横展開は諦めた? 劇場版魔法少女まどか☆マギカ新編の内容から見る今後の展望

 劇場版まどマギ新編4回目観てきました。一応キャラが写ってるフィルムもらえたのでいずれ現像してこようかと思っています。
 さて今回は、そんなまどマギ新編から観る今後の展望です。テレビシリーズが終わった後に新房監督がまだまだ色々とやりたいとか言ってたと記憶しているのですが、総集編的な劇場版がありそして今回の新編ととりあえず続いたわけですが、虚淵さんあたりが自分じゃない別の作家が書いたものもシリーズの一部になれば、と言っていた記憶があるんですが、そういう状況には程遠いような感じになってきているように見えます。公式的には芳文社から出てる「かずみ☆マギカ」や「おりこ☆マギカ」「すずね☆マギカ」くらいしかスピンオフや派生コミックは出ておらず、「まんがタイムきらら☆マギカ」にしてもほぼ二次創作で占められているということは別人による別キャラでの展開というのは基本的になく、横展開はしていないも同然という状況になっています。
 新編ではどうなるのか気になっていた部分がありました。それは、引き続き虚淵さんや新房さんがやるのかという部分と、どれだけまどマギ本編の世界観に新編で新たなものを放り込んでくるのか、という部分でした。結論から言うと前者はもちろんそのまんま、後者も全く足さなかった、というものでした。
 これをどう見るかですが、個人的には非常に今後の展開においての可能性を狭めたと感じています。キャラクターは本編から引き続きのキャラばかりですし、新キャラの百江なぎさに関しても既存のキャラの新解釈という感じで新規という感じはありませんでした。声優も阿澄佳奈さんということで非常に馴染みのある人が演じてる感じが強いです。要は既存の5人に新たな可能性を見出したに過ぎず、新しく付け加えた要素というのが皆無に等しいのですよね。つまりどういうことかというと、今後ともこの「まどマギ」を続けていくとしても、虚淵さんや新房さんが手がけてかつあの5人でのお話、という縛りというか限定が入ってしまうような気がしています。特にきらら☆マギカでもほとんどがまどマギキャラが出ている作品ということなので、今後もあの5人(+キュゥべえ?)が活躍しなければならないような気がします。次の新作で新キャラメインとかそういう感じにはもうしにくくなっちゃったのかなあと思います。
 肯定的に捉えるなら、まどマギという作品のどういう部分がウケたのか、という分析がしっかり為された上で新編が作られたのだろうという部分です。まどマギ本編は魔法少女ものなのにキャラがバタバタ死んでいく意外性がウケた、という部分以上に、日常系アニメ的な少ないキャラクター同士の関係性とかあまり外部からの干渉の無い世界観であるとかそういう部分が一番のキモである、と分析したのではないかと思うのです。新房監督はちゃんと5人とも活躍させてあげたいと言ってましたし(特にさやかに関してはずっと可哀想だとか言ってましたし)、虚淵さんの描きたかったのは最後のほうとかあの世界観でしょうけど、「干渉遮断フィールド」というより閉鎖的な環境下に置く世界にしてしまって、日常アニメよりもさらに基本キャラたちだけしかいない世界観にしてしまってますからね。新編は特にほむらが関心を向けたキャラクターのみしか本格的には登場できない世界でもあるので、よりメインの5キャラを活躍させることができる舞台に敢えてしたとも考えられるわけです。
 さかんに考察された作品だったから、という理由も考えられそうです。ファンは色々な角度から考察したり分析したり、または妄想したりという楽しみ方をされたテレビ版でしたが、そうしたところから新編は逃げずに、むしろ真っ向から作ってやろうという方針もあったのかもしれません。新編は、時間軸的に考えると本編の最終回の終わりの終わりの部分からのスタートなんですよね。そこから生まれる話でどういうエピソードが描けるのかというところから始まったのではないでしょうか。その意味では工夫された内容になっていたと思いますし、そこからの発想でああいう内容になったのは素直に凄いと思います。
 とはいえ、「魔法少女まどか☆マギカ」シリーズのうち「魔法少女○○○☆マギカ」シリーズが派生してどんどん色んな展開をしていく……イメージが当初はあっただけに、広がりのなさには物足りなくもあります。コミックももっと原案とか作家に色んな人を巻き込んで展開して欲しかっただけに、人的な広がりのなさが一番大きな原因になってるような気もします。そうなってしまっている理由は何かと考えた時に、「製作委員会」が思い浮かびました。
 魔法少女まどか☆マギカの製作委員会には、アニプレックス芳文社博報堂DYメディアパートナーズニトロプラスムービック、シャフト(あと製作に毎日放送)とオリジナルアニメの割にはそれなりに多くの会社が名を連ねています。各社の役割や担当はどうなってるのかわかりませんが、芳文社がキャラクター原案やコミカライズの権利を、ニトロプラスが脚本やノベライズをそれぞれ担当しているようです。つまりは、漫画にしろ小説にしろ横展開するにしても芳文社ニトロプラス以外には権利が無い、という感じなのかなあと思ってます。芳文社がどのくらいの作家を抱えているのかはわかりませんが、4コママンガのイメージが強くあまり本格的なストーリー漫画を描ける作家はいないのではないかとも考えられますし、他の出版社をメインに活躍しているような作家さんを引き抜くようなこともやりにくいのかなと思います。また、シナリオとコミカライズが別々の会社ということもあり、アニメ本編とか映画では協力関係にあっても、その先のコミカライズの展開とかにまで協力関係が及ばない可能性もありそうです。アニメ本編などはお互いに出資してるわけで協力するのは当たり前ですが、その先の例えばコミカライズの展開などに関しては成功すれば芳文社の利益なわけです。互いに塩を送り合えるのであればそうもするのでしょうけど、片方向でしか出来ないのであればやれないのかなあとも思います。派生アニメの展開も、製作委員会にシャフトが入ってることから、やれるものならシャフトでやりたいとなるのかなとも思いました。つまりは、製作委員会を作る時にそれぞれの会社が出資比率に応じて権利を主張し、取り決めたことが、アニメが大ヒットした後の展開をしていくことの足かせのようになっている……と推察できる気がしています。
 ともあれ、まどマギそのものはあの5人がループを繰り返したりしながら少しずつ進んでいく物語、という狭くて深い展開をしていくということで、その部分が好きなファンにはこの先も応えてくれるような展開をしていってくれるのではないかとも言えると思いますので悪い気はしません。ですが、これから新規でファンを獲得していくようなコンテンツにはならないのかなあとも思いますし、「なのはシリーズ」みたいな○年後の世界での続編だとか、「Fateシリーズ」のようにFate/Zeroみたいな話も出来ないのかな、と思うとそれはそれで残念にも思いますが、そもそもがループものの作品なので致し方ない気もしています。
 贅沢な不満(?)ですが、これもひとつ作品愛がある故のこととご了解ください。