同人ジャンルとしてのギャルゲーの終焉の日は近い?

 ここのところ、同人におけるギャルゲージャンルの低迷が顕著になってきました。一翼を担ってきたLeafはオリジナルタイトルがずっとヒットしてませんし、TYPE-MOONFate関連を除けば新作が出せていません。Augustはユーザーは多いものの同人ジャンルとしてはあまり人気が高まってきておらず+アニメ化がことごとく失敗していますし、Keyも「アニメ」としてAngel Beats!が同人人気してますが、ゲームとしてはリトルバスターズ!まで遡らなければならず、ギャルゲージャンル全体の低迷は明らかかと思います。アイドルマスターが割と頑張っている気がしますが、続編とアニメ化次第ではどうなるかわかりません。アニメ化したアマガミもさほど増えませんでしたし、どうも次の核みたいなジャンルが出来ず、原作の媒体としては衰退の一途を辿っているように見受けられます。
 そもそもギャルゲージャンルが男性向け同人での主役だったのは、それこそKanonTo Heartこみっくパーティーなどの葉鍵全盛期や、Fate月姫などTYPE-MOONが強かった頃などに限られるわけですが、そうした流れや爆発力が途切れてしまったようにも感じられるのはどうしてでしょうか?

  • ギャルゲー発売のスパンに同人活動のサイクルが合わなくなってきた

 Keyジャンルで同人活動を長らくやっていると慣れっこなんですが、寡作なメーカーになればなるほど、次の新作が発売されるまでに2年以上かかることがザラに出てきます。KeyもTYPE-MOONにしてもそうですが、プラスアルファ移植とかスピンオフ、別ジャンルの関連ゲームなどは出ているものの、完全新作となると1年や2年では利かない期間空いてしまいます。Leafなんかはそれなりに出ている気がしますが、売れるチームが製作していなかったり、実際にあまり面白くなかった(らしい)などで看板タイトル以外は着目されなかったりしています。
 同人作家さんが、そうした空白期間を待てなくなりつつあるんじゃないか? と少し感じています。実際にAIRからCLANNADが発売されるまでずっとKeyジャンルで活動していた人が、この期間に別ジャンルに移ってそのまま戻ってこなかった、という例はたくさんありました。ずっとそのジャンルで活動していても、だんだんと先細っていく需要を見ていると、他のジャンルに移ることも考えてしまうわけですし、ネタの枯渇やモチベーションの低下にも繋がります。それでギャルゲー以外のジャンルに目をつけてしまうと、ギャルゲーそのものから離れてしまうという流れもあるのではないかと思うわけです。

  • 同人誌の素材としてのギャルゲー需要の低下

 前項と被るんですが、そもそも同人をやるに当たって「ギャルゲーから何か書こう」という人が減ってきているのかなと。葉鍵全盛期の頃にも同人やってた身としてはあまり考えられないんですけど、今のギャルゲーって細かいルートやサブキャラ?って思うキャラまでカバーされているように思うんですよね。Keyでも、リトバスでサブキャラ扱いだった佐々美と佳奈多に、EXではシナリオが付きましたしバッドエンドも割と充実しています。つまり、公式で色々とやってくれてしまっているので、同人で何か補完しよう、という部分がかなり限られてしまっているような気がします。
 それ以外にも、同人の素材になり得るジャンルが出てきたことも挙げられるかもしれません。アニメや漫画はもちろんですが、ライトノベルが二次創作の素材として台頭してきたように思います。「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」はアニメ化で同人誌が一気に増えましたが、それ以前からこのジャンルで同人活動していたところも少なくないんですよね。個人的にラノベは、かつてのギャルゲーやエロゲからのノベライズブームからの流れも汲んでいると思っているので、そのままギャルゲーではなくラノベへと移行していった人も少なくなかったのかもしれませんね。
 ラブプラスのように、従来のギャルゲーとは違いストーリーの無い作品が台頭してきたこともあり、ますます同人の素材としてのギャルゲーの立ち位置がなくなりつつあると思ってます。

  • ギャルゲー自体の重厚化・難化

 FateCLANNADでほぼ極めた気がしますが、ギャルゲーのシナリオの長さや深さ、難しさが手軽さを失わせたんじゃないかとも考えています。とにかく長く、世界観やストーリーそのものが難解で考えることを放棄する人も出てきている気がしました。Keyはその後、リトルバスターズ!でややボリュームは下げましたが、その後のリトルバスターズ!エクスタシーで追加された3キャラのシナリオを合わせるとやはり膨大なボリュームになってますし、次回作のRewriteリトバスを遥かに上回る台本量だとこの前明らかになりましたので、この流れは止まってはいないようです。アマガミのように、多様な会話パターンやクリアするには関係の無いところまでイベントを用意しているような複雑なゲームもありますしね。
 この「時間がかかる」ことが、ギャルゲーの購入者=完全クリア者の等式を成り立たせなくなっている一因にもなっていますし、そもそも1シナリオで数時間かかるギャルゲーをプレイできる環境の人間が少なくなってきているようにも感じています。アニメであれば1話30分弱、1クール12話くらいでも5時間くらいで終わりますし、ラノベや漫画だと1冊30分〜1時間くらいのものでしょうしね。
 ギャルゲーのメーカー側としては、ボリュームを減らしてしまうとユーザーからの苦情も来るわけですから、下手に下げられない事情もあると思います。しかしそれが、「どんなに長くて難しくてもクリアする!」というユーザーと「長すぎて無理!」というユーザーとに分化させてしまっている気がしました。ストーリー自体の難しさも、手軽に同人したい・読みたい人たちにはもしかしたら障害になっているのかもしれません。

