プロトタイプはどこまで本気なのか？

　智代アフターのことを少し書いたのでついでに。
　ビジュアルアーツ（VA)の、全年齢化プロジェクト（勝手に命名）第2弾とも言えるこの試みですが、そもそも『キネティックノベル』があまり上手くいかなかったから、との側面も見えてきます。
　キネティックノベルは、VAの中でもシナリオ力に定評のあったKeyに新作を作らせることで、大々的にスタートさせたわけですが、「ネット環境の無い人間は無視か」「クレジットカードの無い人間は無視か」などの批判や、認証キーの不具合、そしてサービス開始当初のシステム障害など、スタート時にかなりミソをつけてしまった感がありました。それが「planetarian〜ちいさなほしのゆめ〜」でしたが、同人、SS的に盛り上がることも無く、シナリオの面白さはともかくとして、「成功」とはいえないものでした。その後このplanetarianはパッケージ化され、『キネティックノベル』の目指した「ダウンロード専売」や、「CD-Rなどへのコピー撲滅」への試みは崩壊に至りました。※ちなみに、planetarian以外のキネティック作品で、ヒットした・面白かった作品はあったんでしょうか？　知っている人がいたらお教えください(謝)
　そこで登場したのが、プロトタイプです。VA作品から、全年齢向け（に出来る）作品を、コンシューマ向けにリリースすることを目的としたブランドです。Leafのアクアプラスみたいなものでしょう。現在、Keyのplanetarian（PS2）、智代アフター（PS2)、Kanon（PSP）、Air（PSP)のほかに、スタジオメビウス（今どうなってるんだろう…）のSNOW（PSP）が予定されています。
　そこで思うのが、プロトタイプの本気度です。例えば「智代アフター」。追加要素がある、と言う情報がありましたが、もちろんHシーンに代わる何かがある、のは間違いありません。しかしながら、シナリオに追加があるのかどうかなど、詳しいことは何もわかっていません。また、PSP版のKanonやAirは全貌すら未定です。
　planetarianは、PCでのパッケージ版と内容はほとんど変わっていないそうです。ダウンロード版から、シナリオの見直しやフルボイス化などが図られたそうですが、大幅な追加要素があったと言う話は聞いていません。ので、智代アフターもそうなるのか？　ならいらないや…と思っています。そこで、VAのプロトタイプに対する本気度がどのくらいか？が出てくるわけです。
　Keyと言うブランドは、元々、1度完成した作品には変更を加えない、と言うポリシーがあります。今までの作品もすべて、シナリオにはほとんど手を加えていません。Hシーンを抜いて若干シナリオのつながりが悪くなろうが、お構いなしなところがあります。それでも、KanonやAirは、コンシューマ化の際にHシーンを抜いてCGを追加したりしており、「なら買おうか」という気持ちにはなりました。が、CLANNADに至っては、元々が全年齢版だったこともあり、一部の過激な？表現を削除した以外は、フルボイス化しただけと言う、ある意味「手抜き」の移植になってしまいました。購買意欲は湧きません罠。かなり評判も悪かったと思います。
　そこで、プロトタイプです。今までKey作品はインターチャネルが移植を手がけていたわけですが、自社でやることにより、移植の際にオリジナルスタッフに注文もつけられると思うのです。planetarianの時は、原作の涼元悠一氏に小説を書き下ろさせたくらいですし（プロトタイプ名義ではありませんが）、馬場社長の権限は侮れないところがあります。
　が、keyには新作「リトルバスターズ」開発で、あまり余力が無いのでは？と言う懸念があります。何せ開発は順調で（ただし発売日発表は無い）、他の事に構ってられる余裕もないと思うからです。智代アフターのために、CGは原画が別の人なので描き下ろせる可能性はあるのですが、シナリオはリトルバスターズ！と被っているので苦しいでしょう。シナリオの追加があれば、マズ間違いなく買いますが、無ければ買う価値は無いと思っているので、その辺がどうなるかが、プロトタイプの浮沈にも関わってくると思ってます。
　また、PSP版のKanonやAirも謎です。今さら追加要素ってのは考えづらいので、PS2版などのベタ移植しか無いでしょう。CG追加とか言ったら、かなり違和感のある絵が入るわけですしね…。サイドストーリーとかって感じで、全く別に追加するってのならアリでしょうが、そんな余裕はKeyには無いでしょうし…。ベタ移植なら買う人はあまりいないでしょうしねえ。
　ので、プロトタイプの戦略はイマイチ見えません。馬場社長の強権で追加要素をゴリ押ししなければ、鍵っ子たちへの訴求力も無いでしょうからね。鍵っ子自体も相当減ってますし…。
　個人的には、あまりKeyスタッフに仕事を増やしてもらいたくないです。リトルバスターズ!完成へ向けて、それだけに没頭させて欲しいからです。