魔法少女まどか☆マギカ、杏ほむSS公開
記事がペースダウンしてますが、アニメ観てるだけでかなりいっぱいいっぱいになってる管理人です。
さて、まどか☆マギカSSは順調に完成してて、今回は今までのほむら→杏子な杏子目線ではなく、杏子→ほむらなほむら目線でのSSになっていて今までのカップ麺SSとはかなり雰囲気が変わってると思いますし、杏子とほむらルートの一つの形は示せたかなーとも思ってますので是非是非。
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=290826
pixivのIDが無いという方のために、ブログにも載せておきますね。「続きを読む」が表示されてたらそこをクリックしてどうぞ。
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杏子とほむらのカップ麺シリーズのラストです。 今回はほむらちゃんから観た杏子、という描き方です。ほむほむから杏子はどう映っているのか? 今までのシリーズとはかなり違って見えるかと思います。 今回もふたりはまともにワルプルギスの夜対策会議をしないのでしょうか?
ついに明日、ワルプルギスの夜がやってくる。
「お前が言ってたワルプルギスの夜が来るって言ってたの、明日だっけ?」
「そうよ」
「って、あたしたち何も作戦らしい作戦決めてないじゃないか」
この数日間、私はこの目の前にいる佐倉杏子に様々なことを試してきた。
それは、明日のためにはとても重要なことで、細かい作戦を決めていくことよりもよほど有効なこと。
「何かほむらの家に来ても、最初はワルプルギスの夜のことしゃべってたはずなのに、いつも気がつくとカップ麺食べて終わりって感じじゃん」
「ええ」
「作戦会議って感じじゃなかったけどこれで良かったのか?」
私の真の目的は……そう、この佐倉杏子という魔法少女が私の足手まといにならず、かつ戦力として計算できるかどうかを見極めること。そのためには、彼女の人となりや性格、行動原理などを知る必要があった。
「大いに収穫があったわ」
「そうか。ならよかった」
彼女……佐倉杏子は、アホである。
それがこの数日間、作戦会議と称して彼女を家に招き色々と試して導きだされた結論。
「カップ麺食べてただけだった気してたけど、ちゃんと作戦会議になってたんだな」
「ええ」
やったことといえば、カップ麺を食べたことくらい。まあワルプルギスの夜がどんなものかを教えるくらいはしたけど、どう戦うかとかは何も話していない。それを「ちゃんと作戦会議になってた」と捉えてしまうのだから、致命的にアホの子である。
だからこそ、細かい作戦などを決めたところで実行出来るかどうかわからないし、緻密に計算し尽くした私の作戦の中の何処にも入る余地が無いのかもしれない。
「それにしてもほむら、いきなり膝の上に座ってみたりその状態で食べさせろとかお前変だよな」
「そうかしら」
変なのはあなたでしょう、と言いたかったけどぐっとこらえる。
この行動には意味があった。それは、彼女が何処までこちらの要求に対して反抗せずに協力するかを試す意味があったから。そして彼女は見事にこちらの要求に対して、多少の疑問は抱きながらも応えてくれた。これは、これからギリギリの戦いをするにあたって心強いと言うほかない。
裏切らないということ。これは凄く意味のあること。
今まで出会った魔法少女のうち、まどかは別格としても、巴マミは精神的な弱点が極端すぎるし、美樹さやかは存在そのものが穢れを生み続けてるし杏子の弱点ともなりうる。何より二人とも私の言う事など聴いてはくれないだろう。
杏子は違う。彼女は私を裏切ることは無いだろう。美樹さんを殺そうとしたりしたらダメかもしれないけど、遠ざけている今なら何も問題はないし、この数日でそれは証明されたと思う。
さすがに膝の上に座って食べさせてもらうプレイまでする意味はなくて、あれは単にやってみたかっただけだけど、それでも抵抗することもなく受け入れてくれたし、久々に温もりにも触れられたし気持ちよかった。
「あたしももしかしたら十分変かもしれないけどさあ。でもなんかこう……気は合うよね」
「そうね、その通りだわ」
あたしも、じゃなく「あたしは、でしょう」とツッコミを入れたかったがこらえた。
そう、気は合う。それは怖いくらいに感じた。
他人のための願い事で契約したという共通点もあるのだろうけど、性格的にも気を使わなくていいこの子の明るさとかいい加減さは凄く楽、というよりも心地いい。
「初めて会った時のあんたは無機質な感じがしたけど、イメージ変わったよね」
「あなたもね、杏子」
「あー、そっか。最初ってさやかとやってる時に止めたアレか」