  • ギャルゲー人口そのものの減少

 そもそもギャルゲー人口は減っているのかどうか? 定かではありませんが、ギャルゲーメーカーさんの危機感の持ち方を見ていると、かなり減ってきているんじゃないかと思います。
 前項で書きましたが、長すぎるギャルゲーを避ける傾向が出てきていることもあるでしょうが、それをプレイ可能な層そのものが減少してきているような気がします。つまりは、エロゲの主要な購入層だと思われる学生の人口が、です。
 CLANNADFateのような時間のかかるギャルゲーは、社会人にはかなりキツイですよね。CLANNADでは声なしでも50時間くらい掛かりますし、最後のAfter Storyは単体で10時間以上掛かりますので、平日にやろうとするのは当然自殺行為です。それに見合っただけの面白さはあるのですが、そこに至るまでに挫折していく人を数多く観てきていますので、やはり諸刃の剣だと思います。
 また、いつの間にかアニメ大好き人間になってしまった自分ですが、アニメのBDを買ってるんですよね。これが月に2本重なると1万円以上が飛んでいくわけで、1クールアニメでも総額3万円以上費やすわけです。このアニメBDを買う人間が増えてきたことが、よりギャルゲー購入者を減らしている……のかもしれませんね。

 あまり関係ないかもしれませんが……。
 Key系ではそもそも女性サークルさんの比率がそれなりに高く、リトバス以降は目に見えて女性の参加者さんがサークル・一般ともに増えてきた感じがありました。それはTYPE-MOONでも同じ傾向だったんじゃないかと思います。ある程度以上のジャンルになるためには、男性ウケしかしないジャンルではなく、日本の全同人作家の多数を占める女性が目を向ける必要があるように思います。
 かつてだと、「悠久幻想曲」のような男女ともに楽しめる、ギャルゲーともBLゲーとも言えるような中間的なゲームも存在しましたが、女性向けゲームが少なかったことから、良いストーリーを楽しみたい女性がギャルゲーにも流れてきていたという実態がありました。現在ではギャルゲーを楽しむ女性もいますが、乙女ゲーやBLゲーがたくさん出てきているので、ここでも二分化してきているのかな? と思っています。
 かつてのBLゲーや乙女ゲーは、とりあえず男ばっかならいいんでしょ? 的な作品が多く、ストーリー的にはギャルゲーに遠く及ばないような作品が多かったと聴きましたが、ニトロプラスのような、ギャルゲーのシナリオにも定評があるようなメーカーが参入するようになり、シナリオが向上したようです。その他、ジャンルが成熟していくのとともにバラエティも豊かになったようで、女性がギャルゲーをやらなくても十分楽しめるものが出来てしまった、ような気がしています。現在人気な「薄桜鬼」はアニメ化後に急拡大したようなので、ゲームそのものからの同人人気とは違うのかも知れませんが、ギャルゲージャンルでアニメ化から同人人気が広がった作品はあまり無いので(CLANNADなども限定的だった)、人気が直接同人人気に繋がる女性層の力が大きいことを示しているように思いますし、乙女ゲーの素材が同人需要にも繋がるものだということも証明しているように感じます。
 ギャルゲーの長大化・難化傾向もあるのかもしれません。お手軽にキャラ・カップリング萌えしたいのであれば、有名なギャルゲーではなくBLゲーなどをやったほうがいいでしょうからね。

  • 東方プロジェクトへn流出

 鍵ジャンルで活動しているサークルさんのいくつかは東方へと流れています。これは、鍵ジャンルそのものの勢いが低下していることや、まだまだ拡大している東方ジャンルの強さもあるとは思いますが、原作者が定期的に新作を投入していることで、勢いが持続され、ジャンルとしても長きにわたってやっていけるという安心感があるからではないかと考えています。
 ギャルゲージャンルだと、最初の方で書いたとおり、いつ次の作品が出るのかがわからない心配もありますし、ゲームが出てしまえば、アニメ化でも無ければそれ以上の盛り上がる時も無く終わってしまうという寂しさがあります。これが東方だと、定期的な燃料投下がありますし、一般・サークル共に多少の入れ替わりはあれど、数としては大きく減る要素がないわけです。アニメとかだと1年続けるのでも結構キツい感じがありますが、2年3年と腰をすえて同じジャンルで活動したい人たちには、東方ジャンルはうってつけのように思います。

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 ギャルゲージャンルがピークだった頃の中心人物である麻枝准が、オリジナルアニメを製作して何故か女性ウケして同人人気(男同士のカップリング本とか)を得たり、ニトロプラス虚淵玄氏もオリジナルアニメの原作や脚本を書いてほぼ現段階でも成功が確実なのは、ある意味では喜ばしいのですが、皮肉でもありますよね。彼らの発想力やシナリオ、世界観は広く受け入れられるものなのに、それが彼らの元居たゲームではなくアニメという媒体なのが。まどか☆マギカの同人人気も出そうな感じがありますので、ますますギャルゲージャンルの重要性は失われていき、いずれ消滅してしまうのではないかと考えてしまうのです。

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