アニプレックスレーベルが抱える弱さと所属するアニソンアーティストに対する方針について

 今期の「幻影ヲ駆ケル太陽」でデビューした岡本菜摘などいくらかのアーティストを抱えるアニプレックスの音楽レーベルですが、ちょっとアーティストが増えてきたように感じます。岡本菜摘と同じアニソングランプリ経由でデビューして所属している河野マリナやFate/Zeroなどでもお馴染みのLiSA、そして声優の花澤香菜ギルティクラウンから生まれたEGOISTなどがいるそうです。まあLANTISスターチャイルドなどに比べると数は全然多くないのですが、河野マリナだとAチャンネルでのデビュー以来2年以上経つのにまだ2枚しかシングルがリリース出来ていません。物語シリーズセカンドシーズンの何処かでEDを担当することは決まっていて久々のリリースとなりますが、その間にはノンタイアップでのシングルを出すこともせず半ば放置気味になっていました。これから岡本菜摘との兼ね合いもありますし、どちらが歌が上手いとかそういうこともないためむしろ棲み分け出来るのかもしれませんけど、ますますタイアップもらえる機会も減るでしょうし厳しいと思います。花澤さんが所属にいるし、ノンタイアップでも万枚以上売るLiSAもいますからなかなかチャンスが無さそうです。そもそもアニプレックスレーベルには弱みがあります。毎クールアニメを4本以上作るような製作会社なのにタイアップの機会がそう多くないのには理由もあります。
 アニプレックス製作アニメでは音楽制作が何処になるのかがいくつかパターンがあります。1つはアニプレックス本体や親会社であるSMEなどが音楽制作をする場合、もう1つはLANTISキングレコードなど(この2社以外にはない?)社外の音楽制作会社と組んで行う場合です。後者なアニメ(ヴァルヴレイヴとかDOG DAYSとか夏色キセキなど)ではほぼ音楽制作会社所属アーティストだったりその影響下にあるアーティストやユニットがタイアップされることがほとんどで、ここにアニプレックス所属アーティストが割り込むことはほぼないと言っていいでしょう。では前者の場合はどうか。アニプレックス所属アーティストのタイアップの少なさを観ても分かる通り、アニプレックス作品への所属アーティストの起用頻度はそう高くありません。
 岡本菜摘らと同じようにアニソングランプリ経由でメディアファクトリーからデビューをした鈴木このみの場合だと、黄昏乙女×アムネジアでのデビュー以来1年4ヶ月の間に4枚リリースしていて全てアニメタイアップも貰っています。MFの場合だと音楽制作もMFの場合はキャラソン形式の主題歌になるケースがそれなりに多いのですが、そういったアニメでも主題歌に起用してもらえてるあたり、ちゃんとバックアップをしているのがわかりますし、軌道に乗るまではアニメとセットで間隔を詰めながら露出させて顔や名前を覚えてもらうようにしているのがわかると思います。アニメタイアップを定期的に貰っているアニソンアーティストもいませんからちゃんと売ろうとしていますよね。アニソングランプリとは関係ありませんが、ジェネオン所属のやなぎなぎもデビューから1年半で5枚リリースしていますが全てアニメタイアップがあります。
 どちらも歌唱力が抜群にあったり、やなぎなぎの場合はsupercellゲストボーカル自体にも知られた存在でもありますから比較にはならないのかもしれませんが、相当にバックアップの差があるのがわかるかと思います。が、アニプレックスには別の問題もあります。親会社であるSMEとの関係です。
 アニプレックスSMEが親会社ですが、当然ながらSMEは超大手の音楽制作会社です。アニソンアーティストとしても、Kalafinaを始め、藍井エイル春奈るな、声優の戸松遥などが所属しています。が、それ以上に数多くのアーティストが所属しています。日5枠(日曜午後5時)やノイタミナ枠で起用されるアニソンアーティストじゃない系の歌手やユニットの多くがそうですよね。例えばあの魔法少女まどか☆マギカも音楽制作はSMEですしClariSKalafinaSME所属ですから、あれだけのアニメと音楽や主題歌との相乗効果が生まれたのは偶然の産物とも言えるのかもしれません。Fate/Zeroソードアート・オンラインあたりはLiSAが起用されていたあたりでアニプレックスが主題歌への権利も持っていたのだろうとは思いますが、4つの主題歌のうち3つまでがSME系でもあったことから、力関係は明らかだろうと思います。ライトなアニメ視聴者も観るような枠ではSMEが強い権利を持っているのは、その枠を活かして所属アーティストの露出を増やしたいからに他ならないのだろうと思います。
 あとは、アニプレックスが権利を持っていたとしても、所属アーティストを起用せずキャラソン形式の主題歌としてしまうケースも多く見られます。WORKING!!サーバント×サービスなんかでもそうですが、BD/DVDの販促としてキャラソン主題歌を特典化してしまい音楽CDとしてはリリースしないというあの形式ですが、その商法の賛否はともかくとして、アニメと関係のないアニソンアーティストが歌う場合だとあくまでもCDの売上が問題なわけですが、そこがわからなくなるようなBD/DVD特典形式になるような主題歌やキャラソン形式で歌うわけにはいかないわけですから、アニソンアーティストを起用する枠が自動的になくなることを意味します。もちろんそうじゃなくてもキャラソン形式での主題歌では出番がありません。ポニーキャニオンazusaLANTISZAQのような自らが作詞や作曲も手がけるシンガーソングライターであれば、キャラソンとして楽曲提供という形で参加も出来ますし売れれば印税も入りますから問題はないのでしょうが、歌うだけの人であればそれもかなわないわけです。アニプレックスが主題歌を自由に決められるようなアニメの場合はそのアニメに即したような主題歌プロデュースが多いようにも感じますので、アニソンアーティストよりもキャラソン主題歌というふうになっているのかな、とも思います。
 そもそも、アニプレックスは音楽方面をどれだけ真剣にやる気があるのかがずっと疑問です。2年ほど前にLiSAの記事で同じようなことを書きましたが、状況は全く変わっておらずまた河野マリナへの方針も定まらないままに花澤さんや岡本菜摘を所属にしてデビューさせました。MFの鈴木このみジェネオンやなぎなぎのようにある程度どんなアニメでも合うようにプロデュースしタイアップを付けるところまでの意気込みを感じません。アニプレックスが音楽部門を自由に出来ないというならSME系列に任せれば良いわけですが、自分たちだけでやりたい意思は感じられるものの、時にはSME所属のアーティストを起用したいとなると都合の良い考えにも見えてしまいます。所属アーティストを看板にするほどには高く評価していないのであれば、デビューそのものにも疑問ですしデビューさせるだけさせてちょっと無責任かなとも思ったりします。アニソングランプリのグランプリ受賞者を自動的にプロデビューさせてアニメタイアップもつけるというのがあるからなのはわかるのですが、同じようにグランプリ受賞者だった喜多修平佐咲紗花は割とタイアップもらってますしリリース頻度もそれなりにあるので、河野マリナあたりはなおのこと冷遇されているようにも見えるのですよね。受賞者をとりあえずデビューさせるだけというノルマをこなすだけで終わりなのであればグランプリそのものの意味も変わってくると思います。
 ただでさえ看板アーティストのLiSAや人気声優な花澤さんがいるわけですから、彼女らに合うアニメだと優先的に起用され、より他の所属アーティストにチャンスはなくなります。もちろんもっと冷遇されているアーティストなんてたくさんいるのでしょうが、それはさておき、この後の河野マリナがどうなるかと、岡本菜摘の次がどうなるのかで見えてくるのでしょうか。

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