「侵略!イカ娘」人気に見る、原作人気不要のアニメ化路線

 先日のイカ娘記事がかなりのはてブはてなブックマーク)されるなど反響があったわけですが、その他にも、一般書店に勤める方のブログでも、アニメ放送開始前と開始後で原作コミックスの売れ行きが激増したという話がありましたので、この勢いは本物と言っていいと思います(まだ半信半疑なんですがw)。各書店でも、何故か最新の7巻が品薄という状態ですしね。どのくらい売れているかはよくわかりませんが、アニメ化効果が相当あったのは間違いないでしょう。書店に置いてある単行本の帯も、いつの間にか「アニメ化決定でゲソ!」から「アニメ絶賛放送中でゲソ!」(たぶん)に変わっているので、増刷されたのだと思います。

※この記事は有名ですよね。
http://anicomi.livedoor.biz/archives/1196901.html
 さて、そんな思わぬ人気を得ているイカ娘ですが、そもそも原作単行本の売り上げはさほどというか、かなり低迷していたことは知られていることだと思います。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1248516477
 こんな感じで、ずっと1万部を超えない程度の売り上げに終始していたようで、同じくチャンピオンからアニメ化された小6ギャグマンガみつどもえ」の半分も売れてないみたいです。みつどもえでも2万部ちょっとでのアニメ化ということで、内容のぶっとび方からもあって思い切ったアニメ化だったとは思ったんですが、イカ娘は更に話題に上がることも少なく、アニメが始まるまでは本当に動きが鈍かったように思いました。むしろ、アニメ化が決まった後に原作を買った人が「あまり面白くないけどアニメ化して大丈夫か?」みたいなことでスレが盛り上がるというよくわからない状態だったようです。みつどもえのアニメが始まった後で、イカ娘がみつどもえ公式サイトを侵略していましたが、あれも「えっ……何これ」な感じで観てましたしね……。
 とまあ、アニメ化される前の人気はイマイチだった、知名度もあまり無かった、ということがわかっていただけたかと思います。
 しかしながら、そんなイカ娘はアニメ化されるや否や人気が急上昇。単行本の売れ行きも好調のようですし、amazonでのDVDランキングで、ミニイカ娘回が収録されている3巻が一時急騰するなど、商業的にも成功するんじゃなイカ?というところまで来ています。みつどもえのBD/DVDは1000ちょっとの売り上げなんですが、それを超えるのは間違いなさそうで、どこまで伸ばすかが注目です。
 このイカ娘人気ですが、つまりは原作人気が不要ということではないでしょうか? 普通のアニメ化であれば、例えば今やってる「俺妹」であったり「禁書目録」であったりは、原作のラノベ人気もありますし、原作ファンだけでもそれなりの数がいるでしょう。「FA(FORTUNE ARTERIAL)」なんかだと、原作ユーザーは10万人いるわけで、その層は恐らくは一度は見ることでしょう。しかしながら、イカ娘はそういう強い原作ユーザーが多い作品と並ぶ、あるいはそれらを超える勢いで侵略していってるわけです。それこそ、原作ユーザーってなんだったの?という感じで。
 そう言えば「けいおん!」だってアニメ化されるまではさほど知名度があったわけではないですし、京アニがアニメ化すると決まったことで原作人気も上がっていった感じがありました。今期アニメでも、「おとめ妖怪ざくろ」あたりは原作がそれほど知られているわけではありませんでしたし、「ヨスガノソラ」はまずまず人気はあったものの「FA」に比べると少ないはずですが話題性では上を行っていますよね。そうした、原作人気に頼らないアニメ化というのが最近の流行りなのかな?と思ってしまいます。

