馬場社長講演会での内容から推測する、リトバスアニメ化の可能性と内容と懸念材料

 先日京都大学で行われた、ビジュアルアーツ馬場社長の講演会に行って来ました。まとめはカトゆーさんところとかを参考にしていただくことにして、馬場社長の講演を聴いていて感じたリトバスことリトルバスターズ!のアニメ化の「可能性」とその「内容」と、そしてそこから発生する「懸念材料」について考えてみることにしたいと思います。
【参考】京都大学アニメーション同好会主催 屋内講演企画「また奥深い講演が生まれちまったな… 2011」行ってきた。』(カトゆーさんの「戯れ言」より)
http://d.hatena.ne.jp/katoyuu/20111124/vavasyatyou

 講演会では「現在折衝中」としか発表されませんでしたが、VAとしてはどうしてもやりたいそうなので話さえあれば、という感じのようです。
 何故ここまでアニメ化されないかという件ですが、当初は京アニこと京都アニメーション以外でのアニメ化は(クオリティの意味で?)考えていなかったようだったのをAngel Beats!RewriteのOPアニメのクオリティなどから、何が何でも京アニでなければならない、という方針を途中で変更したみたいなのですよね。ですが、他の制作会社(幹事会社)はAIRKanonCLANNADで大成功したTBS×ポニーキャニオン×京アニのチームでアニメ化するものだとばかり考えていたので、現在売り込んでいるという感じなのだろうと思います。ですが、馬場社長としては京アニでのアニメ化もやはり期待していて、それまでにいいチームでのアニメ化の企画が持ち込まれれば、それを待たずしてアニメ化されるのではないかと思っています。ただ、途中でインタビューがあったアニプレックスの鳥羽プロデューサーによると「いい組み合わせ(アニメスタッフ)が思い浮かばない」とおっしゃっていたので、各社ともチーム編成に悩んでたり、提案しても却下されていたりしているのかもしれません。
 内容についても言われていましたが、リトバス特有のループだったり、ループを重ねて成長していく内容のアニメ化の難しさについては、馬場社長やKeyの代表かつシナリオライターである麻枝准らと解決法を見出したとのことなので、アニメ化に際しての構成的な部分で何か上手い方法でもあるのかもしれません。
 個人的には、京アニでなければ有力はアニプレックスではないかと思ってます。アニプレなら勢いあるA-1Picturesでの制作になれば面白いんじゃないかとも思いますね。今回ビデオ出演されていた中では、シュタゲで実績上げたフロンティアワークスあたりも有力なのかもしれません。その場合はRewriteのOPアニメを製作したWHITEFOXあたりが面白そうですね。スタチャは無いでしょう。

  • リトバスがアニメになった時の「内容」は?

 内容についての示唆もありました。馬場社長がリトバス特有の構造だったり、Refrain編こそやりたい(スタッフさんのアニメで観たいランキングでもトップだった)ようなので、笹桐ゆうや氏の「リトルバスターズ!The4コマ」のような感じの日常だけで構成されるアニメ化の線は消えたと観ていいのだろうと思います。そして、実現が更に難しそうな朱鷺戸沙耶ルート(?)も省くようなことはないようです。というわけで、個別ルートとRefrainを含めた本編のアニメ化を目指すということなので、最低でも2クールはあると観て間違いないかと思います。
 また、馬場社長が講演会で言ってたことで印象的だったことに、かつて東映Kanonの時に音楽を変更されて悔しかったことを挙げておられましたが、CLANNAD2期での「時を刻む唄」や、累計50万枚を売り上げたAngel Beats!の関連音楽など音楽面でメリットを享受できることも同時におっしゃってました。なので、リトバスがアニメ化されたとしても、音楽に関しては京アニでやったときのような「そのまんま」か、Angel Beats!でやったような「自分たちで全部作る」かのどちらかでしょう。なので、そこが通らなければアニメ化はないということでしょうから、誰か知らない人が歌ってる、みたいなことは無いのだろうと思います。ちなみに、さきほど「スタチャはない」と言っていた理由はここです。音楽制作で関われないとするとなかなか難しいんじゃないかと思います。
 あと、講演会中ではなく終わって帰宅した後にvavaしゃちょーに確認したことなのですが、声優さんについてはこういう回答でした。

 「そのままにはこだわってません」という一文をどう解釈するか、あるいはどういうニュアンスで取るのかってのは色々と分かれそうなのですが、理樹君あたりの声優さんの変更は高そうですね。ただ、現実的に厳しそうな声優さんの変更はあるのかもしれませんしこれまでもありましたが、それこそ原作ファンからするとキャスト変更ほど痛いものはないので、大幅な変更はされないんじゃないかと考えてますし、社長もそういうニュアンスではあったと思います。

