Angel Beats!の二次創作は盛り上がるか否かを考えてみた

 COMIC☆1あたりのイベント新刊で、徐々にAB!本を出すサークルが出てきているようです。pixivでもAB!キャラを描く人が増えてきているように、AB!の二次創作は徐々にその輪を広げつつあるように思います。今季のアニメで言えば、「けいおん!!」や「ハートキャッチプリキュア」あたりが人気になるでしょうが、AB!はまだ序盤でどう転ぶかわからないストーリー待ちの部分もありますし、キャラ萌えだけで語れる作品ではないので、先に挙げた2作品やその他の人気アニメと比べると、これからではあるとは思いますが、逆に現時点でこれだけ出ていると言うのは、この先どれだけ増えるのかが楽しみでもあります。
 しかしながら、真の意味で二次創作が盛り上がる、と言うのは、やはりオンリーイベントが開催されてそれが盛況になったり、あるいは放送終了後も人気が持続して、冬コミあたりでサークル数が激増してこそのようにも思います。果たしてAB!には、そうした人気ジャンルになり得る可能性はあるのでしょうか?
 それを、過去のKey作品や流行りアニメでの盛り上がり方を参考にしながら考えてみたいと思います。
 
 過去のKey作品での二次創作は活発だったと言って良いでしょう。「葉鍵系」という言葉を生み出したKanonの頃が一番だったでしょうが、Key以前に発表された「ONE〜輝く季節へ」も息の長いジャンルで、未だに新刊を出しているサークルをコミケで見かけることが出来ます。Kanonも10周年を記念して昨年にオンリーイベントが開かれるなどしていましたし、この初期の2作品における二次創作は非常に活発だったと言っていいと思います。
 CLANNADはそれに比べると地味だったかもしれません。CLANNAD発売直後くらいのコミケ等には行ってないので、初期の熱気みたいなものに触れられていないからかもしれませんが。発売から1年後に、僕がコミケに参加した時には、かつて一大ジャンルと言われたKeyの初期作品のようなサークル数とはとても言えないような状況でしたし、リトルバスターズ発売までは徐々にサークル数が減っていく寂しいものでした。ただ、SS(小説)界隈は、いくつかの長編を連載していたサイトが長期間更新を続けていた効果なのか、大きくアクセス数が落ちることはなく、継続して訪れる読者さんも多かったですし、コミケなどでも根強い人気があったような実感はありましたが。
 智代アフターplanetarianなどは、ほんの一時、僅かなサークルが活動していたに過ぎず、二次創作的な盛り上がりはほとんど無かった、と言っていいでしょう。
 そうした流れからすれば、リトルバスターズ!の二次創作的な盛り上がり方はかなり凄いものがありました。発売直後もすごかったですが、発売から4年になろうとしている現在でもなおオンリーイベントは活況を呈してますし、何よりここからKeyジャンルに入ったと言うサークルさんも数多くいたのが特徴でしょう。CLANNADからの継続というところももちろんありますが、Kanonの頃にやっていてリトバスで戻ってきたというケースや、CLANNADからKeyに入ったけど、同人をやるのはリトバスからというケースなど、サークルの作品遍歴も多種多様なのが面白いですね。
 
 それらを踏まえると、AB!は一体どの作品に近い盛り上がり方と言えるんでしょうか? 結論から言えば、ゲーム原作からアニメ原作に変わったことで、比較対象が全くわからなくなりました(汗。
 作品的には、リトバスのような賑やかさと世界の閉塞感があると思います。リトバスユーザーならニヤリとさせられるようなシーンが数多く取り入れられてますし、男性キャラ同士の絡みが多いのも特徴的でしょう。女性キャラも魅力ありますし、今後の展開の中で、各キャラの背景を描いていければどのキャラにもファンがつきそうな、そんな雰囲気さえあります。
 内容の難しさというか取り扱っているテーマ的には、CLANNADくらいあるんじゃないかと思います。リトバスと違うのは、CLANNADのほうがより麻枝色が濃いということですが。深く考えずに流して見るだけでもそれなりには楽しめるものの、裏に仕掛けられた設定やメッセージ性などは、初見ではなかなか考えがつかないような部分がありますので、考察もそうですが、作品を考えることが楽しいと思える人にとっては格好の内容になっているかと思います(僕がそう感じているだけかもしれませんが……)。
 Kanonなどの頃とは、さすがに時代が異なるので比較はできません。あの頃は、まだまだ男性向けジャンルで核になる作品がそれほど多くなかったことで、ギャルゲージャンルが葉鍵から爆発的にブームになったという時代背景的なものがありましたので。作品の性質としても、その頃とは比較にならないくらいに多様化してしまっている現在では、AB!と比較するのは難しいでしょう。
 
 ただ、二次創作的に流行るには課題もあります。それは、この駆け足の展開では二次創作的な妄想をふくらませている間に次の話になってしまうことや、キャラ1人1人の掘り下げがないまま、消えたり重要な局面を迎えてしまっていることです。そうした「間」があることで、妄想したり個々人での世界を広げたりする中から二次創作が生まれていくものだと思いますから、要素を詰め込みまくって、一つ一つの要素で立ち止まることを視聴者に許さない展開は、二次創作的にはやりづらいとなってしまうように思います。
 まだ、1クールで終わるアニメだということもプラスではないでしょう。「けいおん!」なども1クールのアニメながら二次創作的にもブームにはなりましたが、どちらかと言えば理解しやすい内容のものが多かった気がします。AB!のような時には考察が必要なアニメが1クールでは、放送終了とともに下火になってしまうことが多い最近のアニメの傾向からすると、できるだけ長く放送していた方が、二次創作的にも勢いが持続する可能性が高いのかなと思ってます。
 ですが、それもあまり関係ないですかね? アニメジャンルで二次創作が盛り上がる作品ってだいたい最初は1クールアニメですし、放送終了後も考察やら解説、そして今後の展開への期待(続編だったりOVA展開、メディアミックスなど)があれば、二次創作のモチベーションの持続にも繋がるでしょうし、今年いっぱいくらいは同人誌を作ろうという人は出てくるんじゃないかと思ってます。
 そして何より見逃せないのが、アニメ原作であることですね。従来のKeyユーザー層の多くは見ていると思いますが、それに加えて、一般的なアニメファン層が「原作のないオリジナルアニメ」であることも考えて見ていると考えられます。Keyのゲームのアニメ化は、どうしても原作のゲームで意図したような演出や展開にはならず、原作ファンの熱気とアニメから入った人との温度差が大きかったように思いますが、AB!ではそんな温度差があまりありませんからね。もちろん鍵っ子とそうでない人とで受け取り方は違いますし、放送開始直後くらいのアニメファンの目線は冷たかったのですが、放送が進んでいく中でその辺も解消されつつあるそうに思います。
 
 個人的には……今後の展開次第では、今までのKey作品を越えるような人気になり得ると考えています。確実に見ている人の分母は大きくなっているわけですし、あとは、どういう終わらせ方をするかで読後感みたいなものが変わってくるとは思いますが、最低でも、リトバスと同程度の二次創作熱には成り得るんじゃないかと思います。もちろんリトバス同人は、同人作家さんやコミカライズの継続などで、徐々に原作とは別の方向で深化していった結果の産物ですけどね。
 予測では測れない世界ではありますが、オンリーイベントの開催なんかも決まってくれば、二次創作熱がどのくらいかもハッキリしてくるんじゃないかな、と期待しています。ひとまずは夏コミですかね。


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