「気になっている」レベルを超えていますよね。自分と同じく「他者のための願い事をして、結果的に自分の思い通りにいかなかった」魔法少女としての親近感もあるのでしょうが、そんな親近感を超えた感情を感じてしまいますよね。杏子が主人公としてヒロインであるさやかを攻略しようとしているようにも見えたりします。
 次回予告でも、魔女になってしまったさやかを杏子が救おうと試みる感じでしたが、個人的には「諦めが悪い」感じにも見えました。魔法少女としての自身に「絶望」や「諦め」を感じたのがさやかであれば、杏子は全く逆なんじゃないかと。
 そういえばこの2人って、青と赤で全く別の原色なんですよね。だからこそ全く異なる性格なのかもしれませんが、逆であるからこそ、さやかを救えるのは杏子しかいないんじゃ……と思ってしまいます。何せ、さやかが最後に自身の偽らざる想いを告白した相手こそが、親友だったはずのまどかではなく、かつては殺されかけた+嫌悪していた杏子だったわけですから。そして混ざって紫のキャラが……生まれませんかねw

  • まどかとほむら

 これは、完全にほむらにとってはまどかはヒロインですよね。前回の記事でも書きましたが、ほむらはまどかの魔法少女化だけは避けたいとは思っているようですが、それに加えてまどかを悲しませないためにも動いているようです。
 ただ、まどかから観たほむらって、最初のイメージは「ちょっと怖い」感じだったのが、さやかやマミが敵視するようになると逆にまどかはほむらのことを擁護したり、一人でほむらと会ったりして少し仲が進展します。ほむらの「魔法少女にならないで」というお願い?も一時は聞き入れたりしましたし、悪い仲ではありませんでした。が、事情を明らかにはしないほむらに対して、まどかはさやかを助けるように言いますが「手遅れ」の一点張りで消極的でしたよね。
 どうにも、ほむらはまどかに気に入られたい……というわけではなさそうなんですよね。まどかを守りたい、まどかを悲しませたくないという想いは、まどかが魔法少女になってしまうことと比較すれば弱いまでも、ほむらの動きのほぼ全ての動機と言って良いと思いますが、反面であまり気に入られるような行動を取っていないんですよね。まどかがほむらに好意を持ってもらうために動いていないのはともかくとしても、ほむら自身を信用してもらうための言動や行動も不十分なんですよね。ほむらが自身の謎や行動原理を話せない理由があるのか、単純に性格的に抜けているだけなのかわかりませんが。
 おかげで、まどかのほむらに対する信頼度はあまり上がらず、ほむらによるキュゥべえ銃殺で恐らくは地に落ちてしまいました。そもそも1話でのキュゥべえ襲撃シーンで、ほむらに対するまどかの警戒感みたいなものは植えつけられているわけですしね。
 今後はどうなるかわかりませんが、まどかに直接的な命の危険が迫ったときにほむらが救うような展開があれば……逆転できるかも知れません。が、それって3話で一度やってるんですよね。ただあの時にまどかもさやかもほむらに助けられているのに、マミとの直前の対立を目の当たりにしていることもあって、さやかは変な勘ぐりをしてむしろほむらへの憎悪を深めていきましたし、まどかも決定的に信用するに至りませんでした。なので、ここからほむらがまどかに信頼される流れには……なかなか難しくなったような気がします。
 個人的には、まどかが魔法少女になることが、まどかを不幸にさせないことに繋がるのか、あるいはほむらの利益に繋がるのか、世界を救うことに繋がるのか、その辺がわかれば色々とわかるような気がしています。ただそんな基本的なことも未だにわからないんですよね。

  • まどかとさやか

 物語の開始時点からの親友コンビですが、さやかが一方的にまどかから離れてしまい、結果的にはさやかは孤立して破滅してしまいました。個人的には、さやかにとってまどかは残された唯一の拠り所だったはずなんですよね。それを一方的に突き放してしまったわけで、ここでさやかは完全に行き詰ってしまったように思っています。
 結果的には、さやかが先に魔法少女になってしまい、まどかが魔法少女にならなかったことで、お互いの立場の違いからすれ違いが始まってしまったことが悲劇的でしたね。ということを描きたかったんだろうと思ってますが、それにしても、お互いに裏切っても嘘をついてもいないのに離反してしまう(まどかは見捨ててはいませんが)のが非常にキツい描写だと思います。
 さやかが自身の心情を一番よく話しているのは、もちろんまどかなんですよね。仁美のことも言ってましたし、自身の魔法少女になってしまったことへの苦悩も明かしてましたしね。なのに最後の最後では見切ってしまったのは、8話で自分自身が後悔しているようにもはや破綻していたのかもしれません。
 「まどかは俺の嫁」発言を1話でさやかがしていたりしましたが、あまりこの2人ってそういう感じには見えませんよねw さやかが魔女に囚われたまどかを救いに来た4話は、さすがにさやか主人公・まどかヒロインって感じでしたけども、それ以降はそういう感じでもなくなりましたからね。それも悲劇へと繋がっていったような気もします。

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 ダラダラと書いてしまいましたが、割合このまどか☆マギカは、魔法少女(候補?)のペアやカップリングというか、2人ずつで物語が動いているようにも見えます。2人じゃなかったのは、マミと共にまどかとさやかが行動していた3話くらいまでではないでしょうか? それ以降は、○○と○○という感じで互いに影響しあっている、あるいは片方が一方的に影響されているように感じています。
 しかし今のところ、まどかに影響されていたマミが死に、杏子に影響していたさやかが魔女になってしまっていますが、片方は生きているんですよね。ただ、まどかはマミの後を追って魔法少女にならなかったために無事という見方も出来るので、さやかをどこまでも追いかけそうな杏子は非常に危険ですよね。
 また、まどかに完全にフラれた感のあるほむらも、一方的に上條君に裏切られたと思い込んで絶望したさやかと同じような感じなんですよね。ほむらが魔法少女になるために願った奇跡が何なのかわかりませんが、恐らくはまどか関連でしょう。しかしそんなまどかに見切られてしまったら、彼女自身の今までや生きている理由もなくなってしまうわけで、ほむら自身がどこまでまどかのことを諦めないかが、今後のこの2人の仲や結末に繋がっていくんでしょうね。

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