 個人的には、既出の懸念材料のいくつかが解決されつつある一方で、新たな懸念材料が生まれつつもあるんじゃないかという気がしていて少し気になっています。
 まずは、既出でもありましたが音楽の問題でしょう。Angel Beats!でお金に化けることがわかりましたし、CLANNADと合わせてKeyの楽曲がアニソン業界に旋風を引き起こしたのは間違いないわけですし、アニメに最適という意味でもVAが享受できるメリット的にも大きい音楽制作=VAでやるべきでしょう。ただし、アニメは制作委員会に音楽制作も加わるのが普通です。出資する際に音楽の権利を得る代わりに出資するという感じですが、そうすることで音楽制作会社の推したいアーティストや声優さんを主題歌に起用したり、サントラを出したりで回収していくわけですが、アニメ制作会社そのものが音楽制作までやってしまうパターンというのもあります。この場合は、アニメのディスクで制作費を回収していくだけじゃなく、自社のアーティストを売り込みたいパターンや、キャラソンなどでも売り上げが見込めると考えての自社での音楽制作というパターンでしょう。外れたら大損ですが、成功すれば丸儲けですよね。CDだけ売れてアニメが売れなかった場合には補填にもなるでしょう。ただVAが音楽の権利を取ることになってしまうと、既存の音楽制作会社は参加できなくなりますし、アニメ制作会社的にもキャラソンなどのCD展開が出来なくなるということになります。もちろん、相応の出資をVAがすることになるのでしょうけど、AB!の場合はイチからの制作だったためにそれが出来たのでしょうが、リトバスとかではどうなのでしょうか? 京アニCLANNADなどはTBSの意向もあって実現したようなので、他の制作会社でもこのやり方が通用するのかどうかはかなり未知数ではないかと思います。
 もう一つは、「内容」のところで書きましたが、「こうすればアニメでも話が成立する!」と原作側で既に固めていることでしょう。これってつまりは、大まかなアニメの構成部分まで既にKeyの側では進んでいることになり、アニメ制作側にも前提条件として提示されるのかもしれません。ですが、それはまず、アニメ制作側がアニプレ鳥羽PやCLANNADの構成をしてた志茂さんのように鍵作品好きであることが前提条件になってしまうわけです。アニメ制作側にどれだけ鍵っ子がいるのかはわかりませんが、アニメ化した作品についてはプレイしている可能性もありそうですが、そこはアニメとゲームですし垣根を越えてプレイしてるアニメ関係者がどれだけいることでしょう(インタビュー受けてた4人のプロデューサーさんたちも半数はプレイしていなかった)。そして更には、ゲームをアニメにする際にどういう構成にするかって問題は、アニメ制作側が解決すべき問題というか解決することが仕事なわけです。原作側がいくら「こうやれば最適な形になりますよ!」と言ったとしても、アニメに落としこむ際にサイズ的な、あるいは展開的な不具合って出てくるものでしょうから(例えば24話なら24話分の長さになるのかどうかとか、1話単位での話が面白くなるのかどうかとか)、原作側の提案を鵜呑みにするのはしにくいと思うんですよ。しかしながら、麻枝さんがRefrainまでの話の流れを上手くアニメ化出来るアイデアを思いついたとか、アニメのノウハウをAngel Beats!で学んだVA、という話を聞いていると、何処までVAがリトバスアニメに対して口を出せるのだろうか……? という疑問にぶち当たってしまいます。というのも、この勢いだとリトバスのアニメ化で麻枝さんがシリーズ構成をしかねない感じにも取れるんですよね。それでなくても、アニメの監督さんやシリーズ構成作家さんらの意見やアイデアよりも、「こうやれば上手くいく!」という原作側の意見を汲み取ってくれるチームがアニメ化チームの前提条件になりそうなのが、よりアニメ化する上でのハードルを上げているようにも見えてしまうのです。まあ馬場社長は「アニメ制作チームの声を聞かないなんて言ってないよ!」と言われると思いますが、それでもアニメ制作チームの仕事を奪ってるように見えちゃいましたね……。

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 個人的には、リトバスアニメ化はまだまだ先が長いな、と思いましたし、これらの前提条件やVAが考えている理想のアニメ化を実現するには相当ハードルが高いなあという印象です。
 可能なのは、それこそAB!ではVA側の無茶な条件を飲んだアニプレックスと、P4でもRPG原作を徹底的にアニメで再現してる岸誠二監督とかしかいないような気もしていますが……。どうなりますやら。いつまででも待ってますが、個人的には原作通りよりも、アニメならではの何かがあるような作りだったらいいなあと思っています。

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