「2.5次元アーティスト」ClariSは顔出しすべきではないと思ういくつかの理由

 アニソンアーティストとしてすっかり定着した感のあるのが、昨年までは「女子中学生ユニット」として売り出していたClariSでしょう。本当に女子中学生だったのかどうかとかはどうでもいいのですが、俺の妹がこんなに可愛いわけがない魔法少女まどか☆マギカといわゆる覇権アニメでの主題歌(しかもOP)で起用され作品とともに大ヒットしたのは記憶に新しいかと思います。「irony」は本当にセンセーショナルでしたし、「コネクト」も本編での使われ方と相まってロングヒットしました。その後も、偽物語のエンディングで起用されてこれも大ヒットし、アルバムも売れて……とまさに順風満帆でした。中学を卒業して女子高校生ユニットとなった後は、もやしもんリターンズの主題歌に起用されてタイアップされたアニメが大ヒットする法則こそ終わりましたがCDそのものはそれなりに売れ、さらには劇場版まどか☆マギカOPの「ルミナス」はClariS史上最高の初動を叩きだすなど未だに勢いは衰えないどころか増しているのがわかります。「俺妹」と「まどマギ」に関しては、ClariSという女の子2人組ユニットとアニメ内の名コンビとがまるでシンクロするかのような起用のされ方をしていたのも人気に拍車をかけたようです。

irony【期間生産限定盤】

irony【期間生産限定盤】

 さて、そんなClariSですが一部ファンの中で「そろそろ顔出しすべきでは?」という声があります。というのも、アニサマなどのライブイベントだったり、起用されたアニメのイベントへの出演などがされないのが勿体ないという意見からだそうです。確かに、「irony」や「ルミナス」クラスのアニソンがアニメのライブイベントで流れないというのは全部が揃った感じがしないですし、声優ユニットやキャラソン名義だけど中の人が堂々と顔出しして歌っているあたりと比較しても物足りないとされてしまうようです。
ルミナス

ルミナス

 ただ個人的には、ClariSにはこのまま顔出しせずしばらくは活動して欲しいと思ってます。女子高生ユニットが女子大生ユニットになってその先が無さそうな気もしますが、それでもアニソンアーティストとしての別の形としてClariSのようなやり方があってもいいと思っています。ClariSに顔出ししてほしくない理由をいくつか挙げていきたいと思います。

 ClariSは顔出しが無い分、ジャケットにはアーティストのロゴもありますが、そのアニメの原作者やアニメーターさんの絵でジャケットを飾ることもあります。つまり、ClariSは2次元キャラとして表に出ていることになります。もちろんタイアップしたアニメの名コンビ絵もあってその2人が歌っているかのような感じにしていることもありますが。このように、ClariS本人が絵でしか存在しないため、2次元というかアニメキャラとすごく距離が近いように感じています。そのために、アニソンアーティストでありながらすごくキャラソンに近くなっているというか、アニメの一部として機能しやすいような気もしています。3次元を介在させないためにすごく2次元の世界観で収まっているように思うんですよね。
 ただ、初音ミクのような完全なバーチャルアイドル的なものとは違いますよね。初音ミクもそもそもは声優さんの声が元ですけどどちらかと言えば緑髪ツインテのあのミクさんが歌っているものとして認識されています。が、ClariSは完全に人間が歌っている声ですよね。洗練されているようなされていないような、一応宣伝で声も入ってますし、個人的には中学生〜高校生らしさのある声でもあったと思います。ただ音楽性に関しては、よくいるアニソンアーティストのそれとは、どこがとはいえませんが決定的に違う何かを感じています。それ故にすごく唯一性を出せていて、アニソン界にも鮮烈な印象を与え、タイアップした作品を構成する部品としても、主題歌から作品に与える色やプラスされる要素を加えてアニメ作品そのものを高める効果もあったと思っています。俺妹もまどマギClariSとセットじゃないかと思いますしね。
 これが顔出しアリだった場合を考えてみましょう。元は女子中学生ユニットだったClariSですからアイドルユニット的な活動になっていたでしょう。そうなると、ルックスがどうかはさておき全く別な見え方・聞こえ方になっていやしないでしょうか。少なくとも、すごく人気のある原作のアニメ化だった俺妹にいきなりよくわからないアイドルユニットが起用された、という感じにもなっていてかなり違う印象になっていたような気もします。わかりませんけども。少なくとも、俺妹もそうですが、2次元的な要素ばかりで構成されたまどか☆マギカみたいな作品との相性は違ってきたのではないかと思っています。

  • 顔(ルックス)ありきのアーティスト事情に一石を投じる意味

 個人的にはここがものすごく気になっているのですが、最近のアニソンアーティストや声優さんにおける顔(ルックス)の占める割合がものすごく高くなってるような気がしています。もちろん、顔もいいし演技もうまい人が増えてきているのでそちらはどうしようもないのですが、演技力から起用が増えている人がメインではなくなっているような気もしています。
 アーティストも似た感じで、もちろん歌唱力やアーティスト的なものの強みを生かして活動している人もいる一方、いきなり人気を獲得しようとするとやはりルックスがとりあえず立たないといけないような気がしています。アニプレックスからデビューしたLiSAなんかはまさにそうですよね。もちろん歌唱力もありますし最近は表現力も豊かになって素晴らしいと思うんですが、彼女を売り込むときにあのルックスを一つの目玉にしたことは間違いなかったわけで。
 純粋に歌唱力やアーティストとしての表現力みたいなもので売り込みたいのであれば、個人的には本人を見せないことも一つの手ではないかとも思うわけです。そうした場合に、このClariSのような顔出しなしの2次元的な存在としての売り出し方があるのではないかと思っています。こうすれば、本人たちのルックス云々で言われることもありませんし、純粋に歌唱力とか歌のみで評価されるでしょうしね。
 思い出されるのが、古い話ですが見た目にコンプレックスがあり顔面崩壊してしまったマイケル・ジャクソンだったり、自分がブサイクだと思い込むあまり拒食症になって死んだカレン・カーペンターとかですね。言い過ぎかもしれませんが、もし見た目のことをとやかく言われて残念なことになるのであれば、出さないというのも手じゃないかと思ってます。声優さんだってかつては顔出しNGな人もいたわけですし。
 ClariSはどうするのかわかりませんが、ここから顔出しするようになったとしてもどれだけ可愛くても恐らくは色々と言われると思ってます。そうであるなら、アニソンアーティストとしては貴重な、2次元に近い存在である強みを生かした起用をしていけばいいような気がします。すぐ飽きるとか言われながらずっと結果を出してますし、もう一過性でもなんでもないですからね。

                                                  • -

 とまあ書いていきましたが、ランティスあたりのアニソンアーティストがさほど売上を伸ばせていない中でのClariSのこの売上とアニメファンへの認知度はものすごいものがありますので、この路線は続けるべきだと思います。そして、見た目ありきな流れ以外からも一つの流れを続けてほしいなと思っています。

ルミナス(期間生産限定アニメ盤)

ルミナス(期間生産限定アニメ盤)