「ガールズ&パンツァー」はどうして「戦車」でなければならなかったのかの推論

 今期のオリジナルアニメの1つであるガールズ&パンツァーが面白くなって来ました。当初は、イカ娘の水島努監督とけいおん!君と僕。の吉田玲子さんのシリーズ構成ということで戦車はお飾り程度のほのぼの女の子アニメになると思っていたんですが、回を追うごとに戦車の存在感ばかりが目立ってきてむしろ「戦車道」という競技の熱血部活アニメ的な感じが出てきました。4話の練習試合の絵はすごく面白かったし、なかなか緊迫感もあって「戦車すげえ!」となっていて、既に日常アニメを期待していたのが遠い昔のように思えます。
 そんな中で、放送前から気になっていたことが「なぜ戦車なのか」という部分です。ストパン島田フミカネ氏をキャラクター原案に持ってきてるあたりで戦う要素というかミリタリー要素は入ってくるのは予定調和的だったのでしょうが、どうして戦車を持ってきたのかがよくわかりませんでした。水島努監督にとっては初めての完全オリジナルアニメですから何を持ってきても良かったはずですが、そこで敢えての女の子と戦車だったわけです。ですが、4話まで観てみると何となくですが戦車を持ってきた理由みたいなものが見えてきました。今回はガルパンがなぜ戦車だったのかについての僕なりの推論みたいなものをいくつか挙げていきたいと思います。

  • ロボットではなく戦車だった理由

 こういうアニメだとよく出てくるのがロボットです。最近でも輪廻のラグランジェが、特定の地域にいる女子高生がロボットに乗って戦う、という作品になっていたようにロボットを出したがるのが日本のアニメではないかと勝手に考えています。ただ現実世界のロボットといえば、中に乗って戦ったりするところまでも行かず、ましてや俊敏に動いたりとかそういう次元には全然届いていないようにも思えます。つまりはロボットそのものが非現実的で空想的な存在であると言えます。
 それに対して戦車は実在します。それどころか100年くらいの歴史があり現在でも開発が進められている現役の兵器です。さすがに日常生活で観る機会はないでしょうけど、自衛隊の演習などで直接目に出来る機会はあるでしょうし、戦争中のニュースなどでも目にすることはあると思います。ロボットに比べるとまだ現実世界に近い存在ではないかと思います。そして、歴史があるということは列車の車輌や自動車などと同じく最新鋭のものからレトロなものまで存在するということにもなります。この辺にロボットとの決定的な違いがあるように思います。
 そしてロボットだと、現実世界にはああいう形のものは存在しないわけですから1から作らなければならず、そのデザインからして大変だと思います。それに複数出すのなら機体ごとに個体差も描かないと面白くない……。ロボットアニメは数多ありますし、そんな中から斬新かつかっこいいデザインを新たに生み出さなければならないというのは厳しいことのようにも感じます。そこで戦車ならどうでしょう? 既にあるものを使えばいいわけですし、個体差は見ての通りかなり大きい。その戦車を痛車化するのは、アレンジの話なのでまた別でしょうし。機体の性能も実際のその機体のスペックを参考にすれば問題なし。今までどのくらい戦車をメインに据えたアニメがあったのかわかりませんが、少なくとも美少女と戦車という発想はこの10年くらいではあまり無かったことでしょう。
 そして戦車の有利さは、あのコンパクトな車体の中に5人くらい入れるところにもありそうです。ロボットものでも合体して5人が一緒に戦うようなものもあったりはしますが、戦車はそれぞれに役割があってそれぞれの仕事をしているあたりに、キャラごとに特徴を描き分けていることも生かせるように思えますし非常に優秀な設定のように見えるわけです。

