「おとめ妖怪ざくろ」のリベンジとして観る、アニメ「妖狐×僕SS」と「アクエリオンEVOL」

 今期アニメでも特別可愛いなと思えるのが、妖狐×僕SSの渡狸とカルタちゃんのカップリングではないかと思う今日この頃です。
 さてそんな妖狐×僕SSですが、某アニメイトでは原作コミックスの隣に合わせて読みたいとして「おとめ妖怪ざくろ」が置かれていたりします。また今期放送されているアクエリオンEVOLのシリーズ構成がおとめ妖怪ざくろと同じ岡田麿里さんでもあることから、ちょっと共通点みたいなものを探してみたりしてますがそれがかなりありそうなので紹介してみたいと思います。
 その前に「おとめ妖怪ざくろ」という作品の紹介を簡単にしておきます。原作は輪るピングドラムキャラ原案かつエンドカード絵でもお馴染みの星野リリィ先生の漫画で、一昨年秋に1クールでアニプレックスからアニメ化されてます。監督はのだめカンタービレ2,3期や世界一初恋今千秋さん、シリーズ構成はあの花や花咲くいろは岡田麿里さん、音楽制作はランティス、制作はJ.C.STAFFとかなり力の入った陣容だということがわかると思います。作画的にも音楽的にも非常に力の入った作品でしたし、このクールではイカ娘と同じくらいに楽しませてもらいました。が、アニメそのものが成功したかというとやや微妙だったかもしれません。星野リリィさんはBL系の作家さんとして知名度のある方で絵柄も女性向けに寄った感じですが、OPを歌ったのはアイドル声優ユニットであるスフィアだったり、内容はBL的な要素は皆無に近くむしろノーマルカップリングオンリーな感じでしたし、その割にはBDはリリースせずDVDのみというよくある女性向け限定のアニメのような仕様……と男性向けを狙いに行ったのかあくまでターゲットは女性なのかが全く定まっていませんでした。放送前の宣伝から観てもあまり力が入っているとは言えず0話切りしてしまった人も多かったように思いましたし、その割にはアニメの内容はオーソドックスで普通すぎるとかも言われるなど非常にチグハグな感じでした。売上的にももっと伸ばせたんじゃないかと思うだけに残念な売り方でした。
 そんなざくろを起点にした企画ではないかと勝手に考えているのが、今期放送している「妖狐×僕SS」と「アクエリオンEVOL」なわけです。前者はアニプレックスが企画の方向性や売り方を見直した結果としての、後者はシリーズ構成である岡田麿里さんの話やキャラの描き方としてのリベンジマッチとしての色合いもあるのではないかと思うのです。そんな2作品とざくろの共通点と見直した点がどんなところに見られるのかを観ていきたいと思います。

