リトルバスターズ!古式みゆきSSS「嫉妬」

 昨日、チャットでそういう企画があったので書いてみました。古式みゆき嬢によるバレンタインSSです。短い上に内容もあまりありませんが、もったいないのでここで公開します。
 感想とかあったらコメントくださいな。


「古式さんが嫉妬するSS」


「これを…宮沢さんに渡せば…」

 昨日の夜遅くまでかかって出来たものがここにある。
 …チョコレート。
 
 柄にも無い、何てきっと私を知った人から笑われるに違いない。
 チョコレートどころか、洋風なものなんて一度も作ったことが無ければ、
誰かに手作りのものを作るなんて事も無かった。

 それがどうしてか、夜中悪戦苦闘しながらどうにか作っていた。
 ようやく、他人に見せられるレベルのものになったか、と言う感じで。

 意中の人がいるから。
 その人は…宮沢さん。
 私の悩み相談を、親身になって受けてくれた人。
 元々、弓道部と剣道部は近くで練習していたから、その姿を見たり、
多少は声をかけてもらったりはしていたけど、目の怪我をして以降は本当に良くしてくれた。

 だから、感謝の気持ちを込めて…いたら、チョコレートなんてものを作ってしまっていたのだ。
 他の女子生徒が作るのを見ていたら、居ても立ってもいられなくなって。

 まあ、格好はいいし、女子生徒からの人気も高いから、私のなんて受け取ってもらえないかもしれない。
 けれど、それでも作りたかった。
 私の気持ちを受け取ってもらいたくて。

「ありがとう、古式」

 そんな声を返してもらえることを想像して…なぜか顔が熱くなったりしたけれど…。




 そして学校にいる。もう放課後になる。
 私は宮沢さんの教室へ向かうことにした。
 朝イチでも、と思ったのだけれど、早くに渡しすぎると迷惑かもしれなかったし、
結局この時間まで動けなかった。

 宮沢さんの教室の扉を開け…ようとしたら、教室の中が何だか騒がしかった。
 開けるのを止め、中の様子を聴くことにした。



「宮沢様っ、受け取ってくださいっっ」
「ダメだ。受け取れないっ」

 どうやら、宮沢さんが誰かからチョコレートを渡されていて、それを拒んでいるみたい。
 やっぱり…簡単には受け取ってもらえないらしい。

「宮沢様、どうして受け取ってくださらないんですか?! …が夜通しかかって作られたものなのに」

 …っ!?
 さっきとは違う声。
 複数いる?

「宮沢様っ。それでは私たち帰れませんっっ」

 …またっ!
 3人?
 宮沢さんが、3人の女子生徒に囲まれている?!!
 どういう構図なのでしょう?

 少しだけ扉を開けた。
 そこには…
 
 
 3人の女子生徒が、触れるかどうかという距離で、宮沢さんを取り囲んでいた。
 
「!!!!」

 何だろう?
 心の中がもやもやする…感じ。
 
 3人の女子生徒に迫られている光景。
 3人くらい想定の範囲内だったけれど、実際にその現場を見てしまうと…、心が乱れてしまう。
 その真剣な眼差しを見てしまうと余計に。

 慌ててる宮沢さんの顔も…、どこと無くまんざらでも無いような顔に…。


 ふとした瞬間、宮沢さんの視線と私の視線が交錯した。

「――っっ!!」

 どうしていいかわからず、私はその場から逃げた。
 渡そうとしていたチョコレートを握り締めたまま。
 
 たぶん、もうチョコレートの包み紙は汗でぐちゃぐちゃになっていて、
渡さなくても良かったかもしれない、って思うくらいになっていたかもしれない。
 でも、高揚してた気持ちが一気に醒め、恥ずかしさと…悔しさみたいなもので、
私の心は青く、黒く染まっていった。

「古式っ!! 待ってくれっっ!!」

 その声は、私の耳には届いたけれど、心までは届かなかった。
 だから、私は足を止められなかった。

 こうして、私のバレンタインは、苦い思い出を残して…終わった。



<終わり>