ガールズ&パンツァーの人気を支える(?)良い意味でのいい加減な世界観とあくまで真面目なキャラクターたち

 どうやら、ニコニコ市場の予約数の増加っぷりや某ランキングの推移を見る限り、今期アニメで最も売れそうなアニメとしてガールズ&パンツァーガルパン)と言い切れるレベルにまでなってきました。ぶっちゃけ観るたびに面白くなってきてますし感触としても間違いない感じだと思っています。

 水島努監督作品が好きな自分としては、まあ嬉しいのは嬉しいのですが、監督の作品は割とマニアックというかさほど売れ線に乗ることは無いと思っていましたし、ガルパンもそこそこマニアックかなとも思っていたのでちょっとビックリなのですが、色々な要素が上手くかみ合った結果だとは思います。
 その中でも、ガルパンの世界観やら設定がもの凄くいい加減なところが面白いのではないかと思っています。オリジナルアニメであれば、基本的にはもの凄く世界観を作ってきたりその世界ならではの価値観やシステムを構築し、それを物語と噛みあわせたり、あるいはそこから生じる矛盾点を埋めるための設定を加えたりなどの設計的なことを行なっているアニメも多いことと思います。ですが、ガルパンはその辺がもの凄くいい加減です。「戦車道」なんていう架空の競技をでっち上げて実際の町中で乗り回すどころか大砲をぶっ放したりとやりたい放題です。「輪廻のラグランジェ」では町を壊さないようにという地元の要望を聞き入れて作品にも反映したようなのですが、ガルパンでは市街戦をして戦車が実際にある旅館に突っ込んだりもしています。そこでの突っ込まれた旅館の主人がラッキーみたいなことを言ってるもの無茶苦茶ですが、現実の旅館でも予約好調で、ガルパンタイアップの宿泊企画は休前日やコミケ期間などは既に予約満了してしまうなど現実にも反映されてしまうような状態になっています。
 このようないい加減なガルパンの世界観ですが、個人的にはその辺のいい加減な世界観の作り方が良いのかな? と思っています。ガルパンでは戦車道もそうですが、空母島にある学校に通っていたりという時点ですごく非現実的な世界であることを物語っているわけですが、戦車道といいある程度そういう世界観であることを1,2話までにかなり見せていたと思います。その下地があるものだから、割と何でもありな世界観でありながらその上での青春が描けているのではないかと思っています。
 ガルパンは青春モノだと思っています。ギャグものでもコメディものでも青春は描けると思うのですが、ガルパンで描いているのはどちらかと言えばスポコンに近い青春ではないかと思っていますがまあそこはさておき。彼女らは無茶苦茶な世界観ではありますが、その中で青春を駆け抜けるわけですよ。そこがおかしみでもあり面白さにも繋がっているのではないかと思うわけです。例えば、大洗女子のあんこうチームなんかはすごく真面目だとは思うんですが、その他のチームも至って真面目なんですよね。バレー部はバレー部で、歴女歴女でどちらもキャラが濃いだけでふさげてなんかはいません。生徒会チームは会長は干しいも食ってるだけではありますがそれでも全体は観てるように感じますし、他の二人は非常に真面目ですよね。唯一下級生チームだけはもの凄く遊んでいるわけですけど、スポコン的な青春ではなくここだけはコメディ作品的な青春を送っていると考えるとふざけているとは言い切れなくなると思います。他校のチームも極めて真面目ですよね。戦車の中でお茶をするのは習慣なんだったら仕方ないですし、行軍の際に歌を歌い出すのは戦争映画とかではよくある(?)光景なのでふざけてなんかないですよね。ただそのキャラにとっては真面目というか普通のことなのですが、視聴者からすればとてもシュールで可笑しみのある光景なわけです。水島監督でいえばイカ娘とかAnotherあたりにそれを感じることが出来るような気がしますし、有名なアニメだとまどマギ暁美ほむらあたりがいい例かなと思ってます。ただそれもこのヘンテコな世界観の上にあるわけで、どちらかと言えばキャラクターの魅力の付加価値になったり、ともすれば重厚になりがちな戦車描写に緩さをプラスしてバランスを取ってるとも言えると思います。
 水島努監督と言えば先程も挙げたイカ娘なんかが、強烈な違和感のある存在を出して非現実的な世界観であることを示しておきながらそこの説明をせずキャラクターたちは受け入れてしまうという感じで描かれてますが、ガルパンも同じ方式なんですよね。戦車道の成り立ちや現代と何処で分離してしまったのか不明な世界観については、もしかしたら詳細な裏設定があるのかもしれませんが、恐らくはイカ娘の存在や生い立ちについての設定は殆ど無いのだろうと思うのと同じように、ガルパンの世界観や戦車道の設定についてはそんな詳細なものはないような気がします。この辺は、アザゼルさんやAnother、じょしらくなんかにも通じる世界観の作り方なのかもしれませんが、監督がこれまでアニメにしてきた作品によくあるパターンでもあると言えると思っています。得意な形を初のオリジナルに持ってくるのは自然な流れとも言えるでしょう。
 先ほどチラッと挙げた「魔法少女まどか☆マギカ」なんかだと、魔女と魔法少女キュゥべえと契約とかソウルジェムとか、そういう世界観やシステム的な設定の面白さみたいなものがあったと思ってますが、ガルパンではむしろそこを詰めず、ツッコミどころ満載のまま更にネタを被せてくるという感じから、視聴者に細かいことを考えさせる間を与えない作りが、よりアニメファンにウケた要因ではあると思っています。そういう意味では、いい加減でも見栄え的に、あるいは話の流れ的に面白く出来る世界観や設定が人気の一つの要因になっているのではないでしょうか。もちろん、監督の得意手でもある絶妙なテンポと演出があってこそではありますけどね。

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 そんなガルパンも終盤に差し掛かって来ました。期待以上に面白かったロシアチームの上坂すみれさんの起用とか、まだまだ何かやらかしてくれるような気がしてて楽しみですが終わらせてしまうのが勿体ない気もしますね。とりあえず最後まで無事放送されて欲しいです。

TVアニメ『ガールズ&パンツァー』オリジナルサウンドトラック

TVアニメ『ガールズ&パンツァー』オリジナルサウンドトラック

ガルパンサントラ、あんこう踊りやロシアチームの歌も入ってるそうですよ)