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 原作ユーザーの少ない作品のアニメ化のデメリットは、やはり知名度的なものや、どんな内容になろうともとりあえずは見てみよう的な、固定的な視聴者が期待できないことに尽きるでしょう。始まる前に話題にもならなければ、じゃあとりあえず1話だけ見てみよう、ともならない恐れがありますからね。ただ、そうしたデメリットを超えるんじゃないかというメリットもあるんじゃないかと最近考えています。
 メリットとしては、原作にはないオリジナル要素を入れやすいことや、原作ユーザーの声を圧力として感じる必要性がないことかもしれません。イカ娘5話のミニイカ娘のエピソードは、正直なところ原作では全く泣ける要素はありません。ただミニイカ娘を飼う方法とか寿命がどんなものかと説明するだけの回でした。それがああもアレンジされて素晴らしい物になっているわけです。原作に忠実なアニメ化であれば、ああはならなかったわけで。
 「けいおん!!」も一期は割と原作に忠実な感じでのアニメ化だったのが、二期は全く別物と言ってしまってもいいくらいのオリジナルな展開になってました。特に20話のライブ回とかは、原作はわずか3ページ分しかなく泣ける展開にはならなかったのにアニメでは……ですから。けいおんは原作のほうがいい、という人も多いのは確かですが、原作の雰囲気とは全く違うアニメ化が出来たのは、そこまで原作どおりの展開にこだわる人が多くなかったからでは無いでしょうか?
 なぜオリジナル要素や展開が良いかと言うのは、やはり「アニメ」だからです。原作に忠実なアニメ化というのも必要なのかもしれませんが、アニメ映えするような、アニメならではの演出や展開というのが、アニメ作品としての価値を高めると思っています。そのために原作を改変するのは、個人的には悪いことではないと思っていますが、原作ユーザーが多い、あるいは熱心な作品の場合はあまり歓迎されませんよね。原作に忠実なアニメは原作ユーザーたちだけのものになってしまい、アニメ作品単体で見てる人にはつまらない展開になってしまっているおそれも出てくるわけです。その点、原作ユーザーの少ない作品であれば、アニメ作品として面白くなる方向に味付けしやすいのかな?というのが僕の考えだったりします。
 なら「オリジナル最強じゃないの?」となりますが、そうも行かないと思います。やはり、ゼロから作るのと、一でもあるものから作るのでは必要なパワーがまるで違うはずだからです。それに、いくら人気がさほどない原作だからと言っても、アニメ化される際には原作の出版元はいくらか出資するでしょう。これがオリジナルだと何もないわけで。原作の出版元にしても、アニメ化されて上手く行けば、原作コミックスやノベル、関連商品が売れる可能性が出てくるわけですので悪い話では無いはずです。コミックスだけじゃなく、雑誌にも波及することも「けいおん!」で実感済みでしょうからね。オリジナルで、いざ人気が出てしまったときに何の準備もしていない作品だと、関連商品やコミカライズなどの受け皿的なものがありませんから。「Angel Beats!」などは、1クールのオリジナルアニメとしては非常に話題になったわけですが、コミックやゲームなどが無かったために、放送中の主な受け皿が音楽CDしかありませんでしたからね。その場合も、原作があればリスクなく受け皿となるわけですから。なので、オリジナルをやるよりは、原作ユーザーが少ないけどアニメ化すれば人気が出るorアニメ映えするような作品のアニメ化ってのが、これからのスタンダードになっていくのではないかと思うわけです。

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 ただし「原作ユーザー不要のアニメ化路線」というのは、アニメ化スタッフの方針や仕事ぶりが素晴らしい場合に限りますw いくらオリジナルを入れようが、それがマッチングしてなかったり、見ている方に良く映らなければその時点でアウトですからね……。それが上手く行った場合は、むしろ原作ユーザーが多い作品では起こらないような、凄い化学反応を起こすことがあるんじゃないかと思います。それが「けいおん!」でしたし、そうなりそうなのが「イカ娘」なんじゃないかと。その意味では二期もやって欲しいですね(本筋とは関係ない)。

↓ミニイカ娘が登場するBD3巻

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