 アニメのスタッフ的にはほとんど共通はしていないはずの両作品ですが、某アニメイトで一緒に並べられている事実からもわかるように、非常に似た要素を持っています。女性作家による、女性向け風な絵柄ながら男女問わない内容になっているあたりだけにとどまらない共通点があります。
 まず、主人公たちが妖怪と人間の間のような存在であることからです。ざくろでは半妖、いぬぼくでは先祖返りという名前にはなってますが似たような存在ですよね。ざくろでは半妖と人間という境界があり、いぬぼくでは基本的に全員先祖返りという違いはありますが。そして拠点が妖人省、あるいは妖館という集団生活をする建物の中です。話の内容も、最初にペアとなることが前提にあって(しかもほぼ男女)、そのペアで妖怪を倒していくこととペアの仲を深めていくことがメインとなっています。時代が違うとか、ざくろではラスボスみたいなものがいたのにいぬぼくではほぼ自衛のために戦っているとか目的が違う部分がありますし、ざくろは組織化されていますがいぬぼくでは寄り添って生活している感じとかもありますが、主となる要素についてはかなり共通しているのではないかと思うわけです。ノーマルカップリング押しであったり、女の子は可愛く男はかっこよく(ショタ要員もいるよ!しかも女の子に守られてるよ!とか)、あとは戦闘がかっこよかったりとか、作っているところは全然違うのですが、方向性としてはかなり近いものになっていると思っています。
 アニプレックスが企画の方向性とか売り方として明確に変えてきた部分とすれば、音楽のランティス外しとアニメ制作スタッフに若い力を入れたこと、あとは男女両方がより楽しめる要素に集中させたことでしょうか。音楽については、ざくろでスフィアを起用したことが微妙だった……と分析したのではないかと思っています。ざくろではスフィアから3人も声優さんを起用してしかもいい感じにハマっていたんですが、やはり主題歌は最終回で劇中で流れるまでは慣れなかったように、作品の方向性としてもあまり一致してないし、何より誰に売りたいアニメなのかがわかりにくい感じでした。エンディングのデュエットキャラソン3種というのは非常に面白かったのですが。この辺はアニプレックスとしては自由にはならない部分なので、今回はランティスを外したのではないかと思ってます。おかげで、OPはソニー系のバンドで男性ボーカルになってますが、EDはほぼ週替わりのキャラソンEDで映像まで曲に合わせて用意するというかなりの力の入れようになってますし、そのEDを収録したCDをアニメBD/DVD特典につけるというアニプレお馴染みのやり方が取れています。またキャスティングとしても、ざくろでは主人公に中原麻衣さんというベテランで実績重視なキャスティングだったのを、いぬぼくではめちゃくちゃ若い日高里菜さんを起用するというチャレンジをしていますし、化物語で破壊力抜群のキャラソンを歌っていた花澤香菜さん(ざくろでも主要キャラとして出演されてましたが)に、けいおん!ツインボーカルの一人としてアニソン界を席巻した日笠陽子さんらを起用して歌の面でも狙い澄ました起用となっていると思います。男性声優さんも豪華ですよね。アニメ制作もまだ歴史の浅いdavid productionで、監督も初監督作品となる津田尚克さんという非常にフレッシュな感じになっています。この辺は、新しい発想に期待したということになるのかもしれません。
 中身については、ざくろが比較的1クールアニメとしてきちんと終わるように原作からやや改変されたストーリーになっていましたしストーリーを重視したような部分や敵側の描写などもありましが、妖狐×僕SSではその辺の要素を全てキャラクター描写とカップリング的な場面を描くことに注力したかのような作りになっていて、何処を観て欲しいか誰もが理解できるような作りになっていると思います。ともすればストーリーや世界観について物足りなさも感じてしまいますが、おかげでキャラクターの立ち方としては今期でもダントツの存在にもなってますし、主人公以外のキャラたちも総じて濃いキャラクターであることも寄与して非常に存在感を感じます。ざくろでもカップリング描写については申し分ないレベルだったような気がしますが、いぬぼくではそこから更にキャラの魅力を掘り下げて描いている感じで観ています。
 このように、ざくろっぽいということと、ざくろから導きだされたダメだった点や物足りなく映った点などをかなり修正した企画になっているような気がしています。もしかしたら、ストーリー性を薄めた作りなども若手監督さんによる常識にかからない方針なのかもしれませんね(この辺はわかりませんが)。そして、このキャラ重視の方針は色々と反応を観てる限りでは成功しているように思えます。

