何故SHIROBAKOの円盤は売れ続けているのか?

 「SHIROBAKO」のBDが発売以降1ヶ月以上も経過した今週も積んでいて、発売して初動は6000弱だったのが今週にはついに1万を超えてきました。2巻も2週目で大幅に積んでましたし、需要に供給が追いついていない現状がうかがえると思います。水島努監督のオリジナルアニメといえば「ガールズ&パンツァー」でも初動から大幅に積み増しして大ヒットとなりました。SHIROBAKOはそこまで売れるとは観てませんけど、それでも2クールもののアニメとしては異例の売れ方をしていると思います。2クールもののアニメで初動からずいぶんと伸ばしたといえば「TIGER & BUNNY」もありますが、2クールものなのに放送開始から2ヶ月弱でのリリースでSHIROBAKOとは若干事情は異なりますけども、似たような広まり方をしているようにも考えられます。
 さて、そんなSHIROBAKOの円盤が何故こうも売れ続けているのか、疑問に思う方も出てくることかと思います。確かに1クール終わりでも盛り上がりましたし、2クール目に入っても勢いが衰えないどころか更に伸びているという状況ですし、この前のニコ生一挙放送での評価の高さや、前々回であったエンゼル体操やゴスロリ様のバッティングセンター話など伸びる要素はたくさんあると思うのですが、2クールもののアニメが2クール目に入ってから再評価されて更に伸びる理由にはちと弱いような気がしています。今回はどうしてSHIROBAKOの円盤が売れ続けているのかについて考えていきたいと思います。ちなみに品薄商法なのでは? という点については、Amazonで「在庫あり」の状態になる期間もそれなりにあることで否定的に観たいと思ってます。メーカー側もどのくらい作っても売れるのかが手探りな状態なのでしょう。

  • アニメ開始前の期待度が低かった

 これはガルパンの時とか水島努監督アニメ全般に言えることなのですが、毎回決まったように前評判が低いと思っています。SHIROBAKOでも、アニメ業界ものということでそこそこの注目は集められてはいたものの、「Fate」や「Gのレコンギスタ」あたりの前評判の高さの前に霞むばかりでしたし、よくあるオリジナルアニメの開始前でゼロからのスタートという感じでした。また、少し前までのオリジナルアニメそのものが珍しいという状況でもなかったのが、このクールは「結城友奈は勇者である」や「クロスアンジュ」など他にもオリジナルアニメが多いということで、より放送開始時の期待度の低さにも繋がったようです。また、アニメ業界ものというか制作進行が主人公というのも、アニメ開始当初ではかなりマニアックだと観られていたこともありました。実際には普通の社会人あるあるものとして観られるような内容だったことも徐々に知られるようになってきたのもあったのだろうと思いますが。
 おかげで放送開始当初は割と地味な感じの評判だったのが尻上がりに話題となり、1クール終わりの12話での盛り上がりと円盤の発売日が重なるなどもあったり、上手く1クール終わりから2クール目のリスタートが出来るような構成にもなったことで、評判がずっと右肩上がりのような状況になったことも大きかったのだろうと考えています。

  • 前半に突っ込みすぎなかった

 さきほどの項目と少し重なりますが、前半戦となる1クール目の序盤に突っ込みすぎなかったことも構成上、とても大きかったのではないかと観ています。通常、ガルパンまどマギがそうだったように、特にオリジナルアニメでは序盤にグッと惹きつける話数を挟み、そこのインパクトで一気に視聴者を引きずり込むような構成が求められますが、SHIROBAKOでは最初にピンチだった3話の泣き顔作画変更のところが前半のヤマにはなっていたものの、そこまで大きなヤマだったかと振り返るとそうでもないような気がします。
 そして何より感じるのが、1クール目にやればヤマとなったであろうゴスロリ様回をやらなかったことです。要は大きなインパクトを与えられるであろうゴスロリ様こと小笠原綸子さんの担当回を敢えて温存して1クールを終えて円盤を発売してしまったというところです。個人的には怖いというか、どうしてそんなことが出来ちゃったのだろう……とさえ思うくらいに不思議な戦略なのですが、前半にやっちゃうとそれだけ後半に回すネタが減ることも想定したのか、あるいはやらずとも話題性は得られると踏んだのか。1つの鍵となる1クール終わりでまさかのおじいちゃんアニメーターである杉江茂さんの担当回をやるんですから、ただの美少女アニメとは全く異なる観られ方をしたのではないかとも考えています。
 1クールアニメと2クールアニメではもちろん同じような構成では行けないという当たり前のことでもあるのですが、そこも円盤が発売日から1ヶ月以上経過してもまだまだ売れ続けるところへも繋がっているように見えて非常に興味深いです。

  • 16話に惜しげも無くつぎ込んだネタの数々

 かと思えば、突如としてゴスロリ様回に加えてエンゼル体操までぶっこんだ16話があったわけです。絵麻ちゃんが屋上で突如不思議な踊りをしているだけでも十分話題になるのに、ゴスロリ様が実際の野球選手そっくりのフォームで打ち返し、昔懐かしのアニメキャラの投球フォームでストラックアウトを披露するところもこの1話の中で描いてしまっているわけです。もちろんこの回は、井口さんが初のキャラデザで原作者にダメ出しを喰らい、編集者などとのあまり実のないやり取りから行き詰まる……ところからのキャラデ決定という本筋の話もしっかりやりながら、という回でもありましたから、本当に隙のない作りになってるよなと思いました。
 そしてこういう回をあまり前触れもなく、そして特別狙ったわけでもない話数に入れてくるあたりの緩急の付け方も、「面白いけど円盤を買うまででは……」という視聴者の背中を押すような構成になっている、ということなのかもしれません。しかも、2クール目に入ってもこんなにネタがぶっこめるのなら最後まで確実に面白い、と視聴者が確信できてどんどん円盤をポチっていくのだろうとも考えられます。

<関連記事>SHIROBAKO16話に観る、魔法を持つゴスロリ様の「神業」と、持たざる者の「エンゼル体操」

                        • -

 他にも、イベチケを付けていない(円盤の価値が、イベント優先申込券の期限切れなどで下がるということがない)とかもありますが、以上のような理由が大きいのではないかと思っています。
 水島監督といえばガルパンで最終回効果で更に売上を伸ばした例があるように、最終回にも定評がありますし、後半型の構成を好む監督でもあります。ので、もしかするとまだ1巻も2巻も積む可能性があると観ています。もちろんどうなるかはわかりませんけど、最終的には15000くらい行ってる可能性もあると考えています。

今月発売の3巻。えくそだすっ!1話OVA付き1巻。今からでもマラソンしましょう!