「よんでますよ、アザゼルさん。」が今期のギャグアニメで一番面白いと思う理由
全くのノーマークでしたが「よんでますよ、アザゼルさん」が非常に面白いです。元々はMBS最速だったのが震災の影響でそうではなくなったり、変ゼミと30分の枠を15分ずつで分け合うという割と力の入ってない感じの企画ということもあり、観る前はあまり期待はしていませんでした。が、とにかく面白いですね。何というか、毎回笑いっ放しで観終わったら疲れるくらいです。しかも、失禁ありセクハラありバイブ串刺しありグロありと、おおよそ流行る深夜アニメとしては逆の要素を入れ込みまくっているにも関わらず、amazonのBDランキングではシュタインズ・ゲートや花咲くいろは、電波女と青春男あたりとそう差のない位置に付けており、同じギャグアニメである京都アニメーション制作の日常よりもかなり上なんですよね。コストパフォーマンス的なものもあるんでしょうけど、pixivの注目のタグに「アザゼルさん」が太字であるくらいの人気もしているように、面白いと思っている人は存外少なくないようです。
では、なぜこれだけ下ネタの多い作品が好まれているのでしょう? 主観と客観が混じってしまっているのは申し訳ないと前置きしつつ色々と探っていきたいと思います。
- 抜群のテンポと濃縮度
これは1,2話観ていただければわかると思いますが、とにかく色んな要素や掛け合い、展開が15分弱の中に詰め込まれているんですが、こっちの理解が追いつかないうちに新たなネタで笑わされるというこのテンポの凄さは特筆ものだと思います。おかげで15分アニメなのに普通に30分観たくらいの充実感が味わえます。正直なところ、序盤はこのテンポの速さに若干「ついていけない感」のほうが強かったのですが、途中からキャラクターたちの立ち位置が理解できてきたり、主人公ポジションがりん子(メガネの女の子)であることがはっきりとしてきてからはただ面白いだけになりましたね。このテンポの良さが実に心地いい感じで。
ギャグアニメって途中で何か考えさせる間を与えたら駄目だと思うんですよね。その点このアザゼルさんは、Aパート・Bパートがない分も間を視聴者側に与えないという意味でもプラスに働いている可能性すらあります。この辺は「日常」あたりとは違うところですね。ギャグマンガなのに「コメディです!」と考えて可愛さと面白さを上手く同居させつつ3話で30分構成というやり方がきっちりハマった「侵略!イカ娘」の監督でもあった水島努監督の手腕が光る部分でもあると思います。
- コミカルな悪魔たちの描写
この作品の主人公ポジションはりん子ですが、タイトルにもなってるアザゼルさん始め悪魔たちが一応は主役です。この悪魔たちが面白いですね。特にタイトルにもなってるアザゼルさんは、最初に召喚された悪魔ではありましたが、単なるセクハラおっさんですし後半に進むにつれてただ役に立たないだけが目立つ残念さに……。しかもりん子やベーやんがやろうとしてることにいちいち文句をつけたりとかもう邪魔者レベル(ただし力が無いので邪魔もできてない)という扱いもまた面白いのです。
りん子と協力的なベーやんは逆にその優秀さが際立ちますね。彼もそうですが、嫉妬の人魚ことアンダインといい2話限りで天使に殺されただけという可哀想なモロクとか、とにかく悪魔たちの性格もコミカルで可愛いですよね。可愛いというか酷いというか……w
そして彼らが芥辺という人間によって召喚され良いように使われてる点も見逃せません。反抗しながらも脅えたり、一方的に愛情を感じたりと芥辺氏との関係性も彼ら悪魔が可愛いと思える点ですね。見た目も、アザゼルさんのギャランドゥー以外は可愛いですしね。
- 主人公のりん子視点がブレず、積み重ねの描き方が出来ている点
ギャグというか日常系のアニメ全般に言えることですが、ギャグアニメと云えども毎回の流れが次に繋がってこないと面白さの積み重ねが出来てこないんじゃないか……? と最近感じています。先週の展開がこうだったから……という流れが若干でもあるほうがより面白くなると思うんですよね。このアザゼルさんは15分構成ということもあり、1週分では終わらせられないエピソードがたまたま2話構成とかになってるだけな気もしないでもないのですが、それでも今までの依頼や事件?があって、りん子のキャラが少しずつ変わってたり、芥辺さんや悪魔たちとの関係性が変わった上で新たなエピソードがある、というのが凄く面白さの積み重ねになってると思うんですよね。これはイカ娘あたりでも感じたものですが、よりそこは意識して描かれている気がしますね。
