けいおん!!がKey作品の流れを取り入れているのか?と思える部分を挙げてみた。

 けいおん!!20話のエピローグ的な部分に涙した自分です。ほぼ予想できた光景だったはずなのにボロボロ泣いてしまいました。アニメであんなに泣いたのは初めてかもしれません。
 そして思ったというか感じたのが、けいおん!!にはKey作品なのか? と思わせるような部分や演出が各所に見られるのではないか? ということです。鍵っ子としてとか、鍵作品が偉大だ、ということを言いたいのではなく、京アニけいおん!!スタッフがKey作品に影響を受け、その良い部分や特殊な部分をけいおん!!に活かしているのではないかと思える部分がいくつか見られるのです。その部分を少しだけ紹介してみたいと思います。

  • クライマックスのために日常シーンを伏線として積み重ねる手法……CLANNAD的?

 けいおん!!20話はまさにこの項目通りではなかったかと思うのですが、今までのエピソードが少しずつ積み上げていってこそのあのシーンではなかったかと思うのです。それは、唯の成長であり、軽音部部長として自覚を持っていく律であり、人前で出来ることが増えていく澪であり、本当の自分が徐々に出せるようになっていった紬であり、唯に軽音部に依存してく梓であり……。色んなエピソードが徐々にメンバーを変えていったり成長させたりしながら、20話の最後のライブに繋がり、その後のあのシーンへと帰結して行ってる……。そんなイメージでついつい見てしまうのは僕だけでしょうか?
 一期と合わせて合計で3クールあるわけですが、その長い時間ずっと見守り続けている、そういう見方をしているからこそ、序盤のヘタレでバラバラだった頃を懐かしく思いながら、輝いていたあのライブシーンに感動し、そしてその後のシーンで涙できたのではないかと考えています。そして、起伏のあるシーンは多くなく、どちらかと言えば、どうでもいいような日常を多く描いているので、その日常の積み重ねが、後半のインパクトのあるシーンを強調する結果にもなっているのだと思います。
 これってCLANNAD的な見方というか、作り方のように思えました。CLANNADという作品も、何気ない日常を長々と描き、その積み重ねが後半のシーンの破壊力を増幅させていましたが、割とよく似ているんですよね。けいおん京アニのスタッフさんはCLANNADでも制作チームに入っていた人もいるようなので、その辺を取り入れながら、あるいは影響されて、けいおんの中にもそうしたテイストが感じられる、あるいは計算して作られたのではないかと思うのです。

  • 徹底的なユーザーの「傍観者」視点……AIR的?

 けいおん!!を見ていて、「この世界に入りたい!」だとか、20話なら「慰めてあげたい!」とか本気で思ってしまったのですが、一方でそれは許されない、あるいはそうした視聴者たちの気持ちを代弁するような存在が作品中には存在していないのがこの作品の特徴的なことではないかと思うのです。つまりは、物語に介入することが出来ないし、ただ傍観者として見守っていることしか出来ない……と。
 これって、AIRじゃないかと。中でも、AIR編で感じたことと似ているような気がします。AIR編では主人公だった往人は消えて、観鈴と晴子のふたりきりで何とかしていく話でしたが、これが、軽音部メンバーたちだけで完結していくのと共通しているような気がするわけです。更に言えば、けいおん!!のトンちゃん(スッポンモドキ)の存在が、AIRでいう「そら(カラス)」の存在と若干ですが被りますw トンちゃん=ブタ鼻→けいおん豚と言われるコアな視聴者の化身のようだと考えるとなおさらです。
 これは、そうしたことも言えるのかもしれませんが、もしかすると作中のキャラや世界を身近に感じるような演出や世界観がそうさせているのかもしれませんね。これも、AIRにもけいおんにも言えることではないかと思うわけです。

  • 学校生活という時間の有限さを強調する構成……CLANNAD的?

