笹瀬川佐々美シナリオほかリトバスから見る、都乃河シナリオの良さと物足りなさと限界

 佐々美シナリオはまずまず良かったんですが、ある意味では都乃河勇人氏の限界も見えてしまいました。そこで、リトバス都乃河氏が書いたシナリオから、氏のいいところと物足りなさを列挙して、結論を書いてみたいと思います。

■キャラメイクは良いが…
 個人的には、キャラは結構良いと思います。小毬にしても唯湖にしても、佐々美にしても結構強烈かつ唯一性の強い感じがしてますし、意外性もありますしね。ただ、色々な設定を詰め込んでいるにも関わらず、開ける引き出し(ストーリー上で使う要素)がかなり限定されているのが何とも勿体無い。

■笑いは合格点
 笑いの部分はまずまずですが、麻枝さんが描くのに比べると爆発的なものは無いのかなあ、と。面白いんですけどね。筋肉いぇいぇーい、とかは都乃河さんらしいし、日常パートも割と彼の描いた部分が多いようですので、十分合格点ですし面白いんですけどね。肝試しとか家具部倉庫イベントあたりも都乃河さんなら、今後も笑いの面で心配することは無いですね。

■シナリオが浅い
 話の組み立てのパーツの少なさ…というかスケールの小ささは気になるところです。姉御シナリオでも思ったんですが、キャラ設定からはもっと奥深い話になるのか?と思っていたのに、いざ蓋を開けてみると、要素のほとんどは使わないまま置き去りでした。例えば姉御なら、「感情がわからない」あたりの設定に、過去のトラウマとか裏設定とかを含ませたりしたらもっと良かったのに…とか、帰国子女、もずくやキムチ好き、剣術に長けている…とか、どれか一つでもシナリオを作れそうな(もずくやキムチは??)要素なのに、使わずじまいでしたからね。
 佐々美にしても、もっと他のキャラとのカラミが増えれば、化学反応を起こせたかもしれませんし、一番は鈴ですよね。鈴とのライバル設定がイマイチ生かせていませんし、鈴とスリーサイズが近い設定とか、耳飾り、派手なニーソなど、使われないままの要素があまりに多すぎます。勿体無い…。
 例えば、これが城桐央さんのシナリオで言えば、こういう要素はほとんど使っているんですよね。葉留佳佳奈多、クドの髪飾りのことだったり、佳奈多の風紀委員設定とかも。樫田レオさんの美魚なんかだと、もっと余すところ無く使っているような…。

■世界観設定重視?
 虚構世界であることを重視しすぎだとは思います。世界観設定を重視しすぎていて、肝心の「シナリオの面白さ」へのアプローチが欠けている気がしました。いくつかのシナリオを使って全体の世界観を説明する、ってだけの意味でなら、部品としての価値もあるのかもしれませんが、そんな説明シナリオに使われるヒロイン(キャラ)は不遇キャラ扱いされますよね…。小毬とか。
 また個人的には、1+□=2となるシナリオを書こうとして、□に1しか入れていないような、そんな感覚なんですよね、都乃河シナリオは。それか、1+1が2にしかならないと言うか。世界観設定と結末だけあって、その過程を面白く描く力が欠如しているんじゃないかと。そしてその世界観も、シナリオの深さに繋がるようなものにもなっていないような…。

 こんなところでしょうか?
 キャラメイクと笑いの部分は良いのですが、シナリオの浅さというか広がらなさが致命的にダメだと思います。何かこう、爆発的なものが生まれる予感がしないんですよね…。
 都乃河氏企画のゲームが出るまでは評価を下すわけには行かないんでしょうけども、Rewrite田中ロミオ氏のシナリオに付随する形で書くのであれば、またリトバスと似たようなシナリオになる恐れが高いでしょう。それほど個性と言う意味でも見せられていないのが、何より鍵っ子の不満と不安を起こさせているようにも思います。
 これでは…麻枝准の後継は厳しいですね。まあ誰にも務まらないですし、育てるとしても、育てて花開くものとも限らないので仕方ないんですけども。Keyも長くは無いのかな…。佐々美シナリオには期待していたんですが、面白かったけどもある意味では限界が見えてしまいました。残念です。