ライター麻枝准は神ではない?

 Angel Beats!関連情報が多いですね。放送時期もほぼ決まったので、あとは待つだけの状態になりそうです。
 麻枝さんが原作・脚本と手がけているABですが、麻枝さんがシナリオなら鉄板だろう? と思っている人も少なくないかとは思います。実際にリトルバスターズ!では麻枝シナリオの評価が、その他シナリオの評価と比較して圧倒的に高いわけですから当然かと思います。
 しかしながら、本当に「ライター麻枝准」は神と呼べるほどのライターなんでしょうか? Key作品をずっとやってきている身としては、どうもそこまで言いきれるものが薄いような気がするのです。
 例えば、古い話で申し訳ありませんが、「ONE〜輝く季節へ〜」が代表例ですね。麻枝さん自身が「ハズレのほう」と評したように、この作品での人気キャラは里村茜であったり上月澪であったり川名みさきであったりと、見事に相方(?)の久弥直樹氏のキャラでした。そしてKanonでも、どちらかと言えば月宮あゆ水瀬名雪らのほうが人気上位で、麻枝さんのキャラは久弥氏キャラを超える人気は得られないままでした。AIRにしても、ブーム的な人気もあって好評を得た…のですが、あまりにユーザーを突き放した内容のシナリオには賛否両論がありましたし、二次創作界が全く盛り上がりを欠いたりして、万人に受け入れられたとは言い難いです。また、実は涼元悠一氏が書いたと言われている「summer編(過去)」は完成度が高く、あそこがあるのと無いのとではAIRという作品自体の評価も大きく異なっていたことでしょう。
 個人的には「神」認定だったCLANNADですが、ここでようやく麻枝准シナリオがユーザー全体に受け入れられたんじゃないかと思ってます。
 ただ、どうでしょう? 智代シナリオに関しては、好き嫌いはあるものの、CLANNAD内でも屈指のキャラですし、シナリオ自体も長さ・質ともに優れた内容だったと思います。実際に僕のSSサイトにも「智代アフターを書いてくれ!」ってリクは来てるくらいだったので、Afterも見たい!って思ってたユーザーは多かったんだと思います。しかしながら渚シナリオ=アフターの本編はどうなんでしょう? 確かにもの凄く泣きましたし素晴らしいとは思うんですが、長さがハンパ無いですよね。長くて泣けるシナリオってのは良いんでしょうが、ユーザーのタイムラインなどを考えた際に「長すぎる」ってのは避けたほうがいいでしょう。実際にCLANNADを持ってはいるけどクリアしていない人ってのはかなり多いですからね。多くの人がクリアできるくらいのボリュームでそこそこ泣けるほうが、クリアできる人が限られるけど深く泣けるよりもライターとしては正解なんじゃないかと思ったりします。CLANNADはあの長さがあったからこその神作品なんですけどw

 では、麻枝准は何故「神」なんでしょうか? シナリオ単体ではいっぱい良くない部分もありますし、「記憶喪失」「生死」「家族」と言ったキーワードから抜けられないパターン化もありますが。
 個人的には、麻枝准の「演出力」と「企画力」が神だと思ってます。それが如実に表れたのが「ヒビキのマホウ」ではなかったでしょうか?
 「ヒビキのマホウ」は、麻枝さんが原作を、マンガを依澄れいさんが描いた作品ですが、休載を繰り返しているようです。始まるって決まった当初は「キター!!」だったんですが、読んでみると思ったほど面白さが伝わらなくて、実は1巻だけ読んで2巻は買ったけど読んでないというハンパ野郎だったりします(汗。
 正直、周りの鍵っ子たちからの評判も、凄く良いとは言えないようです。贔屓目に見てる鍵っ子がそう感じているんですから、鍵以外の人たちからもあまり受け入れられてないのかなあ、とか考えているのですがその辺はどうなんでしょう?
 それはともかく、「ヒビキのマホウ」に何が足りなかったかと言えば、恐らくは麻枝准の「演出力」だったんじゃないかと思います。もちろん「企画力」も、連載マンガというゲームではない媒体のために発揮できなかったと思いますが、「演出力」の問題が大きかったでしょう。今までのKeyでの麻枝作品は、ある意味ではその演出力に拠るところが大きかったように思います。例えば自作BGMの流すタイミング。作品世界に合わせて作られたボーカル曲の曲と詞。CLANNADまでだと、テキストのユーザーが読む速さとBGMが転調するタイミングを合わせるとか。リトルバスターズ!になると、今度は声優さんの声による演出を前面に出し、BGMの印象度を下げたりとか、地の文を減らして声に集中できるようにしたりなどの仕掛けが見られます。特にリトバスは、緑川光氏や民安ともえさんやすずきけいこさんら、声優さんに演出の重きを置いた感じだったので、声の演技で今までしてきたテキストや音楽での演出を置き換えた感じですよね。
 そういう麻枝准が施した演出が、今までのKey作品では生きたんじゃないかと思うわけです。具体的にはKanon真琴シナリオあたりからですが。ですから、そうした演出を自分の手で出来ていたからこその「神」シナリオだったということです。
 ではABはどうなるんでしょう? シナリオに関わるだけだと、麻枝准一流の演出が反映されにくい可能性が高く、その場合は失敗の恐れもありそうなんですが、脚本も手がけたことで、麻枝准テイストがより大きく反映されそうなのは何よりですけども。ただ、CGの影やアフレコまでほとんどにチェック入れていたことを考えると、100%近く麻枝准テイストが発揮されるものかどうかは疑問です。まあこの辺はまた後述することにしますが。
 つか、ライター麻枝准否定ばっかしてしまいましたね(汗。もし機会があれば、演出家・企画者麻枝准は神である、というエントリを書こうかと思います。


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