NHK紅白歌合戦は、嵐・水樹奈々出演で大晦日を制する?

 紅白歌合戦の出場歌手が発表されましたね。ジャニーズは初登場の嵐を含めて4組が出場という大攻勢に。初登場なのが意外なレミオロメンに、ヘキサゴンのお遊び企画から抜け出した感のある遊助、そしてオタク界代表の水樹奈々を取り揃え、例年以上に何でもアリな印象を受けます。
 特に目を引いたのが、ジャニーズ4組ということと水樹奈々の存在でしょうか。両者とも、これまではもしかすると紅白を見なかった層に食い込める可能性を秘めており、NHKの戦略性が見えてきます。今のジャニーズファンにSMAPTOKIOをどうしても見たい!と言う層は多くなくて、むしろ嵐やジャニーズJr.のファンは、出演してる番組は全部チェックしてる、という熱心な層の支持を受けていると思うので、出演することでの数字的な押し上げは相当期待できると思います。特に嵐は今が絶頂期ですし、今までジャニーズ2枠の暗黙の了解が邪魔して出られなかっただけなので、ここで出られなければ不味いわけですし、かと言ってSMAPTOKIOを外すのも、グループの人気はそれほど落ちていないので大義名分に欠けるわけで。ただ、NYC boysはあまりに性急じゃないかと思いますけども。嵐が出るまで10年かかったのが1年で出たわけですから。
 水樹奈々の場合も似てますよね。Perfume中川翔子も「アキバ系」と言われましたし、「AKB48」なんかも同じグループに入られていたっぽいのですが、正直どれも、二次元好きからすれば「同じグループに入れないでくれ!」って言いたくなるような歌手でした。その点水樹奈々であれば、現役で声優もやりつつ歌手稼業が大成功していますし、二次元住人のいる深夜アニメの主題歌も歌ってますから「こっち側の人間」なんですよね。おまけに10年声優として、歌手としても長いキャリアを持っているわけですから。アルバムの売り上げを見ても、紅白に出場するに足りる実績もあると思います。林原めぐみ椎名へきるTWO-MIX高山みなみがボーカルのユニット)らが為しえなかった「現役声優の紅白出場」というお祭り的なものもあって、生で見ようと言う二次元住人や声優ファンは多いと考えられます。
 ただ水樹奈々での問題は、一般的な知名度があまりにも低いと言うことなんですよ。歌はほとんどが深夜アニメの主題歌とかですし、声優としても代表的な出演アニメは何?と言われても、深夜アニメやあまりアニメを見ない層が見る時間帯+放送局がやるアニメには出演していないから、例えばNARUTOとかテイルズとか言っても誰も反応できないんですよね。だから、例えアルバムがオリコン1位を取るくらいになっても、オタク層からの支持率が高まったことが売り上げ増に繋がった可能性が高く、一般的な知名度アップとは繋がっていない可能性が高いんですよね。まあそれはともかくとして……。
 ずっと見続ける視聴者を確保できるかどうか?はわかりませんが、嵐にJr.、水樹奈々を出すのは相当に押し上げ効果があると思います。レミオロメンも効果は高そうですしね。で、これだけ広範な層に手を出したNHKの意図するところは何でしょうか?個人的には、「他局を積極的に見ようと思わない層の取り込み」なんじゃないかと思ってます。
 NHK紅白の相手としては、まずはTBSの格闘技、そして日テレのガキ使い特番でしょう。その他は数字的に奪っても仕方のないようなシェアしか無いのですが、そこにも食い込もうという意図も見えます。
 そもそも、格闘技がブームになった当時も、本気で格闘技が好きで見ていた層ってのはそう多くないと思うのです。殴り合い、流血が好きではない女性なんてかなり多いでしょう。そもそも、お年寄りとか家族ぐるみでテレビを見るときに、家族全員で楽しめるのが格闘技…とはとても思えませんしね。
 ダウンタウン「ガキ使い」も、全員で見るコンテンツかと言えば…そうではないように思います。ダウンタウン的なお笑いの手法は、40歳代以下には凄く受け入れられていると感じるのですが、中には毛嫌いする人、そして全く受け入れられない人も多く存在します。
 かといって、別に格闘技もダウンタウンも悪いわけではありません。ただ、何となくテレビをつけている層にとっては、「面白い部分もあるけど嫌悪感も感じる」よりは「集中して見ないけど嫌悪感も感じない、当たり障りのない」番組のほうを選択するんじゃないか…。それに加えて、嵐を、水樹奈々を積極的に見たいと思うコアなファンのうち、今まで紅白を見てなかった人たちが加われば…、昨年より下がるってことは考えにくいでしょう。テレ朝やフジが強力なコンテンツを打ち出せば話は別ですが…。フジが出せるとしたらヘキサゴンかレッドカーペット・レッドシアターくらい? 元旦以降のコンテンツも温存しなければならないでしょうから、おいそれと大晦日にぶつけるわけにもいかないでしょう。テレ朝は、黄金伝説が一番のコンテンツでしょうけど、大晦日だからと言うほどの企画は残っていないでしょう。
 となれば、消去法的に紅白を見る視聴者が増えないでしょうか? 元々、「大晦日=紅白」という固定層を除けば、あとは「何でも良いけどとりあえず紅白」だった層が流出して視聴率が下がっているわけで、そこが紅白に戻ってくれば回復するわけですし、一般の音楽に興味など無かった、ジャニーズファンとオタク層も加われば、下がるとは思わないでしょう。アンチが居るのも確かですが、それによって大きく数字が下がるってことも無いでしょう。そういう層は、そもそも紅白を見るということはしてないでしょうからね。
 
