冬コミ新刊「春原陽平の華麗なる一日」サンプル版公開
どうぞ。
『春原陽平の華麗なる一日』
作:りきお
今日も、つまらない一日が始まる。
たまにはと思い、2時間目くらいから出てみたが、とにかくヒマだ。
「お、おはよ〜。岡崎」
と思ったら、さらにたまたま来た奴がいた。
「どうしたの、こんな時間に。珍しいじゃん」
「おまえに言われたくないが」
「まぁねぇ」
見るからに、年中ヒマそうだ。
俺も他人のことは言えないのだが。
コイツを見ていて、ふと、暇つぶしくらいにはなりそうなことを思いついた。
今日一日くらいは持ちそうなことを。
「なあ春原、賭けをしないか?」
「賭け? どうしたの岡崎」
賭けをするなら、当然俺が100%に近い確率で勝てる賭けをしなければならない。
まあ100とは行かなくても、おそらく8割は勝てる賭けを。
「賭けで負けたら、勝ったほうの言った事を一日守らなければならないって賭けだ」
「ふ〜ん。面白そうじゃん」
コイツを乗せるのは簡単だ。
何せヒマだから。
「それって、僕が勝ったら、岡崎に何か命令できるってこと?」
「ん? まあそういうことだ」
「うほっ。それいいねえっ」
勝った気でいるみたいだが、あいにくコイツが勝てる勝負はしない。
と言うか、コイツが俺に勝った事なんてあっただろうか?
記憶に無い。コイツに俺が負けることなど。
「で、何で勝負するの?」
「ああ…それだが」
しかし、思いつきで言った俺にも、いい案があるわけじゃなかった。
何かいい案が…と考えてると、どこからか声が聴こえた。
「椋、今日もお弁当忘れたでしょ?」
「ごめん…って、お姉ちゃんが寝坊して、お弁当が間に合わなかったんだよ」
「き、来たっ、藤林杏っ!!」
藤林杏。
俺たちにとっての腐れ縁。
俺たちと意外に似てるところもあるんだよな…と、ぼーっとその姿を見ていて、俺はいい案を思いついた。
「春原。杏だ」
「え? 杏がどうかした?」
「杏の…下着の柄を予想するんだ」
「下着の柄?」
「ああ。アイツの下着の柄が何かで、俺とお前が賭けをする…」
「それ…いいねえ。何だか興奮してきちゃうよっっ!!」
本当に乗せられやすい…というか、単にアホなだけなのか。
「よしっ。じゃあお前に選ばせてやる」
「ほんとっ?!」
「ああ。お前がまず柄を予想する」
「うんうん」
「それが当たりだったらお前の勝ち。俺は自動的に負けでいい。
ハズレだったら俺の勝ち…でどうだ?!」
「おっ。いいの? 岡崎。そんな僕に有利な賭けで」
やはりアホだろう。
杏の下着の柄なんて、一発で当てられたらただの盗撮魔兼ストーカーだろう。
あいにくこの男は、そこまで杏に詳しくない。
まぐれ当たり…なんて可能性もゼロでは無いが、この男が下着の柄に詳しいとは思えないし…。
どう転んでも、俺が不利な賭けじゃない。
「じゃあ…やるか」
「おーけーおーけー」
「…で、お前の予想は?」
「ふふん。水玉一択に決まってるでしょ」
えらく自信があるのにビックリするが、根拠があるとは思えない。
「杏は水玉パンティを履いてると思うんだ。
と言うか、あの杏が水玉だよっ?! やべっ。興奮してきたよっ」
「はいはい。勝手にやってろ」
そういうと、春原は杏に近づいていった。
「杏。ちょっと話があるんだ」
「何よ。あたしは忙しいんだから」
「なぁに。時間は取らせないよ。ほんの10秒くらいだから」
「ふぅん。…で、何?」
まだ平静を装ってしゃべっている。
どうやって下着を確認しようと言うのか…。
「はぁはぁ…。…たまみず…ま…」
「ちょっと…キモいんだけど」
刹那。
今までに見たことがないくらいの素早い動き。
春原は、杏のスカートの裾を掴むと、思いっきり…めくった!!
「水玉水玉ぁーーーーーーーーーーっっっ!!!」
ばっ。
「なっっ」
呆気に取られる杏。
「水玉ーーーーっ…って、えっ?!」
そうして浮かび上がってきた柄は…水玉ではなかった。
…ストライプか。
「お…岡崎。ど、どうして水玉じゃないのかな?」
「知るかよ。お前の、根拠もわからない予想なんて」
「負けた…。負けたのか? 僕は…」
なぜそこまで自信があったのかは知ったこっちゃなかったが、勝ちは勝ちだ。
「…で、陽平? これはどういうことかしら?」
「へっ?」
「へっ?!じゃないわよね…。よりによって朋也の目の前で」
「あの…いやその」
「ねえ? …死んでみるなんて生ぬるいわよね?
この世の恐ろしいこと、全部してから死んでみる?
この世に未練が残らないくらいの生き地獄、味わってから死ぬ?
ううん…是非味わってっ!!!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
終わりです。
続きは、冬コミでウチの本を買ってくださいなw
東3ホール イ-26b『ふく彦』でお待ちしてます。