パチンコ・パチスロアニメの存在意義と今後の方向性について

 夏期に放送された「快盗天使ツインエンジェル」のBD/DVD1巻が発売されましたが、同じクールの他のアニメに比べても非常に低い数字に留まりました。アニメ本編を観ていても、声優さんは豪華で作画としてもさほど悪くない感じ……だけど、特にこのアニメならではの要素が欠けていたような気がするのと、そもそも面白くなかったような気がします。
 このツインエンジェルは、メインの3人が田村ゆかり能登麻美子釘宮理恵と、ちょっと前のすごいメンツを集めていて(もちろん今でも十分人気ありますが)、それはパチンコ時代から変わっていないらしいのですが、そういう声優の名前だけでは売れなかった、ということにもなりますが、ストーリーも基本的には原作のパチンコに近いものだったらしかったのですが原作ファンもあまり飛びつかなかったということにもなります。パチンコのほうへはどのくらい波及したのかわかりませんが、こうなると一体何のためにアニメ化してるのかがわからなくなってきます。
 ここ1年くらいでのパチンコ・パチスロ原作アニメは「Rio」(パチスロのちパチンコ化)→「戦国乙女」(パチンコ)→「ツインエンジェル」(パチンコパチスロらしいですすいません)と続いていますが、1巻の安売り戦略もあってか1巻だけBD/DVD合算で3000本を超えた戦国乙女はセールス的にそこそこ成功したのですが、その他の2作はBD単巻では1000本に満たない状態になってますし、戦国乙女も2巻以降は落ち込みが酷いです。つまり、あまりアニメとしては成功していないとも言えます。
 ではなぜパチンコ・パチスロ原作のアニメ化が行われているのでしょうか? 今後とも流れが続くかどうかはわからないわけですが(今期は無い)、アニメ化のメリットとデメリットを両方考えていきたいと思います。

 パチンコやパチスロをやってる人たちは基本お金を持っていると考えられると言うか、さほど深夜アニメを熱心に観ていない層も含まれている可能性があります。なので、アニメ視聴者やBD/DVD購入者層を増やす、というポイントはあると観ています。
 ただ問題もあります。パチンコとかをやる人たちはアニメのように「ただ観てるだけ」よりも少しでも自分で何かするという意味ではゲームに近い感覚だと思ってます(知人調べ)。なので、ただ観てるだけになってしまうアニメにはハマりきらないのかな、と。実際、ツインエンジェルはアニメBD/DVDは悲惨な感じになっちゃいましたが、同じような時期に出たゲームはそこそこのセールスだったことを観てもわかると思います。
 また、パチンコなどの原作人気が、果たしてどの要素で人気しているのか? というのが見えてこないあたりも難しいのではないかと思います。実際、豪華声優陣そのままにアニメ化したツインエンジェルよりも、原作から声優変更したり設定も変えたりした戦国乙女のほうがセールス的に成功しているのですから。

 これは先ほどと逆なのですが、ならばパチンコ業界が萌えオタの財力狙いでアニメ化しているのか? という考え方です。アニメ終了に近いタイミングで新機種を投入してることから、漫画やラノベなど他の原作アリのアニメ作品と同じような感覚に見えます。元々パチンコなどをする人には良いのですが、あまりする機会がなかったり全く触れて来なかった層に対してはどうでしょうか?
 個人的には、萌えオタの脚をパチンコ屋へ向けさせるのは難しいと思ってます。それは、割とパチンコ業界へのネガティブなイメージが強いことがあります。震災直後の電力不足での節電が叫ばれていたときには、Twitterにはパチンコ屋のネオンを消せだの閉めろだのそういうリツイートが多く観られました。石原都知事のパチンコ・自販機規制の発言の時にもパチンコだけは歓迎されてましたからね。このネガティブなイメージが払拭されない限りは、まずアニメファンをまとまった数、パチンコ屋へ向けさせることは難しいんじゃないかと思ってますが……。
 もちろん、パチンコユーザーには「萌えパチ」というジャンルがずっと続いているので、アニオタと掛け持ちしてる人たちもいるのでしょうが。

  • 原作枯渇の中での活路としての萌えパチ

 アニメの原作枯渇はずっと言われ続けてますが、その中の選択肢としてパチンコ・パチスロがあったというだけな気はします。そもそもパチンコを作っているメーカーを観てみると、タイトーだったりコナミだったりすることもありますし、作ってる方の根本はさほど変わらないのかもしれません。そうなると、何らゲームのアニメ化と違わないということになります。
 これだけ1クールのアニメが作られては消費されていく世界ですが、1つの作品を生み出すにはパワーもアイデアも手間も必要なわけです。作る側としては、1つのコンテンツをアニメだけ、あるいは漫画とアニメだけでは終わらせたくないでしょう。それはパチンコなどにも言えることではないかと思うわけです。
 つまり、パチンコ・パチスロ原作のアニメ化も、その作品をコンテンツとして横展開していくためのものに過ぎない、と言うことです。タイトルやキャラデザ、世界観など、ゼロから作らなければならない要素が少しでも減るのであれば、多少は労力も減るでしょうしね。とはいえ、ほとんどアニメオリジナルだった戦国乙女を考えると、ストーリーらしいストーリーを持たないパチンコからアニメを作るのは相当大変ではないかと思います。

アニメイトTVの戦国乙女岡本監督へのインタビュー記事
http://www.animate.tv/news/details.php?id=1308623586

 とはいえ、パチンコ業界に対してのネガティブなイメージを多数のアニオタが持っているとしたらどうでしょうか? そのアニメが始まったとして、他のアニメと同列には扱われないのだとしたら、アニメ化の手法が他の原作に比べてまだまだ確立されていないことも考えると、労力はかかる割にはどれだけ上手く作っても売れないことが最初から決まってしまってるわけですから、作る方の士気にも関わってきそうな気がします。
 制作費の多くをパチンコ業界から出しているのだとしたら事情は変わってきますけどね。

  • まとめ:今後のパチンコ・パチスロ原作アニメの展望について

 もしパチンコ原作アニメがパチンコ業界からのお金で製作されているのだとしたら、まだこの流れは続くでしょうね。ただしそうなった場合、あまりアニメファンが飛びつくような作品にならないような気がします。その場合はあくまでもパチンコのプロモーションが目的になるでしょうからね。他の原作モノのアニメと同じような折半であるのなら、今後はこの流れが縮小していくのではないかと思いますが、世界観と秀逸なストーリーと時代性などが重なれば予期せぬ大ヒットもあるのかもしれません。ですが、書店に数多あふれる漫画や小説に比べると、パチンコの、しかも萌えパチに限定された作品群からアニメ化してヒットする可能性のあるコンテンツは非常に確率としては低いと思います。そもそも、タイミング的には遅すぎたとはいえ二次エロ創作で一時代を築いた感のあったRioや、パチンコとして人気があったツインエンジェルとコケたのは痛かったでしょう。Rioはカオスな展開すぎて一部のマニア以外置いてけぼりだったわけですが、そのイメージを「パチアニメ」としてアニメファンたちが引きずっているようにも感じるあたりが難しいと思います。
 結局のところ、パチンコ屋には行かず、Rioは途中離脱、戦国乙女とツインエンジェルは完走して、戦国乙女はアニメとして凄く面白かったと思ってる中途半端な人間ですが、またパチアニメが放送されることになったら楽しみに観させてもらおうとは思ってます。

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