魔法少女まどか☆マギカ9話〜佐倉杏子が繋いだ絆

 まどか☆マギカ9話を観ました。終始息を飲む展開でしたし、儚くも美しい姿が描かれていたと思います。杏子いい子すぎでしたね……。4話の最後で「ぶっ潰しちゃえば……」って言ってた時から好きなキャラでした。。
 さて、今回は退場してしまうことになってしまった佐倉杏子について書いておきたいと思います。当初はメインキャラ扱いではなかったのか、蒼樹うめ先生のキャラデザは今のところ公開されていなかったり、OPでもワンカットしか映らなかったりと扱いは良くないのですが、9話は間違いなく彼女が主人公でしたし、当初はヒール的な魔法少女だったのが最終的には誰よりも正義のために戦っていた、という役割の変化の大きなキャラでもあったと思います。特に美樹さやかとの関係は、最初は殺すつもりだったところから、最後は救いたいとするところまで180度変わっていたわけですから、その劇的な変化は注目に価するでしょう。
 そんな杏子ですが、このまどか☆マギカにおける大切な役割を担っていたわけですが、それはどんなものだったんでしょうか?

  • 各キャラを繋いだ

 個人的にはここが一番大きいですね。初登場時には孤高の魔法少女、という印象とポジションだったはずなんですが、それがいつの間にか誰とでも話ができるキャラになっていたんですよね。
 例えば、さやかは最初は敵でしたが、さやかが魔法少女の仕組みを知って落ち込んだ時には自らが出向いて、自分の生い立ちや魔法少女になったキッカケなどを話し、諭すようにさやかの魔法少女としての生き方を変えさせようとしました。その後も杏子はさやかのことが気になるようになったらしく、ずっと追いかけることになるわけですが……。
 暁美ほむらについては、9話で言っていたようにあくまで「共同戦線」的な意味での繋がりだった、ようには見えました。これは、ほむらが自らの出自や謎を言わないからではあるのですが。それでもさやかのように強く警戒することはせず、むしろほむらの家に出向いたり、魔女化したさやかの結界から脱出するときには疑いながらも信用してみているんですよね。
 鹿目まどかに関しては、9話でようやく話をした程度の仲ではあるんですが、さやかの親友として信頼している感がありましたし、少し話をしただけで友好の証であるお菓子を渡してました。
 このように、とりあえず信用してみるというか、自分から手を差し出す印象が非常に強いのですが、他のキャラにはあまり無いことなんですよね。
 巴マミはまどかとさやかには友好的で、特にまどかには涙さえ見せるなど心を許していました。が、ほむらに対しては完全に敵意というか挑発行為に出るなど、敵味方をハッキリと区別していたようにも見えました。ほむらは自己主張を言うだけで、自分の理想通りに動く相手であれば共闘し、そうでなければ邪魔をするという割と利己主義的な面があるように思います。さやかはまず他人を疑ってかかりますからね。まどかは杏子に近いところがありますが、性格的に相手の心の中にまでは踏み込もうとはしないんですよね。なので、この誰の心の中にも踏み込んでいき、しかも自分もさらけ出せる杏子こそが、皆の心を開かせて繋ぎあわせたような気がしています。
 孤立を深めていたさやかに最後に手を差し伸べたのは杏子ですし、諦めかけていたまどかにさやかを想わせたり、これまた孤立していたはずのほむらも信用してまどかを任せたりと、潤滑油のような役割をしていたようにも感じました。

  • ほむらに背中でメッセージを伝えた

 ほむらと杏子は特別仲がいいわけではありませんが、ほむらがつるむのは杏子だけなので特別な存在であることは違いないでしょう。本来であれば、自身の利益以外には動かない性格を利用するためだけだったはずなんですが、杏子がさやかに執着するようになってやや離れてしまった感がありました。が、最後には互いに信頼しあっていたようにも見えました。
 しかしそれ以上に「自分を犠牲にしてでも」「守るべきものがいる」というこの2点がふたりには共通しているんですよね。ただ、ほむらがまどかに対してしていることといえば、基本的には「魔法少女にさせない」ことと「悲しませない」ことくらいですが、後者に関してはあまり上手くいってません。もちろん杏子も、さやかに「話を聞いて欲しい」のと「救いたい」ことで追っかけている感じではあるんですが上手くいっていない気がします。杏子の場合は単純に仲良くしたいっていう願望もあるんでしょうけどね。
 ただし、杏子はその生き様でほむらに語りかけたように思います。恐らくですが、キュゥべえがどう言おうとも杏子は魔女さやかに挑んだでしょう。そして同じ結果になったことでしょう。ただ、それは結果がどうこうという問題ではなく、そういう生き方を選択すること自体に意味があったように思いました。それは、例え相手が望まなくても、自らが正しいと思ったことを貫き通す姿勢であったり、地獄の果てまで想い人を追いかけていくことが、です。杏子ってさやかが振り向いてくれたことは8話の最後のシーンくらいのもので、あとは邪険にされてるんですよね。ほむらはそこでさやかを殺そうとするわけですが、杏子はどこまでも追いかけていったんですよね。
 ほむらは、まだ理由が明らかになってはいませんが、まどかのことを愛しています。その愛が故に、まどか個人が魔法少女になりやがて魔女になって破滅してしまうことを恐れているわけですが、少し甘いところがあるんですよね。まどかに多少ウザがられてもいいから、もっと側にいて守るべきじゃないかとか思うわけです。そして、まどかが「魔法少女にならなかった場合のリスクの大きさ」が実は高くて、ほむらはそこの葛藤とも戦っているのではないかとも考えています。そうした迷いを振り切らせるのが、杏子のさやかに対して見せた姿勢では無かったでしょうか。
 他人のために魔法少女になった(ほむらもそうだと考えています)ことを後悔しないどころか、最後は他人のために魔法を使い、散っていく生き方を、杏子は我が身を持ってほむらに伝えたようにも感じました。

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 まどか☆マギカのキャラに犬死というのは無いと思ってます。マミは魔法少女と人間としての正義を両立する姿勢がありましたし、さやかは自身の願望と魔法少女である葛藤を伝えましたしね。ただ杏子はそれ以上に大きなものを遺してくれたんじゃないかと思ってます。それだけに……二次創作で別の幸せな姿を願わずにはいられません……。

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