「あの花」が描く2.5次元の世界

 あの花こと「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の放送が関東で始まり、同時にネット配信も始まったために観ましたが、1話から凄かったですね。OPまでの入りからOPアニメ、そしてどれだけ濃厚だったのかがわからないくらいの描き方だったBパートと、この作品の世界観の説明やキャラの立ち位置を描いただけではなく、1話の中で起承転結まで描けていてしかもこみ上げるものすら感じさせるこの作りって、まあちょっと今までに観たことがないような凄い1話でした。原作ありのアニメや二期作品とかだと出来ることなのかもしれませんが、オリジナルでこれは無いですね。予備知識を全く入れずに観ましたが、それでも世界観やキャラの立ち位置は理解しやすかったですし感情移入も出来ました。
 個人的には、自分の出自(?)であるKey作品にあるような要素が目白押しというか、そういうテイストが凄く感じられたからこその惹かれ方だったのかな? とも思うわけですが、こういう根はシリアスな物語は大好きですし、終わりから逆算したような描き方をしてくれそうな気がするので、今期アニメでは今のところダントツの評価です。岡田磨里さんの脚本も、放浪息子おとめ妖怪ざくろこどものじかんなど好きな作品が多いですし、制作のA-1Picturesもクオリティの高い作画してますからあまり今後に不安もありません。
 さて、そんな「あの花」ですが、作りの中で特徴的だと思ったのが、現実にあるものをそのまま登場させているというあたりではないかと思ってます。サッポロ一番だったり秩父の街の風景、鉄道……。どうも10年前に流行ったものをさりげなく登場させていたりという仕掛けをしているみたいなんですが、それ以上に現実にあるものをそのまま登場させていること自体に意味があるように思っています。
 つまりは、二次元と三次元の間みたいな世界観やイメージを作り出したいのかな? ということです。現実にある西武鉄道秩父の街を具体的に描くことにより、聖地巡礼の意味だけではなく、身近にキャラクターたちがいてドラマを作っていたり、ただ生きていたりという空気を出したかったのではないかと思っています。サッポロ一番塩ラーメンをかき玉で作ってみたくなったら作れますし、作中のキャラクターたちと全く同じものを作れて食べられるというのも、作中のキャラクターたちをより身近に感じられるひとつの演出になっていますよね。
 例えば、OPに起用されたガリレオ・ガリレイは、平均年齢20歳未満という若いバンドだったりします。そしてEDは10年前に席巻したガールズバンドZONEのカバー曲です。前者については、今20歳前後のキャラクターたちや視聴者の現在を表していると言えるのかもしれませんし、後者は、当時を懐かしむキャラクターたちや視聴者の心に訴えかけるような意図があったんじゃないかと思っています。現実問題、特に後者に関してはかなり当たっているような感じですし、その辺も含めての企画だとも思うので、アニプレックスは上手い仕掛けをしているなあと思っています。ZONEのカバーを主要キャラの女性声優さんたちで歌っているあたりも非常に心憎い演出ですよね。
 このOP/EDの意図は他にもありそうで、例えば今はオタクでも10年前には普通にZONEとかJ-POPを聴いていたようなノーマルな小中学生だった、という人にストライクでしょう。もちろん今もオタクじゃないような層にとっても懐かしく聴こえるはずです。主人公が引きこもりのようですからより、オタク層には心を抉られるように感じて感情移入しやすいのかもしれませんが……(汗。
 ただ、それでいてキャラデザはかなり二次元を意識してますよね。二次元というか萌える要素を入れているという意味でも。男キャラに関してはちょっとわかりませんが、例えばめんまだったら発育不良気味だったりちっちゃかったりウザかったりですし、あなるだと極上のおっぱいかつツンデレ(?)ですし、つるこはメガネと、しっかり二次元キャラとしての属性も付けているんですよね。だからこう、設定や仕掛けに三次元的なものが多かったとしても、これは一般的な深夜アニメとしても楽しめるんだ、ということもしっかりアピールするような形になっているのだと感じています。キャラデザが良いのは言うまでもありませんが、そのイメージのままアニメとして動いているのも非常に良いのだと思います。

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 とまあ感じたことを色々と書いてみましたが、三次元と二次元の融合という枠組みなことと、あとはアニメというよりもドラマ的な描き方をしていることもこの作品を際立たせているのかもしれません。まあまだ1話が終わった段階ですから過大評価かもしれませんが、たぶんBDマラソンをしているであろう未来は見えていますw
 関西では5日遅れのノイタミナの作品なのでなかなか記事は書けないかもしれませんが、出来るだけ「あの花」記事を書いていこうと思っています。

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