今年のアニプレックスのテレビアニメが本格的にヤバい件

 あの花の劇場版がロングラン、まどか☆マギカ新編が大ヒットと映画では好調なアニプレックスですが、テレビアニメはここのところパッとしないような気がします。売上的にも、現在放送している「物語シリーズ セカンドシーズン」こそアニプレがかつて掲げていた「覇権」と言える数字にはなっているものの、過去のシリーズでは5万本を超えていたことを思うと4万本を少し超えた程度と徐々に下がってきておりファンが離れつつあるようにも見えます。その他の作品はというと、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」2期は1巻こそ2万本を超えましたが1期からは8000本程度落としており、5巻あたりになると1万4000本程度と1期の頃には相当な話題をさらった時の作品とは思えないほどにファン離れしてしまう結果になってしまいました。その他の作品では1巻でも1万本を超える売上を記録したものはなく、3000本を下回った作品も「ささみさん@がんばらない」や「幻影ヲ駆ケル太陽」「銀の匙」などいくつか出てきており、悪くてもそれなりの数字を出してきたアニプレ作品に異変が出ていると言っても良いと思います。それらを上回った作品でも、1巻から最終巻で7500→2200本となった「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる」や8200→4700本と右肩が止まっていない「革命機ヴァルヴレイヴ」など、1巻の売上を維持できずどんどん下がっていくような作品がかなり目立ちます。
 そしてもう一つ気になるのが話題性の問題です。かつてなら「化物語」や「Angel Beats!」、そして前述の「俺妹」「あの花」「まどマギ」など、アニプレックス作品といえばとにかく話題性を高めるのが上手い印象が強かったのですが、ここのところのアニプレ作品はどれも話題性に乏しいような気もしています。今期は「キルラキル」がそれなりに話題にはなっているようにも見えますが、まどマギ映画などに話題をさらわれてしまっているようにも感じます。今期の中では十分な人気を得ているようにも思えますが、それでもかつてのアニプレ作品と比較すると物足りない印象があります。
 ではどうしてアニプレ作品は不振に陥ってしまったのでしょうか? また、話題性を獲得しにくくなっているのでしょうか? ちょっと考えてみたいと思います。
 アニプレ作品が徐々に勢いを失ってきたのは2012年に遡ります。この年にもアニプレックスは「妖狐×僕SS」や「偽物語」に「Fate/Zero」2期、そし「ソードアート・オンライン」と確実にヒットを飛ばしており勢いは持続していました。が、スケジュールの関係などで作画崩壊などを起こした「戦姫絶唱シンフォギア」(2期はアニプレが製作委員会から外れた)や「夏色キセキ」あたりから確実に何かがおかしくなっていっていたようにも感じました。また「恋と選挙とチョコレート」や「もやしもんリターンズ」「となりの怪物くん」など
売上の伸び悩む作品が続出し、さらには2012年秋クールから始まった2クールもの3作品の売上が悲惨なことになってしまいました。うち1本の「ROBOTICS;NOTES」はシュタインズ・ゲートと同じスタッフによるゲーム原作のアニメですが平均で1000本を超えるのがやっとという状況、「絶園のテンペスト」はボンズに人気脚本家である岡田麿里をシリーズ構成に迎えながら最新巻では500本台という状況、そして日5枠で期待されていた「マギ」は1巻の1万6000本から最終巻では4000本を切るところまで落ちてしまいました。企画したアニメが全部売れることなんて不可能ではあるのですが、ただちゃんとした制作やスタッフでしっかりとしたアニメになるはずだったこの3作品が売り上げ的には散々だったことで、アニプレックスアニメ製作会社としてのここ数年での優位さはほぼ無くなったと観ても良いんじゃないかと思っています。
 代わりに浮上してきたのがバンダイビジュアルポニーキャニオンでしょう。バンダイビジュアルは一時期深夜アニメの本数をかなり抑えていましたがここのところ増加に転じつつあり、「黒子のバスケ」や「境界線上のホライゾン」、昨年末に大ヒットした「ガールズ&パンツァー」へとつながっていき、今年は「宇宙戦艦ヤマト2199」「翠星のガルガンティア」などが挙げられます。ポニーキャニオンも「けいおん!」以来は「ゆるゆり」くらいしかヒットが無かったようにも感じていましたが、京アニとの「中二病でも恋がしたい!」と「Free!」がヒットし、更にかなりの大ヒットとなった「進撃の巨人」もありました。キングレコードの「うたの☆プリンスさまっ♪」2期や「戦姫絶唱シンフォギアG」などの作品もあるなど、他所で景気のいい話がたくさんあったようにも思いますし、これらは数年前ならアニプレックスの製作でアニメ化されていたのではないかと思う企画もあるくらいです。一時期の「大作はアニプレから」という状況が異常だったのだろうとは思うので健全な状態になってきているのかなとも思うわけですが、売れるのと話題になるのとを両方を他の製作会社に持って行かれている状況が今のアニプレの置かれている状況なのではないかと思うわけです。それに、他所の製作会社の企画者が優れているというよりは、アニプレの企画者の企画が落ちてきているような気もするのです。
