Garden騒動に見る、Cuffs…中小ソフトハウスの苦境

 ブログのバナーにも使ってますが、一応僕の手元にも「Garden」があります。
 発売後に、メインヒロインの1人をはじめ、2キャラくらいが攻略対象になっていないなどの大きな不備?を抱えたまま見切り発売したことで、かなりネット上で叩かれているようです。
 そりゃあ当然でしょう。発売前にそのことを明かしていたらまだ良かったんでしょうが、それすらしなかったことは、特にユーザーへの裏切り行為とも取れるわけですから。
 そもそもこのCuffs、「さくらむすび」では、ヒロインが3人しかいないにも関わらず、うち2人のシナリオは後半部分がかなり端折られていた印象があったので、「Garden」で攻略対象キャラが大幅に増えていたことを知り「大丈夫かいな?」って思っていたんですよ。この人数をこなせるのかどうかってことが。案の定でしたが。

 こんな状態で発売せざるを得なかった…さらに、メインヒロインとして体験版でも公開していたキャラが攻略対象キャラじゃなくなっていたことを公表できなかった、と言うのは、Cuffsって相当資金繰りが危なかったんだろうなあ、と言うことなんでしょうね。つまり、見切り発車でも発売しなければ、恐らくは会社が倒産してしまう、と。そのタイムリミットがこの1月末だったと言うことで、発売延期という選択肢は無かったんだろうなあと思います。
 しかし、こういう中小のソフトハウスにとっては、特に苦しい時代になっているんじゃないか? とも思ってます。
 元々、エロゲメーカーに関わらず、ソフトハウスって、自転車操業が基本ですよね。借金してゲーム作って、売って儲かったお金で次のゲームを作る、って感じで。それがどこかでブレイクすると、資金繰りにも余裕が出てきたり、ラインを増やしたりも出来る。それは今も昔も変わらないと思うのですが、昔と今で絶対的に違うのが、
 「ゲームを作るためのコスト・時間」
 です。
 昔なら、声はいらなかったですし、絵もそれほど重要視されませんでした。音楽も音色の少ない、機器も揃っていないような曲でも大丈夫でした。むしろ、卓越したシナリオとかだけでもあれば、ブレイクするチャンスはいくらでもあったのです。ただ、今は違います。
 まず、声が無いとそもそものスタートラインに立てなくなってきました。あるのが当たり前で。「声」が当たり前になって久しいですが、この「声」がどれだけソフトハウスの負担になっていることでしょうか? だって、声優さんへのギャラが必要でしょうし、意図した演技をさせるためにアフレコにも参加しなければならない。その間はライターさんの手も止まる(VA馬場社長のインタビューより)。声優のキャスティングなんてのも重要でしょう。そう考えると、物凄い負担増なわけです。ましてや、メインライターが一人とかだとちょっと無理でしょうね。
 それに、攻略対象キャラが多いほど良い、という風潮もあるように見えます。このCuffsも、「さくらむすび」で、攻略対象キャラが3人と少ないことをユーザーから言われて、「Garden」で増やした、と言う話もあるくらいです。最低でも5人くらいいないと…って感じなんでしょうかねえ? 僕としては、1シナリオしか無くとも、そのシナリオが心揺さぶられるようなものなら、それで大満足なんですけど。「さくらむすび」をプレイすればわかるだろうに…。そんな力とか体力の無いブランドに、我々ユーザーも過大な期待を背負わせないことも言えるかもしれません。
 そうしたハードルを越えて、なお「シナリオが面白いかどうか?」が問われるわけですから、中小ソフトハウスが成り上がるには非常に厳しい環境になってしまったのかな、と思いました。
 原画家の力はどうなん? と言われそうですが、原画がゲームの売り上げを増やすことはあっても、原画がゲームの評判を上げることはほとんどありません。いとうのいぢ氏原画のエロゲーは、雑誌への露出が多いのに全くヒットしてませんし、Tony氏原画のエロゲーも、業界を席巻するほどの売れ行きになったためしがありません。思うのは、絵が良い=最初のハードルが高い=シナリオは相当良くなければ期待はずれ、と言う図式が出来てしまうのではないかなと。個人的には、オーガストべっかんこう氏なんかは、ライターさんの力量と上手いこと合って成功しているように思えます。逆にCuffsの場合、☆画野朗氏の萌え絵がそのハードルを高めてしまっているように思うんですよ。「さくらむすび」くらいにこじんまりとしてたゲームならまだ調和が取れていたのですが、アレ以上の規模を追求しようとしたがために、破綻をきたしたようにも見えました。

 以上のような理由もあって、中小のメーカーには厳しい状態になってきていると思います。ですから、成り上がるためには無茶をしなければならなくなってきているのかな、と。
 個人的には、Cuffsのメインライターであるトノイケダイスケ氏は、かなり良い物書きさんだと思うのです。でも、残念ながらCuffsというブランドではそれを生かすことは出来ないっぽいです。☆画野朗氏も、そこいらの原画家と比較にならないくらいの萌え絵師だと思いますし。もう少し大きなメーカーの1ブランドとして再出発したほうがいいように思います。
 
 もう「Cuffs」と言うメーカー・ブランドは終わりでしょうから。あんなことをしてしまったんですし。負のイメージしか残らないわけですし。追加シナリオとかも、期待しないほうがいいでしょうね。資金繰りがあんな状態+こんな評判になって売れなくなった=お金にならないことはしない、でしょうから。