『よんでますよ、アザゼルさん。Z』はどうして1期から大幅に売上が減ったのか?

 今年春、2年ぶりにアニメ化されたアザゼルさんでしたが、1期と比較してBD/DVDの売上が大きく落ちてしまいました。詳しく観てみるとDVD版の大幅減が大きかったのもあるのですが、BDのほうも半減に近いので1期で買っていた人の多くが購入を見送ったと観て間違いないでしょう。人気キャラの芥辺やベルゼブブの大幅な出番減が主なのでしょうけど、それ以上に離れてしまった大きな要因となったものがあります。
http://dvdbd.wiki.fc2.com/wiki/%E3%82%88%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%BE%E3%81%99%E3%82%88%E3%80%81%E3%82%A2%E3%82%B6%E3%82%BC%E3%83%AB%E3%81%95%E3%82%93%E3%80%82(「アニメDVD・BD売り上げまとめwiki」より)
 アザゼルさん1期では震災直後ということもあってか注目度の低さがすごくて、ある意味で完全ノーマークな状態でのスタートでした。しかも放送局はMBS(関西準キー局)・TOKYO MX・BS11のみという貧弱さ。『変ゼミ』と30分枠を分け合う形での放送など、ヒットするアニメのやり方には全く見えない状態でした。が、放送が始まると徐々にpixiv界隈での投稿が増え、それとともに同人誌もまとまった数が出てくるようになり、あまり聴いたことがない「全巻購入で全員参加できる無料イベント参加」という特典を付けたことやそこに神谷浩史さんや浪川大輔さんといった人気男性声優が参加するということもあってか、BD/DVDはあわせて1万枚近く売れました。売れた理由はさまざま考えられそうですが、2期も全員参加の無料イベント特典がありますし参加する声優さんも変わらないことから1期と2期の売上の違いの理由としては挙げにくいと考えられます。1期から2年と比較的間隔が空いたことも要因として挙げられるとは思いますが、2年くらい空いた2期でもここまで売上の落ちなかったアニメもありますからそこも主因としては弱い。となるとやはり内容の問題ではないかと考えています。
 1期と2期の大きな違いは、活躍するキャラクターの違いでもあります。1期では特にベルゼブブの暴露の能力を活用したネタが多く、芥辺も美味しいところを持っていくことが多く、主人公であるはずのアザゼルはとても主人公とはいえないような役回りが多かったと思います。2期は逆にアザゼルが前面に出たエピソードが中心となって構成されていて、中でも淫奔の能力に合わせた性的な意味での下ネタが多かったと思います。よって必然的にベルゼブブや芥辺の出番が減って、1期のような内容を期待していた視聴者が離れていったのだろうと思います。面白さの質が変わってしまったとも言えるでしょう。
 ただそれだけじゃないんですよね。それは1期放送中〜後に出た同人誌を観ればわかるのですが、芥辺×佐隈やベルゼブブ×佐隈というカップリングものの人気で支えられていた感じがありました。あのお下劣なギャグアニメがどうして女性に人気があったのかという理由がその辺にあったのです。下ネタそのものの許容も男性よりは女性のほうがあるという認識なので、乗り越えたかあるいは下ネタも笑えた女性アニメファンがカップリング妄想で楽しんだのだろうと思います。なので、2期はそういうシチュエーションがほとんど出て来なかったことも大きく減らした原因になったのだろうと思っています(個人的にはアザゼル×佐隈もアリだとは思いますが、あれはガチじゃないから良いとも思えますし、ガチだとアザゼルの淫奔の能力が笑えなくなるので妄想しづらかったのかなと)。ただ、監督も参加していたイベントでの神谷浩史さんへの歓声の凄さなどからある程度これは予想できたはず。それでも敢えて2期をこういう方向性にしたのはどうしてだったのでしょうか。
 個人的には、監督はギャグで勝負したかったのだろうなと考えています。水島監督といえば『クレヨンしんちゃん』の元主要スタッフですし、これまで手がけてきたアニメにもギャグものが多くラインナップされています。今のアニメ業界でも特にギャグアニメが大好きで、かつ昨今のギャグアニメが売れない風潮からギャグアニメの企画そのものが減ってることへの危惧もしていることでしょう。あまり関係ないですが、「イカ娘はギャグではなくコメディ」と言うくらいにギャグアニメへのこだわりも持っています。そんな監督なので、アザゼルさん1期は確かにギャグアニメのカテゴリには入っていたものの、売れた原因はギャグとは別のところだと気づいていたのではないかと思ってます。原作のアザゼルさんの本質は下ネタギャグです。キャスティングやエピソードの選び方などから1期はギャグ部分以外のところで引っかからないか? という構成だったように感じました。(たまたまかもしれませんが)その狙いが当たった結果売上にも繋がったわけですが、2期では原作が本来持つ下ネタギャグの部分で勝負してみよう、とした結果があの構成だったのだと思っていますし、そうした場合にアザゼルがメインのああいうエピソードが中心になったのだろうと思います。なのでたまたまベルゼブブや芥辺のエピソードが少ないというよりは、敢えて少ないエピソードを中心に構成したのではないかと考えています(たまたまテレビでオンエア出来るエピソードがそうだった可能性も否定はできませんが)。
 結果的にはアザゼルさん2期はあまり売れず、監督の挑戦はあまり視聴者には受け入れられませんでした。売上減についてはがっかりはしているでしょうけどある程度納得はしてるとも考えています。1期は原作の面白さが直接伝わったわけではなかった可能性があったわけで、2期はより原作のテイストに近づけるように作られたのは原作への恩返しの意味合いもあったのでしょうが、1期がかなり売れたこともあって製作会社への還元も済んでいて好き勝手出来る環境でもあったからなのだろうとも思います。
 ただ、1期から2期のノリでやっていたら数字がどうなっていたのかはわからないので何とも言えないですし、2期から観る視聴者はさほど多くない現状からも、アザゼルさん2期は売上減だけで「失敗」とも言い切れないのだとも思っています。

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