プラッツ 1/35 ガールズ&パンツァー IV号戦車D型 あんこうチームver プラモデル

プラッツ 1/35 ガールズ&パンツァー IV号戦車D型 あんこうチームver プラモデル

  • 他の戦闘車両(飛行機や船系)ではなく戦車だった理由

 戦争に使う乗り物をメインにするなら戦車じゃなくてもいいのでは? とも思うのでそこも観て行きましょう。
 同じように地上を自走するものでいえば装甲車とかありますが、まあ地味ですよね。自走するミサイルとかロケット砲とかも単調になりそうです。
 航空機系や船系だとどうでしょうか? もちろん空戦も海戦も映えるのは映えるのですが、一つ問題があります。ガルパン3,4話を見ればわかりますが、戦車だととにかく「町」が近いというか本当に町中で戦えるんですよね。戦えるというか戦ってしまってるのですが。町の建造物を壊してしまう可能性はもちろんあるのですが、それを容認するというかむしろ歓迎しているかのような住民のセリフもあったようにそういう世界観のようです。空戦や海戦ではやはり遠くに眺めてる感じになってしまいますし、町を舞台にしていると言っても距離を感じてしまいます。ということで、本当に近くで戦える戦車という兵器が一番「町」との距離を近く取れるということになるのだろうと思っています。空戦になると撮影とか大変なのもあるでしょうし、海戦だとすごく地味になってしまうという面もありそうですけどね。
 小回りのきく車輌だと路地にも入れちゃうのだとか、立体パーキングにも入れたり、そういう身近なものにも交われそうな良さが戦車にはあって他の戦闘車両にはない点なのでしょう。見た目にもインパクトがありますしね。

  • 戦車単位+チーム単位のバトルが出来る

 ガルパン2,3話で描かれてましたが、戦車1車輌単位のバトルというのもできますが、チーム戦も出来るというのも戦車を取り上げた理由として考えられそうです。
 戦車1車輌単位でもまず3〜5人程度のグループが出来ますし、それが5つあるということは5つの小単位が出来るという事にもなり、それぞれがグループとして成立し人間関係があるというのが1つ面白いのだろうと思います。そしてそれぞれのグループが1つになりチーム単位としてのドラマもまた生まれます。更には対戦相手にも同じことが言え、キャラやグループ単位での描き分けが出来るのであればどんどんキャラを増やせるというメリットにも繋がっていきます。個々のキャラ描写については若干弱くなるのだろうとは思いますが、そこはけいおんでモブキャラにも少ないセリフながら人気キャラを生んだ吉田玲子さんの手腕でなんとかなるとも踏んでいるのでしょう。今のところは上手くいってると思います。
 主人公が戦車道の家元だとかそれだけでは語れないほどには戦車道スキルがあると思うのですが、その上リーダー気質というか司令官スキルがあるというのは良いですね。ちゃんと顔になれてるし、中心にいる感じがします。たくさんキャラがいても中心としてはブレないんじゃないかと思ってます。

  • 聖地を戦車が走るギャップ効果狙い

 まどか☆マギカでは、蒼樹うめデザインの可愛らしいキャラがあんな目にあってしまったり機関銃ぶっ放したりというギャップ効果でも話題になりましたが、ガルパンもそれは狙っていたと思っています。美少女×戦車ではギャップ効果など狙えるはずもありませんが、町中というか実在する町の中を戦車が走ってる、あるいはそこで戦ってる光景は異様とも言えますしギャップがあるのではないでしょうか。戦車が家に突っ込んだり砲弾が当たったりとなかなかお構いなしに戦ってましたが、ああいうことを当然のようにやってしまっているというのは十分にインパクトのある光景だったような気がします。
 もちろん、戦車を女の子がクラッチを動かしながら操縦してる絵もなかなかかっこいいですし、大砲ぶっぱなして相手を沈めて快感に浸るお嬢様というのも面白い光景ですよね。そういうところも含めて意外性を狙ってやっているんでしょうね。戦車でなければならない理由は先に書いたとおりです。

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 色々と書きましたが当たっているかどうかはわかりません。理由は遠くはないと思ってますが。
 練習試合→試合という流れになりそうな今後ですが、果たして主人公のみほたちのあまり強くはない戦車でどう戦うのか、そして戦車道は本当に安全なのか、その辺が気になるところですね。楽しみにしています。