そういう描き方が上手くハマっているのは、主人公ポジションである佐隈りん子をハッキリと中心人物として描いているからではないかと思います。最初は芥辺さんに気圧されたり、アザゼルさんのセクハラ攻撃にタジタジになってるだけだったのが、いつの間にか悪魔たちを上手くあしらえるようになったり、ベーやんら悪魔たちの能力を引き出せるようになっていたりとか、依頼料を踏み倒そうとしてた相手に借金取りのごとく迫ったり、彼女の成長(?)を作中で描いているのも見やすさを増す結果に繋がっていると思っています。これももしかしたら15分アニメだからこそなのかもしれませんが、りん子視点がブレないので凄くすっと入ってくるんですよね。視点は違えど、イカちゃん中心を貫いたイカ娘と同じ方針がここでも生かされているように感じました。
- 力の入れどころを間違えてない点
個人的に感じてるのが、とにかくりん子の作画はいいな、と。原作以上に可愛い原画でもありますが、この原画そのままにずっと動いているんですよね。これは何気に凄い。りん子さんは当初の普通の女の子だった頃からすれば図太くなってきているんですが、通常の表情も泣き顔も擦れた時もギャグ顔もどれもハイクオリティで。とにかく可愛いですね。彼女の作画に関しては「酷かろうが可愛くする」という方針が貫かれているように感じます。
悪魔たちもそうですし、時折入る無駄に力の入った演出も……無駄ではないんですよね、笑いの方向性としてはw 天使が空へ上っていくシーンとかもそうですが、大げさな演出もいいアクセントとなって効いているんですよね。これもやはりイカ娘とも共通するポイントです。決して全部が全部凄いわけじゃないんですけど、力を入れるべきところで手を抜いた感じがしない。全体としては神作画とかそう言い切れるほどではないのですが(とはいえよく出来ていると思いますが)、作品の魅力を伝えるために悪くない手の抜き方をしてるなあと思います。
- カップリング萌えできる=女性ウケしてる点
pixivを観ているとわかるんですが、芥辺さんとりん子さん、りん子さんとベーやんという2大カップリングが人気なんですよね。「あくさく」「べーさく」と言った感じで。アザゼルさんがカップリングの対象から外れているのが面白いんですがw これは、前述のとおり主人公である佐隈りん子をなるべく中心としてしかも可愛く特徴的に描くことによって起こる産物ですし、少ない人間(悪魔)関係をベースとして描いているからこそ生まれる楽しみ方な気がします。芥辺さんの悪魔への酷い仕打ちも「嫉妬」へとも変化出来るみたいですし、悪魔たちがリアル等身になるとイケメンになったりするあたりも想像力を掻き立てる何かがあるのかもしれません。
しかしながら、主人公が女の子でセクハラを受けながらも強くたくましくなっていくあたりで、もしかしたら乙女ゲーみたいな楽しみ方をしているのかもしれませんね。
- 萌えアニメと棲み分け出来た点
個人的に非常に大きなポイントだと思ってます。同じように男女問わない面白さがある「日常」が、どちらかと言えば萌えアニメ枠で捉えられていて苦労しているような気がするんですが(日常は女性でも楽しめるはずですので)、アザゼルさんは前面にオッサンな悪魔のアザゼルさんや怖い芥辺さんが出てきているために、深夜アニメでも萌えアニメとしては捉えられていない気がするんですよね。ここが、観る/観ないという選択肢の中で、女性が観るを選ぶのに大きかったのではないかと思うわけです。僕は男ですが、別に女性向けというわけでもありませんしギャグアニメとして非常によくできているので楽しんでますが、それは女性でもそうなんだろうなあと思います。それに加えてカップリング要素もあるわけですからよりディープにハマるのではないかと思ってます。
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今期はTIGER&BUNNYや青の祓魔師という、女性向けジャンルとしてはデカすぎる作品があるわけですが、ギャグ+下ネタという前述の2作品にはない要素があるのでこれらとも棲み分けが出来ているんでしょうね。キャラが多すぎず肩の力を抜いてハマれるのも良いのかもしれません。
個人的には、こういう作品が深夜アニメとして商業的にも成功してくれると今後の深夜アニメの多様化へもつながると思うので、BD/DVDも売れて欲しいですね。原作かアニメBDかどっちか買ってもいいのかな……と揺れつつありますw