キミキス〜アマガミが支える最後の「ギャルゲー」

 アマガミがマスターアップしたそうで。キミキスは結構ハマった身としては買おうと思ってるんですが、まだ予約してません。キミキスほどキャラに魅力を感じないのですが…ただこのスタッフが作るんだから間違いないんでしょうけどもね。キミキスでのユーザーからの不満点だった、ストーリーとかを強化しているみたいなんで楽しめるとは思うんですが…。
 ただ思うことがあります。それは、コンシューマオリジナルでのギャルゲーを出しているメーカー・チームって実はこのエンターブレインスタッフしか出してないのでは?と思うくらいにコンシューマにおけるギャルゲーは衰退しきってしまいました。もちろん、エロゲーがコンシューマへ移植されるのはそれなりにありますから、コンシューマにおけるギャルゲーはそこそこの数があるのですが。
 以前であれば、ときめきメモリアルサクラ大戦という、コンシューマにおけるギャルゲーの二本柱がありました。共に売り上げの最高が50万本を越える大ヒットとなりました。サクラ大戦は、1〜5で、35万→50万→30万→25万→14万本と、2を頂点に徐々に落ちていきましたが、それでも1と2がセガサターン(=SS)、3と4がドリームキャスト(DC)、5はPS2とハードを変遷しているにも関わらずの売り上げですから、いかにコンシューマにおけるギャルゲー人口が多かったかを示していると思います。ときメモに至っては、PS版が54万本、後発のSS版でも37本も売り上げたという凄まじさでした(ちなみにときメモは、PC-エンジン CDロムロム版がオリジナルでした。それはあんまり売れてなかったり)。
http://d.hatena.ne.jp/Nota/20080714/1216038606
 この記事を参考に見てもらえればわかるんですが、ほとんどのギャルゲーが00年以前あるいは01年くらいの発売で、21世紀になってからランクインしたギャルゲーでコンシューマオリジナルだったのは、トゥハート2(11万本)と、キミキス(6万本)、シスプリ2(5万本)、キミキス廉価版(5万本)くらいで、他はパソゲーの移植作とかがほとんどです。エロゲからの移植作でも、Fate(18万本)を最高に、うたわれるもの(10万本)、DC2PS(5万本)、DCPS(4万本)、Kanon(DC版5万本、PS2版4万本)、AIR(DC版6万本)くらい。4万本以上のゲームしか抜粋されてませんのでアレですが、こうやって抜き出せるくらいに、21世紀におけるコンシューマでのギャルゲーは売れ線から一気に遠のいてしまいました。
 でも逆に考えると、1995年のときメモ発売から2000年くらいが、コンシューマにおけるギャルゲーのピークだったのかな?とも思います。現に2000年以前の10万本以上売り上げたギャルゲーの中に、エルフのSS移植作が複数入ってます。野々村病院の人々は32万本という脅威の売り上げを記録しており(僕も持ってましたしクリアしましたw)、その売り上げ数のギャップの大きさに驚きすら感じます。
 じゃあ2000年前後を境に何が起こったのでしょう? 個人的には、Windowsパソコンの普及なのかな?と思ってます。1998年にはWindows98が、2000年にはMeと2000が発売されています。僕がPCを手に入れたのは1999年で98でした。あの時期に爆発的に普及したPCによって、ToHeartなどの葉っぱや、Kanonなどの鍵がブレイクしていきました。もちろんPSで出したトゥハートも10万本売り上げていたんですが、この時期にコンシューマからPCへと流れた人が多かったのかな?と思いました。というのも、僕がそうだったからなんですが(汗。
 コンシューマのギャルゲーが流行ったのは、ひとつに「PCを持ってない人が(エロはないけど)良作だから」という理由で買っていたということでした。それはSSにおけるエルフ作品などエロゲ移植作の凄まじい売れ行きに表れてます。それにつられて、オリジナルタイトルも売れたということなんでしょうか? 流行ったという実感は無いですが、あの水樹奈々のデビュー作というNOeL(17万本)やトゥルーラブストーリーシリーズ(キミキスのスタッフです)などがよく売れていたようですが、そもそもコンシューマオリジナルで大ヒットしたギャルゲーというのは、前述のシリーズもの以外にはほとんどありませんから、良作がコンスタントに供給されてなかったか、コアなファンにしかウケないタイトルが多かったか、ブームが長続きしなかったのか…。
 ファミ通などの売り上げランキングにはほとんど登場しませんでしたが、僕がターニングポイントになったと思ってる「久遠の絆」などは、オリジナルで7万本、その後パワーアップ移植もされていることから10万本以上売り上げているタイトル(メーカーの社長が言っていたので間違いないと思われ)なんですが、そういう一部のファンにウケたり、ギャルゲ軽視だった頃のファミ通には見向きもされなかったようなタイトルが、ランキングに入れられることなく消えていったような例もあるのかもしれませんけれど。KIDの作品も支持率は高かったですけどね。ただ売り上げという目に見える形で登場するほどでは無かったのかもしれません。
 現在では、例えばKeyのCLANNADなんかでもコンシューマ移植版はせいぜい3,4万本という程度で、そこから考えるとリーフの強さは異常なんですが。
 しかし、そんな中で頑張っているのがトゥルーラブストーリーキミキスアマガミのスタッフです。何処まで同じなのかはわかりませんが、いずれも高い支持を得ています。こんな、コンシューマオリジナルのギャルゲーが売れない時代でも5万本前後をコンスタントに売り上げるんですからね。しかも作品の世界としてはつながりを持たせない作りでもありましたし(トゥルーラブキミキスでは)。純粋な続編ものとしての勝負でもありませんしね。ですので、キミキスの廉価版と合わせての10万オーバーと同人人気の上昇ぶりは、根強いファン層というよりは、キミキスから入ったという新たなファン層に支えられての同人人気だったようにも思います。
 もちろん、ファミ通を出しているエンターブレインから出ているゲームですから、売り上げ数の水増しはあるでしょう。でも、他にここまで話題性のあるコンシューマオリジナルのギャルゲーを出し続けているメーカーは無いんです。
 もし、このスタッフがチームがこのようなゲーム制作を辞めてしまえば、コンシューマ発の「ギャルゲー」は消滅してしまいます。エロゲもそれほどブレイクしない世ですから、「アマガミ」の売り上げ数は、ギャルゲーやエロゲーを支持している層の大小を端的に表してくれることでしょう。逆に、アマガミが5万本も売れないようでは、もはやコンシューマにおけるギャルゲユーザーは壊滅状態にあるといって良いでしょう。
 もはや、コンシューマでのギャルゲーユーザーを支えているのは「アマガミ」だけと断言できてしまうと思います。むしろ、このジャンルにどのくらいの人が残っているのかを測る指標になるのかもしれませんが。…なんだが、時代の激流を感じてしまいます。