 さて、問題のこちらです。シリーズ構成の岡田麿里さんからの繋がりで観るざくろとEVOLの共通点や違いを観てみます。さすがに明治時代を舞台にした作品とロボット物ですから観た感じでの共通点はもちろん思いつかないのですが、仕組みとしてはかなり似通った作品だと思っています。
 まず、ちゃんと拠点となる建物が存在してますしそこで共同生活している点も同じですよね。更に言えばEVOLは学園という組織ですし生徒たちはそこに属しているという点では、学校と役所という違いはあるもののざくろと共通しています。また、その組織には上下関係があったりトップはそれなりに年齢を重ねた大人であるあたりもそうですよね。ざくろの場合は老人になってますし、EVOLの理事長は年齢不詳ではありますが。次に、男女が一緒になって戦うあたりも似てますよね。EVOLでは3人で戦う仕組みにはなってますが基本的に男×女ですしメインは3人のうちの2人ですから。それぞれ基本的なメインとなる相手がいるのも似ていると思います。最初は何股かけるんだと思っていたEVOLのアマタでもフラグは最終的に2人だけになりそうですし。教師の2人、そして総司令と理事長に至るまでカップリングとして描かれているあたりEVOLは徹底されてるなと思うわけですが、ざくろでもそこは共通してますしね。そして、特別な能力を持った者たちが集められている、という点も似ていると思います。ざくろの場合、人間はただの軍人に過ぎないわけですが、妖人省で戦っている半妖たちは力の抜けた特別な存在なわけですし、EVOLの学生たちも何らかのエレメント能力を持った者たちなわけです。また、敵が明確に見えている(見せている)あたりも似ているかもしれません。ざくろの場合はざくろ本人が標的だったわけですが、EVOLでも恐らくはミコノかゼシカが標的になっているのでしょう。敵側の親玉を見せていることや、目的がメインの女キャラ、しかも母体として……というあたりは岡田麿里さんが狙ってやってるようにも見えなくもないのです。スケールが違うような気がしますが、共に敵側の血筋の問題にもなってくるわけですからね。敵側が絶対悪とも言い切れないあたりの事情を持っていることも共通していると言えるのではないかとも思います。
 違う点とすれば、ざくろはあくまでも上品だったのに対してEVOLは下ネタ全開でやってるあたりでしょうか。カイエンの「見えたあああああ」、アンディの「穴掘り兄弟」など各キャラのネタに事欠かない感じがすごいわけですが、ざくろでは一切その辺の記憶がないんですよね。もちろん、ざくろを手篭めにするなどというセリフや展開はあるのですがあくまで原作の表現の範囲内に留めてますし、シリアスギャグ的な要素はほとんど感じられませんでした。この辺は、ざくろが真面目すぎたり原作表現を超えないようにはっちゃけるのを自重した……という風にEVOLを観ていると逆に感じるわけです。ざくろで下ネタ的なものをやってしまうとそれはもうぶち壊しなわけですが、ざくろで脚本書いてたりしてて面白そうな設定や世界観をEVOLのシナリオをおこす時に利用したのかなと思うと同時に、その設定とシリアスギャグ的な展開やセリフが生きるのでは? と考えて描かれた(そう設定したり構成するのに生かした)ように感じています。あとは、男女が一緒に戦うという行為に性的な要素を相当入れているところでしょうか。ざくろでは味方同士ではそういう展開はほとんどなく健全でしたが、EVOLはその辺を開放的にしつつネタとしてもやるという感じですし、かなり違ってきているように思います。また、これは岡田麿里さんの及ぶ範囲ではないのかもしれませんが、どのキャラもイケメン・可愛いデザインですよね。ざくろでは本当に妖怪みたいなキャラがかなり多かったのですが、まあこの辺はロボット物としてのセオリーみたいなものかもしれません。あと、花澤香菜さんがこちらでも出演されてますが、ざくろとは違って主人公に近いサブヒロインなポジションにキャスティングしたあたりは企画側の意図のように感じています。
 岡田麿里さんが意図しているかどうかはもちろんわからないわけですが、昨年に放送したオリジナルアニメ「花咲くいろは」でもざくろにあった要素をかなり注いでいたようにも思いましたし、手がけたアニメの原作から面白いと感じた部分をオリジナルアニメに生かすというやり方を取っているように感じています。

アクエリオンEVOL Vol.1 [Blu-ray]

アクエリオンEVOL Vol.1 [Blu-ray]

                  • -

 だらだらと観ていきましたが、もちろんどちらも「おとめ妖怪ざくろ」に端を発した企画かどうかはわかりませんしそれを知る由もないでしょう。ただ、個人的には大成功したアニメの二番煎じ的な企画は目立ちやすいしあからさまにも見えてしまうように思ってますが、あまり成功とは言えなかったようなアニメの中にもウケそうな要素は絶対にあったはずですし、全面に出す部分を間違えただけということもあるでしょうから、実はこういうケースでのアニメの企画というのは見えないだけで案外あるのかもしれませんね。
 ざくろと比較した今期の「妖狐×僕SS」と「アクエリオンEVOL」は似た要素の多い作品とも言えます。なのでどちらかが楽しいと思いながらも片方を観てない方は是非もう一方の作品を、そして両方とも面白いと感じている方には「おとめ妖怪ざくろ」をオススメしておきます。

Web拍手送信