Charlotteの妹ちゃん(歩未)の扱いから観る、主人公視点オンリーの描き方と、そこから見えるもの(意図)

 『Charlotte』が7話まで終わりました。結局、主人公の妹である歩未は前回の6話ラストの爆発みたいなもので死んじゃってましたが、そこまででの話数であまり妹とのエピソードを描かなかったおかげで、視聴者的には唐突感のほうが大きかった、という方も多いのではないでしょうか?(僕もそんな感じです)。ただし、妹とのエピソードを描かなかったのも、麻枝准ならではの理由というか狙いからわかるからです。それはつまりどういう意味なのかを書いていきたいと思います。

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 Charlotteではある特徴的な描き方をされていると思います。それは、徹底的な主人公である乙坂有宇視点だということです。もちろん他のキャラクターの視点で描かれている部分はありますが、あくまでもそれは限定的かつモノローグは描いていなくて、モノローグを描いているのは基本的に主人公の有宇に限定されていると思います。
 それでどう特徴的かというと、主人公が見えているものしか描いていない、ということになるような気がします。そこで出てくるのが、タイトルにもある妹ちゃんこと乙坂歩未の描写についてです。

 あまりエピソードを描かなかったということは、主人公がそれだけ歩未のことを重視していなかったということですし印象も薄い。それゆえに妹とのエピソードに割く時間も大幅に減らしているということを意図的にやっているのではないか、と考えています。
 なので、歩未の作った「ひでん」のピザソースを使ったオムライスをどんどん忌避していくようになりますし、そこに対してのありがたみみたいなものも描かなくなっていきます。最後に作ってくれた「いいことあるよ」と書かれたオムライスには口さえつけないくらいには、歩未の作ってくれた温かい日常を当たり前のものみたいに思っていたという示唆でもあると思います。


これは友利奈緒作のオムライス。素っ気ねえ……。

 そして6話で中学での歩未の友人知人を初めて観たわけですが、彼女の友人関係を全く知らないくらいには関心が無かったことをも示していると思います(昨今の子どもの交友関係を全く知らない親みたいな感じですよね)。彼女が告白されてそれを拒否したことも知らないということは、よほど家で2人でいるときにも彼女の話を聴いて上げてないというか、聴いていてもほとんど気に留めていないから覚えていないということなのでしょう。だからこそ描いていないのだと思います。


こんなにこじれた関係になってることももちろん知らないわけで。。

 なので、十分に歩未を描けていない……のは確かなのですが、わざと描いていないというのも狙い通りなのだろうと思います。主人公にシスコン設定(アニメではそういう兄キャラが多いですけど)が無いとか、妹のほうにかつて大病を患ったけどそこから奇跡的に回復した、みたいなエピソードも恐らくは無いか忘れているとかなのでしょう。それもまた、主人公視点でかつ主人公が見えている世界のみ描いているからこその副産物なのだろうと観ています。

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 そこで気になるのが、メインヒロインの友利奈緒です。彼女の能力は対象の1人の視界から消える、というものではありますが、何となくですが興味や関心が無ければ視界から消えてしまうという『黒子のバスケ』の黒子のミスディレクションを思い出しませんか? そことは直接関係はないかもしれないのですが、個人的には彼女の能力云々とは別に、そんなミスディレクションに似たようなことをやっているのではないかとも考えてしまいます。何せ、主人公の有宇はまだそこまで奈緒に対して特別な関心や感情は持っていないようですし、7話の逃避行(?)の際にもほとんど思い浮かべてはいません。もちろん、妹である歩未を失ったショックでそれどころではない、というのは間違いないのですが、先程まで書いていたい通り、この作品では主人公視点かつ主人公の見えている世界のみを描いていることからもわかるように、逆に主人公にとっての関心の外のものがまるっきり見えなくなってしまっているという描写が徹底されていたようにも見えました。

 要はこの主人公って、ものすごく視野も世界も狭いんじゃないのでしょうか。5話くらいまでのあまり中身の無い感じの内容からしても、主人公に主体性が全くありませんでしたし、関心がそれぞれ薄いからあまり掘り下げることもない。なので関わっていてもどこか上辺だけの感じもしていましたが、それがそのままこの主人公の個性というか性格なのではないかと考えています。
 7話でようやく自分に向き合い、今の自分には何があるかと考え、再びというかようやっと歩き出した……と解釈するのが自然なのかなあと思っています。
 なのでこのCharlotteというアニメは、そうした主人公視点の主人公が見えている世界のみ描いているものとして観ると見やすいのではないかと考えています。

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 個人的に近いなあと感じているのが、同じP.A.WORKS作品では『Another』ではないかと思っています。あれは主人公が見えているものと見えていないものを使ってのトリックも仕掛けていますし、そこに面白さを見いだせる作りをしているからです。
【参考】SHIROBAKOの宮森あおいから観る、水島努監督作品の主人公視点と描き方の特徴(Anotherへの言及もあります)
 Charlotteは後半型という話がありますが、主人公の見えていないものを使って何かしらやってくれるような期待もあります。最後まで楽しみにしたいと思います。

主題歌。円盤。