 企画といえばオリジナルアニメでこそよりモノを言う気がするのですが、今年で言えば「ビビッドレッド・オペレーション」はそれなりに売上が安定しましたがそれでも6000本を少し超える程度、前述のヴァルヴレイヴは売上が安定しませんでした。幻影に至っては1000本に届かない状況になってしまいました。今期も分割2期のヴァルヴレイヴにキルラキル、「ガリレイドンナ」と「サムライフラメンコ」というオリジナル多発ではあるのですが、ヴァルヴレイヴはよほどすごくならないと1期超はあり得ませんし、ガリレイドンナサムライフラメンコは序盤の動きとしてはかなり地味というか話題になっているとは言いがたい状況が続いています。まどか☆マギカクラスの大ヒットって狙って出せるものでもないのですけど、企画として面白い!と思えるような企画なアニメもなかなかやれていないようにも思うのです。
あと気になっているのがイベチケ商法です。これはもちろんアニプレに限らずなのですが、アニプレ作品ではかなり露骨にイベチケつけて1巻だけ数字を高くするようなアニメが目立ちます。前述の右肩下がりの作品はだいたいそうなのですが、最近ではテコ入れのために後からイベチケをつけることを発表するケースもありました。先ほどあげたマギなどは当初は発表してなかったと思われるイベントを発売が近づいたタイミングで発表し、それの優先申し込み券を終盤巻に特典として入れるようなやり方をしていました。右肩下がりが止まらないゆえの措置だったのでしょうけど、結果的には全く数字に表れることもなく空振りに終わりました。マギでは他にも、イベントを昼夜2回制にする…のはいいのですが、昼と夜の優先申し込み券を1巻と2巻に分けるというイベチケ頼みにも程があるやり方までしていました。マギではないのですが、中にはイベチケ効果があまりないような作品もあったりもしたので、エスカレートしてイベチケ効果の高い声優さんを集めてアニメを作るようになるんじゃないかとさえ考えるようになったくらいです。そうなると本当に本末転倒だなと思うのですが。
 また個人的に気になっているのが、アニプレの企画が過去の遺産を食いつぶしてるような感じがするところです。ひだまりスケッチ物語シリーズ夏目友人帳のような長期シリーズ物ももちろんのこと、あの花やまどマギの劇場版は過去にヒットしたものの繋がりが全てなわけですし、新たに起こした企画がヒットしているわけではないのです。前述のビビオペは「ストライク・ウィッチーズ」の繋がりからですし現在放送中のキルラキルも基本的には「天元突破グレンラガン」と同じスタッフがやっているものです。ここに何かひねりがあって面白かったのがまどか☆マギカとかだったりするわけですが、それがないので、内容以前に冒険していないような印象も受けてしまいます。前述の銀の匙や「サーバント×サービス」はそれぞれ「鋼の錬金術師」「WORKING!!」といった過去にアニプレが手がけて大ヒットしたアニメの原作者が次に出した作品を作者の認知度からアニメ化したようにも見えましたし、前述のもやしもんリターンズにしても、あまり今アニメ化してウケるかどうかの視点がないような企画が目立つ気がしています。また、物語シリーズまどか☆マギカの大ヒットですっかりアニプレがシャフトを専属化してしまったのもその流れにあるのかもしれません。前述のささみさんは大コケしましたがこのコンビは健在……と言いたいところですが、来期の「ニセコイ」がどうなるか次第でここのコンビもどうなるかわからなくなってきてしまいそうです。過去のヒット作やその繋がりを重視することは間違いではないのですが、守りに入っているような、あまり企画がアイデアマンとしての仕事をしていないような、そんな気がしてしまうのです。そのくらい、新規企画に目新しさがなかったり、あるいは2期3期と続けていけるような企画が無い状態が続いているように感じています。
 この状態であれば、おそらくはあの花の長井龍雪監督と岡田麿里田中将賀トリオでまた何かやるでしょう。まどか☆マギカもまだまだ続くのでしょう。ただしそこに目新しさは見いだせるのでしょうか。まどか☆マギカは好きですしまだ何かやってほしいのですが、全く同じスタッフを使って続編しかやらないのであればそれはそれで尻すぼみを生みかねないのかなと思ってしまいます。こちらが期待しているのは、今のアニメ界の常識では生まれないような視点や世界観を持ちつつも面白そうと思わせてくれるアニメです。
 来期の「世界征服〜謀略のズヴィズダー〜」は面白そうですし、イラストがサモンナイトシリーズでもお馴染みの黒星紅白さんでシリーズ構成にTYPE-MOON星空めておさん、監督が岡村天斎さんとコンパチ的な面白さが、あるいは化学反応が生まれそうな予感のするアニメということで期待しています。今年あたりはアニプレックスとしてもややローテーションの谷間的な世代だったということで、来期以降のアニメに期待したいところですが……。