Angel Beats! 考察〜第一話から見える、紛れも無い麻枝准の世界

 ちょっと否定的な意見を前回は描いてみたわけですが、麻枝信者だなあと自覚せざるを得ない部分もたくさんあって、第1話はニヨニヨしてるだけで終わってしまった感があります。
 天使と戦っている理由がわからなかったり、その生きてるでも死んでるでも無い世界に入り込んだ意味は何?とか、やってることが派手すぎるのに結果は凄く小さいことだったりするあたりとかは、ファンであっても「?」ではあるんですが、過去のKey作品、とりわけ麻枝作品を知っていれば「麻枝色全開だなw」となったんじゃないかと思います。

■世界観
 まずは世界観ですが、これは麻枝さんが一番得意としているものですよね。Key作品が唯一性を保ってられるのは、恐らくは世界観設定が独特かつ面白いからでしょう。むしろここが無ければKey作品と言えども、他所のメーカーと比較して秀でているとは言えないかもしれません。
 Angel Beats!でもそれは生かされていましたよね。死後の世界、PCとNPCというあたりは、これまでの麻枝作品とは切っても切り離せない要素だったかと思います。
 僕が真っ先に思いついたのが、リトルバスターズ!ではなくCLANNADでした。幻想世界ですね。というのも、AB!の世界がどういう風に設定されているのかが詳しくはわからないのですが、PC(プレイヤーキャラクター)とNPC(ノンプレイヤーキャラクター)というのは、CLANNADの幻想世界で言えば、PCが少女と朋也(ガラクタ人形)で、その他の存在(ケモノなど)がNPCという感じですね。リトルバスターズ!ではもっと踏み込んだ設定になっていますが、その設定は既にCLANNADでも根づいていたものだったかと思います。幻想世界のみならず、その世界からの離脱、という表現もリトバスが最初ではなく、CLANNADで既にあったことだったりします。CLANNAD AFTER STORYの終盤に、朋也と汐からどんどん人間関係が希薄になっていく場面があり、最終的には近しいキャラたちも全ていなくなっていくのがありますが、これはAB!でゆりが言っていた「消される(消える)」のと似ているのでは無いかと思うわけです。まあCLANNADでは、消しているのは朋也自身でもあり汐でもあるわけですが。
 CLANNADの幻想世界やリトバスの仮想世界は「死後の世界」とは異なりますが、リアルな現実、とはまた違ったところに世界があるということ、そしてその世界を構成しているPCが限定されていると言うこと、世界に欠陥がある(現実世界ではあり得ない現象が起こる)ことなどが共通点として挙げられると思います。リトバスの仮想世界では死なないとか、CLANNADの幻想世界では風景が変わらなかったりだとかありましたよね。AB!における、殺そうとしても死なない設定も「非現実世界」であるからこそ生きているんだと思います。そこから考えると、AB!の世界の終わり方も類推できるのかもしれませんね。

■ストーリーや作品の方向性
 ストーリーや作品の方向性も、まさに麻枝准だというものでしたね。天使はとりあえずの敵ではありますが、明確な敵という存在がいないのは、従来の作品と全く同じ傾向です。MOON.やONEには、主人公を引きずり込もうという存在はいましたが、過去の自分のトラウマだったり、大切な人だったりと敵では無かったと思います。AIRのSUMMER編は追われてましたが、あれは麻枝シナリオでは無いという話なので除外してみると……やはりいないんですよね。リトバスでも、沙耶シナリオで時風瞬と戦ってはいますが、ぶっちゃけて言えば中の人は……なわけですし、本気で沙耶と敵対していたわけではありませんし。作品世界における「神」と対峙しているのと同じなわけですから、AB!との共通点も見いだせるかと思います。
 結局は「生と死」に対峙していることがほとんどなんじゃないかと思うんですよね。ONEにしてもKanonにしても、その世界での存在意義を問うているという意味では、AIRCLANNADリトバスやAB!へと脈々と受け継がれていて、似ていると言うよりはて、テーマが不変だとも取れると思います。逆に言えば、そこからずっと離れられていないとも言えますが……。
 そこから類推すると、ある程度の展開と結末が見えてくるわけですけどね(汗。

■キャラクター
 キャラクターですが……これについてはまだ現段階ではわからないと言えると思います。ゆりは沙耶とどうしても共通点を見出そうとしてしまうわけですが、単独行動をしていた沙耶と、リーダーであるゆりとはなかなか比較になりません。運命と戦う×リーダーということで、沙耶+恭介という位置づけとも言えるかもしれませんが、1話を見ただけでそれを言い切るだけの材料には乏しいかと思います。
 その他では、主人公の立ち位置が麻枝作品らしいかなと思いました。リトバスの理樹というよりは、それ以前の作品の主人公達とほぼ同じような立ち位置でしたね。その世界に対して斜に構えていて世界を潔く受け入れていないあたりは、CLANNADの朋也と全く同じですよね。
 記憶喪失ネタもやはり出てきましたね(汗。自分の名前すらうろ覚えという表現が出てきましたが、これはまさかKanonの真琴ネタですか?! 記憶喪失自体は、ほぼ全ての作品で出てきますから「またやったか(笑)」という感じですが……。麻枝作品における記憶喪失ネタは、単なるスパイス的に位置づけられているものと、物語の核心に触れるようなものと両方ありますが。、AB!ではどちらかはわかりませんね。ただ、主人公である音無がこの世界へと入り込んだことに起因していることは明らかなので、物語の核心に触れる方の記憶喪失なのかもしれません。リトバスのように事故の記憶なのか、ONEのように過去のトラウマなのか……。恐らくは前者でしょうが、名前すら主人公が忘れてるあたりに、何かヒントが隠されているように思います。天使は、今までの麻枝作品には出てこなかった系のキャラなので、楽しみだったりしますけどね。


 とまあ、このように、AB!は今までの麻枝作品を集約したような内容になっているのは間違いないと思います。悪く言ってしまえば「新鮮味がない」ってことにはなりますけども、集大成的な作品だと考えると、それらを合わせた結果、どんな化学反応が起きるのかが楽しみでもあります。今のところ悪い話しか聴きませんが、色々な見方をして楽しみたいですね。


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