阪神が優勝を逃した主犯は?

 阪神が巨人に完敗し、事実上優勝の望みが断たれました。巨人が残り3試合で2敗以上しない限りは可能性すら無いわけで。それに阪神は3連勝しか無いわけですが、CSを控え中日が本気モードで立ちふさがるという話もあります。ここまで一度も首位を明け渡していなかったのがこのタイミングで陥落ですから、その影響というのも大きいでしょう。まああれだけマジックが消滅し続けていたら無理もありませんけれど…。
 では何故、13.5ゲームもあった差がなくなってしまったんでしょうか? それに、なぜシーズン終盤になって巨人に7連敗という屈辱を味わせられたんでしょうか?

 色々とあると思います。例えば、先発投手陣の不足。6連戦で、未勝利のリーソップを先発させなければならないなど、台所事情は酷いものがあります。もちろん、岩田が出てきて、安藤も安定して投げるなど、昨年よりはマシです。が、移籍して期待された金村暁が全く結果を出せず、ボーグルソンは昨年以上の悪癖の酷さで安定しない。福原はまたも故障もあり計算できず。未だに下柳に頑張ってもらわないといけない状態では、昨年とそれほど変わらない気がします。
 打線も、結局は新井次第だったということになりました。五輪後に新井が長期離脱している間にチームは大失速。五輪前も復帰後も、おそらく新井は無理をして出場しているでしょうし、このチームの失速を誰よりも責任として感じていると思うので、本当に気の毒なんですが、それ以上に、新井が抜けた後の打線が貧弱すぎました。新井がいい選手だから、というのもありますが、それをカバーできる選手が誰も出てこなかったというのも事実でしょう。
 
 そうやって考えてみると、「選手層の厚みアップ」「現有戦力の底上げ」「二軍からの昇格組の活躍」というのがほとんど無かったなあ、と思います。
 例えば、葛城の活躍は大いに役立ちましたし、平野や関本らも底上げには寄与はしました。が、基本はそれほど変わっていないんですよね。金本に上積みがあるわけじゃないですし、赤星も首痛があって一進一退。新井は良かった頃の今岡の代わりだと考えると、数年前からほとんど変わり映えはしません。要は、打線の若返りとか若い力の台頭が全くといって良いほどなかったと思います。
 桜井や林がスタメンで活躍するはずだったんですが、二人ともケガ→復帰後もパッとせずに主力から外れてしまいました。本当ならクリーンナップを脅かすくらいにならないといけないのに…。
 そして、二軍からの昇格組がほとんど活躍しませんでした。葛城くらいじゃないでしょうか? 若手からは誰も出てこなかったに等しいと思います。
 ここまで打線のことを書きましたが、あとは捕手と足の速い選手。捕手はほぼ矢野で、野口が一時期は主力として出てたくらいでしょうか? 昨年は少し活躍した狩野は、岡田監督の逆鱗に触れてほとんど一軍にいませんでしたし、その他は…小宮山とかもいますが、ほとんど使わずじまい。捕手に関して言えば、リードのクセを見破られてきている矢野と、ほとんど打力は期待できない野口以外には使ってないに等しいわけで、来年以降への足がかりや楽しみが特に無いわけです。
 足の速い選手も致命的に不足しています。平野はそこそこ速いですが、盗塁はわずか7個とイメージほどではありません。また、代走要員が欠落しています。代走に捕手登録の狩野が出てきたときにはずっこけましたが、あとはバルディリスくらいしか出てこないことを考えると、そもそも走力というものを重視していないようにも見えますが、間違いだと思います。
 何せ、赤星は慢性的な首痛で安定した打力や走力を発揮できません。よく頑張ってはいるんですが、安打が出ても2塁からは帰って来れないように、長打力や打点を取る力は全く期待できないので、どうしても得点能力が下がってしまいます。
 そこで赤星の代役というか後継者が必要なわけですが、走力ならNo.1だった赤松が、新井のFA移籍での人的補償でプロテクトから外していたという失態もありいなくなってしまいました。これで、阪神からは走れる選手がほぼ全滅してしまった、と言っても過言では無いかと思います。そして、その代わりとなる選手が二軍にいるのか? 今育成しているのか? 一軍では試さないのでわかりません。
 
 投手陣も深刻です。若手からは、岩田や新人の石川らが出てきましたが、厳しいものがあります。特に、昨年の新人王の上園や、若竹、ずっと期待されている気がする杉山らが、出てきたり出てこなかったりで全く活躍できませんでしたし、その他の若手からの突き上げもありませんでした。中継ぎも、阿部がまずまずの活躍は見せたものの、江草や渡辺は中盤以降に失速し、久保田やウィリアムスは良くないまんま。能見も結局一軍に定着できずと、あまり数年前から顔ぶれが変わっていません。
 
 
 色々と問題点を挙げてきましたが、ほぼすべてにおいて同じことです。
 「二軍からの突き上げが無い」
 「若手のレベルアップが感じられない」

 この2点に尽きます。
 特に他チームを見ていると、この2点が阪神においては非常に不足しているように感じるのです。
 巨人でも、小笠原やラミレス、グライシンガーなどの主力の移籍組が活躍している一方、大道や谷、キムタクのような渋い移籍組、そして生え抜きの鈴木や脇谷に亀井、若手の坂本や越智に山口、東野などが出てきていて、阪神には無い層の厚さとバランスの良さがここに来て際立ってきました。しかし調子が上がらない頃から、若手を積極的に起用してましたよね。それがベテラン勢の夏以降の猛爆にも繋がりましたし、若手選手のモチベーション向上にも繋がってきて、結果としてチームの底上げがかなり行われたことになったのだと思います。パでも、西武やオリックスは若手の積極起用が実を結んだ感じですからね。

 阪神においては、若手の積極起用も無かったですし、若手の底上げも全く感じられませんでした。前半戦で猛ダッシュを見せたのもの、他のチームの戦力が整わないうちに、寝起きを襲ったくらいのものだったのかもしれません。だって、チームは数年前からほとんど変わっていないんですから。
 何がいけなかったんでしょうか?
 そう考えると、二軍や一軍でもそうですが、「育成が上手く行っていないのではないか?」という疑念が浮かびます。何せ、昨年の新人王だった上園なんかは、二年目のジンクスというよりは、昨年からいいところが全く伸びず、悪いところだけが伸びてしまった感じでしたからね。林や桜井なんかもそう。昨年からの向上した部分が見えてきません。
 もちろん、これらは選手個々の素質の問題という声もあるでしょう。そうなれば、阪神のスカウト陣が節穴だと言うことになりますが(それも少しはあると思いますけど)。ただ、これだけ先発投手陣や若手の野手陣が育ってこない現状を見ると、育成方針や指導者たちに問題があるとしか思えません。一年くらいは活躍できる選手は出てきているんですが、それが続かないんですから。福原が年々スケールダウンしていることや、何時まで経っても「ブルペンエース」から脱却できない太陽などもいますし、コーチ陣は何をしているんだろうか?と感じてしまいます。
 
 このまま阪神は2位通過するでしょう。運良く日本シリーズに出ても、パのチームを倒すのは難しいようにも思います。そうなれば、岡田監督以下首脳陣の責任問題は避けられそうにもありません。外部から新たな血を入れるか、あるいは二軍だけでもコーチ陣を刷新するなど、大鉈を振らない限りは、数年後には阪神は万年Bクラスのチームへと逆戻りするでしょう。そうならないためにも、今オフのフロントの決断を願いたいと思います。