「この世界の片隅に」好きにも観てもらいたい傑作アクション映画「忍びの国」--感想など

普段はアニメしか観ていないのですが、「シン・ゴジラ」以来の実写映画「忍びの国」を観てきました。戦国時代に、
伊賀国と織田軍が戦った戦国時代の史実を元にした作品という興味もありましたが、嵐の大野智が忍者役で主演するというのも興味深く、公開初週の土曜日に観に行きました。思いのほか面白かったです。大野智の、普段はぼーっとしているのにスイッチが入るとオーラ満載になる感じも味わえましたし、何よりあのキレッキレのアクションの数々。ジャニーズメンバーでも屈指のダンスパフォーマンスの彼ですが、殺陣などのアクションも素晴らしかったです。嵐の主題歌はあまり合いませんし、ジャニーズ映画という見た目で敬遠するのは勿体ないくらいには、素晴らしいエンターテイメント性のある映画でした。それとともに、戦国時代ファンにはヘタレでお馴染みでもあり、大河ドラマ等では端役でしか無かった、織田信長の次男である織田信雄に大きくフォーカスが当たった作品としても、歴史ものとして大きな意義があったと思いました。その辺は「のぼうの城」と同じ和田竜原作ということもあったのかもしれません。
ただ、普段アニメを観ている自分からすると、この「忍びの国」はめちゃくちゃアニメっぽかったというか、原作がラノベでもない小説であることに違和感を感じたくらいにマンガチックな作品だなあ……とまず思いました。そして登場人物がイコールキャラクターで、出演者はキャラクターを演じている感がすごかったです。その中でも、もちろん主人公の無門を演じる大野智は、そのまんまマンガやアニメのキャラクターで、非実在感はありながらも演じているのは生身の人間という面白さもありましたが、同じような感覚で観ていた映画が、最近あったなあとふと思い出しました。それが「この世界の片隅に」でした。
実写映画とアニメ、小説原作と漫画原作という違いはあるのですが、それ以上に「忍びの国」の大野智ありきな作りと、「この世界の片隅に」の'のん'ありきな作りが重なるものがありました。それ以外にも、史実を出来るだけ考証などで取り上げながら、主人公や周りの主要キャラは創作だったり、歴史に名を残すような存在では無かったりするあたりも共通項として挙げられるかと思います。
作品の方向性としては、「忍びの国」はかなりエンターテイメント性を意識した作りになっているのに対し、「この世界の片隅に」は文化・知識的なものが前面に出ているようにも見えますが、自分から観た感じはどちらも近いものがあると思います。大きく異なる点とすれば、「忍びの国」は主人公が男性でかつ武器を手に取って戦いますが、「この世界の片隅に」は主人公が女性でかつ直接戦うようなことはありません。ですが、どちらも「戦い(戦争)」が主題として取り上げられた作品ですし、その史実と時代背景を丹念に調べ上げ、庶民の生活を描写したという部分においては、骨格としてはほぼ同一といって過言ではないと思っています。現に、片やジャニーズ映画、片やアニメ映画でありながら、客層には年配の方も多く見かけたことがその証左になるのかな、と思いました。
この世界の片隅に」は、割とアニメオタク界隈でも評判となり、ロングランでのヒットにも繋がりましたが、「忍びの国」はそうした層への波及効果は、実写映画でもあり、やや弱いと感じています。ですが、前述の通り、きわめてアニメっぽい映画でもあり、また演出も安っぽいエフェクトが目立たず、むしろ邦画でここまでやれるのかと感心してしまうくらいには見ごたえがありました。共演陣も、石原さとみは可愛かったですし、鈴木亮平伊勢谷友介といったゴツい役者と大野智の戦闘は良かったですしね。織田信雄を演じるHeySayJUMPの知念侑李の、いかにもおぼっちゃん的な頼り無さと、それを精一杯演じるあたりもポイントでした。また、歴史ものでありがちな、その時代の有名なヒーロー(信長とか)が出てくるわけではなく、あくまでも主人公の無門が観ている伊賀と伊勢の国の話に終始しているあたりは、大河ドラマ真田丸」の描写に通じるものもあると思います。
上映してる映画館も少なくなってるかと思いますが、観て損はしない映画だと思いますので、興味のある方はぜひ劇場へお急ぎください。公開が終わってからこの記事を読んだ方は、BD/DVDを買うか、レンタルや配信で観てください。

忍びの国 オリジナル脚本

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忍びの国 (新潮文庫)

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