本当の意味での最初はそうじゃないのだけれど。でも、何度か巻き戻して辿ってきたどのルートでもこのシチュエーションに出会うことはなかった。その意味では、私から観る彼女のイメージもかなり変わっている。
「あなたは美樹さやかに突っかかったときみたいに、ああやって新米魔法少女を襲ったりしてたの?」
少し疑問に感じていたこと。彼女は美樹さんが魔法少女になったときにはほぼ100%の確率でこの街に来て、そして命を落としてる。魔法少女同士の命がけの殺し合いは無くは無いけど、後々惹かれあうふたりが殺し合いをする絵はあまり観たくない光景だ。
「毎回じゃないさ。でも、どれだけの覚悟を持って魔法少女になったかってのは知りたいじゃないか。そんな甘いモノじゃないしさ」
「そうね」
「巴マミは凄かったよ。魔法少女になりたてであんな戦い方されちゃさあ、この街を任せようって気になるよね」
「巴さん……凄かったんだ」
「ああ。だから死んだってキュゥべえに聴いたときに、この街がどうなっちゃうのかって気になって来てしまったのさ」
「そういうことだったの……」
巴マミ……。私に魔法少女としてのイロハを教えてくれた恩人。殺されそうになったり邪魔されたりもしたけど、彼女がいなければまともに戦うことすら出来なかっただろう。そんな巴さんが杏子と旧知の仲だったのは知ってたつもりだったけど、詳しい過去は知らなかったから新鮮に感じた。
「油断さえしなけりゃ、あいつがその辺の魔女ごときに殺されるタマとは思えない。何で死んじまったんだ……」
「……」
本当なら巴さんとの一緒に戦いたかった。けれど、まどかを魔法少女にさせないという私の目標と真っ向から対立してしまうから恐らくは叶わない願いだっただろう。でも、あんな場面で死なせてしまったのは悔やんでも悔やみきれない。どうもその思いは杏子も同じみたい。
「まあ、済んでしまったことは仕方ないけどね。あとはあたしたちが何とかしなきゃならないってことだよな」
「ええ……」
彼女は、アホの子なのは間違いないところだけど、底知れない前向きさがある。たまに後ろを振り返ってしまう私にはない、前しか向いていないその性格は見習いたいくらい。今だって、後ろを向いた私にまた前を向かせてくれた。
「あたしはさやかを救うためにワルプルギスの夜と戦う。ほむらはまどかを守るためにワルプルギスの夜と戦う。そういうことだろ?」
「ええ、そうね」
「で、終わったらさあ、どうしようかな」
「どうって?」
「この街にまた戻って住もうかと思うんだよ」
「賢明ね」
彼女がここから離れてしまうのは今は想像が出来ない。そのくらい彼女が定着してしまったし、いなくなるのは考えられないくらいに大きな存在になっている。
「でも実家ボロボロでさあ……たぶん住めないんだよね」
「そうね」
彼女の実家は教会で、父親が無理心中したときに燃えてかなり損傷が激しい。あそこにまた住み直すのは無理だろう。
「美樹さやかのところに寄せてもらえばいいじゃない。今の杏子なら歓迎してくれるわ」
「ば、バカっ。そんなん出来るかっ」
恥ずかしがる彼女に、可愛いと思いつつもそんな顔をさせてるのが美樹さんであることに嫉妬を覚える。私ではあんな顔をさせられないだろうから。
「あいつの家は普通の幸せ家族なんだよ。そんなところにどうやって寄せてもらうんだよ。素性も知らないあたしみたいなやつをさ」
これは驚いた。そういうことはちゃんと考えてるのか。基本的にはアホの子なのに、妙なところで気遣いもしてて感心してしまう。
「巴マミの住んでたところとか……?」
「借家かもしれねーし、そもそも今さらじゃないか」
「それじゃあ何処に……?」
と、そこでふと杏子と目が合った。
どういう意味……ってもしかして?
「バカ……気付けよ」
「ごめん」
でも、何で私のところなの?
「ひとりぼっちは……寂しいもんな、お互いに」
「あ……」
「あんたも長いんだろ、一人暮らし。一度寂しい時間を過ごしてさ、またあったかいのを味わったらやっぱ戻りたくないもんな」
「そうね……本当に」
やっぱり、似てるんだなって思う。だからわかっちゃうんだなって。
「迷惑だったら他を当たるが……」
「そんなことないっ」
「ちょ……ほむらっ」
思わず大声が出て抱きついてしまった。
またひとりぼっちに戻ってしまうことの寂しさと、杏子がいなくなってしまう寂しさを想像してしまって。
「大丈夫だって。あたしはここにいてやるさ。というかいたいからな」
「ええ、歓迎するわ」
抱きしめながら、泣いてる私を撫でてくれてるのがわかる。
優しくて温かくて……今度こそ手放したくないと思った。
「ワルプルギスの夜、絶対倒しましょうね」
「ああ、絶対にな」
私たちは乗り越えて見せる。あいつを。
大丈夫。杏子となら、絶対に。