 けいおんといえば萌え4コマ漫画が原作ですし、少なくとも一期や二期の序盤では、無為に日常を消費しているような描かれ方をしていた回も多く存在しました。ただ、二期はそんな序盤から、彼女たちの高校生活が残り僅かであることをことさらに強調するような描き方をしている回が散りばめられていて、『卒業』という終わりに向かって時が止まらないさまを描いていることは明らかでした。
 これって、CLANNAD的ですよね。CLANNADは、学校生活とその後のAFTER STORYがあったために学校生活は過程になってしまいましたが、それでも、渚の「変わらずにはいられないんです」に称されるように、時は止まってくれない、そして変わらずにはいられないことを描いていました。そしてきっちりと、留年して卒業した渚の卒業式なども描いていて、区切り区切りで時の流れをしっかりと描いていたように記憶しています。
 けいおんの原作は3巻までしか読めてませんが、例えば澪ファンクラブの曽我部先輩の話は、原作では澪たちが2年の時に、自身も在籍中の時に描かれたものでした。アニメの一期では飛ばされた話だったのを二期でやったために変な作りにはなってましたが、あのエピソードで卒業後の曽我部先輩の姿、特に参加したくても出来なかったことを敢えて描いているあたりが、彼女を描くことで、軽音部の卒業後の姿のひとつを示唆したのではないかと思いました。さわ子先生のデスデビル再結成のエピソードはそれよりもストレートですよね。軽音部の5人だって、こうやってキッカケさえあれば卒業後でも好きな音楽が出来る、っていう示唆をしていたのは間違いないでしょう。それは逆に、この学校生活が終わってしまうことをも同時に示唆しているんですよね。
 CLANNADでも、例えば学校を去った公子の結婚式が実現したりしますが、相手の芳野祐介ともどもこの学校のゆかりの人間で、更には在籍中の風子の活動が起点になって実現するわけですが、この学校に在籍していたことが縁となった関係でもありますし、それが色んな縁を重ねたことで結婚へと繋がっていったのは、学校生活が縁で結婚まで行ったことを示すと同時に、学校から出て行くと学校そのものから縁遠くなってしまうことも示唆していたように思いました。繋がりが希薄になってしまうというか。

  • 現実には有り得ない世界観に内包されているリアルな部分

 書いていてよくわからないのですが、まあそういうことです。Key作品で思うことは、ファンタジーでしか無い世界観ですしキャラも現実では有り得ないような性格をしているのに、描かれていることはごく普通のことですし、何故か身近に感じてしまうんですよね。。。そこが、けいおん!!にも感じてしまう箇所だったりします。
 けいおん!!を見ていて思うのが、あのメンバーたちを凄く身近に感じてしまうことなんですよね。それこそ、本当に手が届きそうな感じで。でも決して届かないんですが。。
 それはともかく、けいおんはとにかく、チートなキャラがいませんよね。唯は、絶対音感があったり、さほど練習していないように見えて上手く演奏出来ていたりなどしてますが、演奏と歌が同時にうまく出来なかったり、そもそもが残念なキャラですしね。メンバーたちのゆるゆるボディ(スリーサイズや体重的に)も身近に感じる要素なのかもしれません。この、身近に感じる設定こそが、変なリアリティを生んでいるようにも感じます。
 また、メンバーたちの目標が「目指せ武道館ライブ!」だったのが、いつの間にか消えて、学祭ライブ成功が目標になっているあたりも、本当に近くにいそうなごくごく普通の女子高生たち、という感じを受けます。その辺が、凄いことをしようとしているわけじゃなく、ただ生きている実感を得たいと描かれているKey作品にも通じるんじゃないかと思うわけです。
 そして、楽しい時間や「高校生」という身分で要られるのが、無限ではなく有限であることを強調し、それを立ち止まりたがる視聴者・ユーザーに対して強烈なメッセージとして送っていることでしょうか? CLANNADに限らずKey作品は「説教臭い」と言われたりしますが、それと似たものをこのけいおん!!でも感じました。「けいおん!!は永遠に続かないんだよ。終わるんだよ」というメッセージ性を。。当然かも知れませんが、それを、作品中のキャラたちにも見せ、そして同時に視聴者にも味わわせるというのは、CLANNADを観てた時と同じような受け止め方が出来たのではないかと、僕自身は思いました。こうした、夢ごこちだったのが一転現実を見せられるという手法は、けいおん!!CLANNAD的な作られ方をしているのでは無いかと思う、もしかすると一番の部分かもしれません。

                    • -

 京アニは、Key作品の良いところをけいおん!!に落とし込んだのは間違いないと思うんですが、同時に不評だった部分は反面教師にしたんじゃないかと思うところもありました。アニメオリジナル回にインパクトのあるシーンを用意しなかったあたりとか(澪ファンクラブイベント回はインパクトあったかな……?)。原作のかきふらい氏も、CLANNADのアンソロに描いていたくらいですから鍵作品は割と好きな方、みたいにも思うんですが、それを原作の作風に生かしているかどうかはわかりません。3巻まで見た感じではそうは感じませんでしたが……。なので、味付け自体は京アニではないかと考えています。
 これが、けいおん!!という作品を、ただのキャラ萌えアニメから別次元へと昇華させたことは間違いないでしょう。逆に、一期の緩急の弱い、テーマも曖昧な緩さこそが醍醐味だと考えていた人は、こういうところが引っかかるのかもしれませんね。
 最後はどう終わらせるのかわかりませんが、全員が現実を受け入れるような終わり方になるんだと思います。楽しみですが、怖くてしようがありません……。


Twitter「つぶやく」ボタン

Twitterです
http://twitter.com/rikio0505