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注:ギャルゲーの中に、敢えて原作アリのキャラゲーは入れていません。あと、紹介したリンク先のランキングに入っていないようなゲームも除外しています。あしからず。


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(26日 追記)
 色々とご意見を頂いたので紹介します。

>正直その意見には反論したいですね。旧KID系列のCSでシナリオメインの作品が好きな身としては。このキミキス系列のギャルゲーはいちゃラブがメインな作品であって、あくまでギャルゲーの1つの流れであり、ギャルゲーすべてをくくるような存在ではないと思うんです。それに新作といってもキミキス自体TLSの続編と考えている人もいて完全新作には遠いですし。漫画でハーレムやらパロディやらが流行りだしたのにあわせて、ギャルゲーはやりこんでわかるシナリオよりも大手販売メーカーや原画や中の人やエロシチュを目当てに買うようになった気がします。次世代機の問題もあるし、せめてH無しのPC版の浸透で、KIDの夏夢夜話やMyMerryMayやEver17であったような、見えないからこそ際立つシナリオの残酷さや艶かしさをもう一度!と願っているんですけどね。Key・・・大手でもエロ無しはきついのかな

 もちろん、(やってないけど)KIDのCSオリジナルのゲームには根強い支持がありました。が、売り上げは先細りしてメーカーは倒産してしまったわけで。今無いものが「支える」状態ではありませんよね。その流れを汲んでいるメーカーがあれば別ですが…あるんでしょうか? それに、キミキス系列がTLSシリーズの続編みたいなものだと言っても、エロゲメーカーのブランドではよくあることです。それでも、キャラや世界が別であれば完全新作だと思います。商売にならないから消えていったのでは無いでしょうか? ま、CSにおけるギャルゲー市場は、コナミが拡大させて勝手に潰した感もありますけども…。
 唯一この流れを汲んでいるとしたら、工画堂スタジオですかね? シンフォニック=レインのチームが5月か6月に新作を出すそうです。これこそCS向きだろう!と思うのですが、少ないながら根強いPC全年齢向けユーザー向けのほうが確実なのかもしれません。Keyも全年齢でCLANNADリトルバスターズ!は10万本前後を売り上げてますが、頭打ちなんですよね。好んでH無しのギャルゲーを買おうという人が減ってきているんだと思います。
 エロはどっちでも良いけど、あるほうがお得なんだそうです。僕にはその感覚がよくわかりませんけどね。

キミキスねぇ。人気はあるらしいんですが、作風がイマイチ好きになれませんでした。個人的に、ギャルゲーの進化先の一つの形としてアイマスがあったんじゃないかな、と思います。パラメータだけでなく、アクションが出来るギャルゲーが求められているのかもしれません

 まあ好みは分かれると思います。でも独特の作風が現在でも生き残っている一つの要因になっているんじゃないかとも思いますが。
 アイマスですか。このエントリに入れなかったのは、コンシューマでも元はゲーセンの筐体だからなんですよね。でも、ギャルゲーの一つの進化系であることには間違い無いと思います。いわゆる「育成系」ですよね。やったことは無いのですが、X360にPSP…。メインハードを決めきれないところに、今のコンシューマにおけるギャルゲー層の住処の不在が浮き彫りになっているような気がします。