 大晦日の番組と言えば、一番民放が強かった時代は、TBSがK-1系の「Dynamite!!」を、フジが「PRIDE男祭り」をそれぞれ放送しており、共に視聴率が20%前後を獲得する時期もありました。が、PRIDEを潰してしまって以降のフジの大晦日は散々。通期ではバラエティの視聴率では追随を許さない状態が続いているのに、大晦日だけは全く数字が確保できません。とはいえ、フジで視聴率が取れると言えば、若手芸人を集めたりするような軽薄な番組が多いわけで、ここぞという特番を作れるほどの力は無いのかもしれません。

 K-1やPRIDEが全盛だった頃、紅白の視聴率は相当に落ち込みました。それまでは、娯楽は多様化しながらも、民放の大晦日コンテンツのしょぼさと、どうせ紅白の裏番組なんだから金をかけないでおこう、という意図が見えていたような「見る気にならない番組」ばかりでした。が、格闘技が紅白の牙城に食い込んで以降、民放各局が紅白の牙城の切り崩しを試みるようになってきたようです。ですが、結局その切り崩しに成功したのは日テレの「ガキ使い」くらいのもので、他は定番と言えるほどのコンテンツが作れず、また、PRIDE崩壊後の格闘技界が自滅したような形になってしまったため、アンチ紅白を取り込める対極的な番組も育たないままでした。それが結局、紅白の復権に繋がってくるんじゃないかとも考えています。
 
 紅白における演歌カテゴリの冷遇っぷりもどうだという声もありそうですが、テレビ東京で「年忘れにっぽんの歌」をやっているので、そちらで補完できているとも取れます。ので、紅白が演歌枠に固執する必要性もあまりないんですよね。むしろ、二世代・三世代で見られるのであれば。むしろ再結成のアリスくらいが出たほうが需要はあるのかもしれません。

 まあ、大晦日に家族揃ってテレビを見るかどうかという問題や、そもそもテレビを見てるかどうかという問題、テレビを見ていてもCSとかBSデジタルを見るコアな層とかの問題もありますが、個人的には今年の紅白、視聴率は前回よりも上がる、と見ていますがどうでしょう? 見ませんけども(ぇー。


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