京都アニメーションと角川書店の関係は切れたのかどうかを考えてみた

 「Free!」もどうやらヒットしたようで、自社企画と言ってもいいようなアニメで着実に実績を重ねつつある京都アニメーションこと京アニですが、その自社オリジナル、あるいは京アニエスマ文庫や京都アニメーション大賞応募作はポニーキャニオン製作で作られています。そんな京アニ企画作品が「中二病でも恋がしたい!」「たまこまーけっと」「Free!」そして次クールでやる「境界の彼方」と続いていることで、もう一方のメインであった角川書店製作アニメが相対的に遠ざかっています。
 京アニといえば、Key3部作や「けいおん!」シリーズのポニーキャニオン製作と、ハルヒらき☆すた、日常などがあった角川書店製作の2つの製作会社とのタッグでしかアニメを作っていないという割と保守的な制作会社なのですが(同じような、地方にあって特色を出そうとしているアニメ制作会社のP.A.WORKSは、ポニーキャニオンのほかにもアニプレックス角川書店バンダイビジュアルなど数々の製作会社と組んでやってる)、更にその一方とだけ組むことが多くなるといよいよ片方を切り捨てたのかなという気がしてきます。
 ちなみに京アニは角川作品とKey原作アニメを交互にやっていたような時期がありましたが、CLANNADCLANNAD 〜AFTER STORY〜→けいおん!けいおん!!とほぼ3年もポニーキャニオン製作で作品を作っていたことになりました。らき☆すた以来4年ぶりの角川作品だった日常をやった2011年も、暮れには「映画けいおん!」の上映がありましたしポニーキャニオン企画のほうへの重心があるようには思います。そして氷菓以降は角川作品がなくなり、自社企画ばかりにシフトしていきます。
 京アニのように組む製作会社を絞った制作会社といえば新房昭之監督でおなじみなシャフトがあります。以前はスターチャイルドメディアファクトリーポニーキャニオンなど製作会社を選ばないようなスタンスだったのですが、2011年春クールにあったスターチャイルド製作の「電波女と青春男」以降、組む製作会社は「ひだまりスケッチ」シリーズや「魔法少女まどか☆マギカ」「物語シリーズ」などのアニプレックスオンリーになっているのですよね。シャフトは物語シリーズセカンドシーズンが年末まで続いた後に「ニセコイ」が年明けから決まっているので、本当にアニプレ作品ばかりになってるんですよね。京アニPAほど自社企画という感じでもないので、完全にアニプレが供給してくれる企画オンリーでやっていくというある意味リスキーなことをやってるようにも感じてしまいます。アニプレが良い企画ばかり持ってきてくれれば大丈夫なのかもしれませんが、シリーズ物の割合が増えてきたようにちょっとしんどそうな感じもしています。
 京アニで続編モノといえばいくつかあるのですが、3度4度とテレビアニメ化するような作品には出会ってません。続編ものが少ないわけではないのですが、予定通りの続編モノというパターンが多く予定のなかった続編ものといえばハルヒけいおんくらいではないかと思います。総集編的な劇場版をやり、恐らくは来年に2期をやるという話の中二恋はありますが、どういう形の2期なのかはまだ全くわかりません。ひだまりスケッチのようなシリーズ物としてやっていけるようなコンテンツなのかどうかという疑問もあります(やってみなくてはわかりませんが)。京アニ企画といえば京アニ大賞や京アニエスマ文庫、オリジナル路線などがありますが、原作やアイデアの供給源とするといかにも乏しいものがあります。京アニ大賞作品がアニメ化しヒットしていくサイクルが続けば応募作品が増え、相対的に作品レベルが上がったりアイデアの種類が豊富になったりとなりそうではあるのですが、今のところ京アニ大賞受賞作の作者にどういうメリットがあるのかが見えてこない点があり(発行部数が少なかったり、流通がメジャーなラノベレーベルとは違い取扱店が限られている……最近ではアニメイト店頭でも見かけるものの)、また作者が発言したりしてるのも観たことがないので実在しているのかどうかというのも不明ですし(確定的な情報があったらお教えください)、これで応募が増えるのかどうかは不明な点があります。なので、この状態で原作やアニメ原案としての供給元としてどのくらい回せるのかという意味では疑問もあります。ポニーキャニオン京アニといえばKey作品とかけいおんもあるのですが、Key作品は結局アニメ化することの無かった「リトルバスターズ!」から考えてみてもアニメ化した3部作までが予定通りだったようですし、けいおんであれだけのヒットを飛ばしながら次のポニーキャニオン芳文社京アニのアニメの話が出てこないあたりで京アニ芳文社との関係が切れてる可能性もありますので、ポニーキャニオンから京アニに企画を持っていく形でのアニメは止まっている可能性があります。とすると、製作がポニーキャニオンとだけでは京アニの現場が回らないということにもなります。アニメ制作会社は作り続けないと社員を食わせていけません。ましてや京アニの抱える腕のあるアニメーターや演出家を離れさせないためにも儲け続けなくてはなりません。そうなると、やりたい企画を定期的に供給したりバックアップしてくれるだけじゃなく、売り上げ的にも期待できるような作品を提案してくれるようなところでなければならない、ということにもなります。
 ここまで書くと何と都合のいい……となりますけども、そうした「穴」を埋めてくれそうなのが角川アニメなのではないかとも考えています。角川書店はさほどバカ売れするような企画を持ってくる気はしないのですが、アニメ化しても成功しそうにないと言われていた氷菓含む「古典部シリーズ」を京アニに提案したり、京アニではなくP.A.WORKSですが「Another」や「RDG」などの萌え絵が表紙なラノベの路線とは違うような小説をアニメの原作として送り出すこともしているのですから、こういう路線の原作をアニメにする企画を用意してる……とすると、京アニにもやってもらえるような方向にも持っていけるのではないかとも思うのです。
 それだけに気になるのが、境界の彼方や中二恋2期の次あたりに控えてる企画です。半年作って半年何も作らないようなサイクルではなく、常に何か放送しているような状態になりつつある現在ですから、来年の割と早い段階に何か発表があるはずです。それが京アニオリジナルやエスマ文庫原作なのだとすると、本格的に京アニ自身が手がける企画でアニメを作り続けていくという意思表示にもなりますし、ポニーキャニオンが「新世界より」のようなアニメの企画としては意外性のあるような原作を提案したり漫画原作アニメを京アニとやるようなことになれば、角川とは本格的に切れたということになります。ただし、角川は原作もののテレビアニメとしては2007年のらき☆すたから2011年の日常まで4年も間隔が空いており、氷菓からまだ1年というこの時期に切れたとか言うべきではないのかもしれません。前述の4年の間にはハルヒの映画とか角川とは仕事をしていたので、そういう細かい企画でタッグを組むかどうかにも注目していきたいです。
 京アニオリジナル路線もそれはそれで良いのですが、個人的には氷菓はなかなか素晴らしかったと思っているので、手がける作品の幅を広く保っておくためにも角川企画な京アニ作品をまた作って欲しいと思っています。