『輪るピングドラム』1話に観る、「ハリボテの虚飾」と表裏一体の「現実」

 今期急速に注目が集まってる感のあるオリジナルアニメ「輪るピングドラム」ですが、まあぶっちゃけよくわからないというのが正直な感想でした。ただこう、凄くわくわくしますし、何をやってくれるんだろう? そして何を裏切ってくれるんだろう? という不確定要素ばかりの期待が先行してる感もありますが、色遣いとか映像としての面白さは今期アニメの中でも一際存在感があると言っていいでしょう。
 さて今回はそんな「輪るピングドラム」1話を観てて気になった部分を取り上げてみたいと思います。どれが違和感でどれがまともなのかも正直全くわからないわけですが、そんな中でも凄く違和感に感じた部分があります。それは、虚飾が多いな、ということです。凄く鮮やかな色彩が魅力のこの作品ですが、その色がよりそんな部分を際立たせるような描き方になっているように感じるのです。
 まずは主人公達が住む家です。1話Aパート冒頭で外観が出てきますが、東京のど真ん中にしてめちゃくちゃボロ家になってます。周りのコンクリ造りの家やビルに囲まれての木造平屋建ての小さな家という強烈なギャップもありますが、目を引くのが鮮やかな色のトタン(?)で継ぎ接ぎされたような外壁でしょう。ただでさえボロい家にトタンの継ぎ接ぎですから更にボロいわけですが、そこに鮮やかな色を付けているんですよね。本当ならボロボロのところを、見た目だけ鮮やかにしている……。これはハリボテの虚飾と呼ぶにふさわしい描き方じゃないかと思っています。しかもそれを、道路に面した正面ではなく、公園と隣接してて塀もないオープンな側面でほどこしているあたりが面白いなあと思っています。
 表札の、両親のところをガムテープで貼ってるだけってのも面白いですね。剥がせる状態ということは、戻ってくることを100%諦めたわけじゃないということになり、それはある意味「死を受け入れられていない」ことも示しているような気がするのです。自分たちがまだ自立していない子どもであることや、自分たちだけでは家族というものを確立することが出来ないというあたりを示しているのではないかと考えています。
 部屋の内装も奇抜というか鮮やかに飾ってますよね。これも外壁の継ぎ接ぎに近いものがあるように思います。あの外観にして中も純和風というか古ぼけた昔の家でしかなく、そこをクッションやらおもちゃ、飾り付けなどで無理やりポップな世界にしている感じがすごくします。破れたふすまにレースの飾りとかもものすごくハリボテ感がありますよね。
 兄の冠葉が虚飾そのものな気がしています。Aパートの回想シーンで医者に食って掛かる場面がありますが、「お金ならいくらでも出す」とかっていうあたりがなかなか真実味がなく場当たり的なセリフに聞こえてしまいます。あのボロ家が手放せないのは思い出が染み付いているからこそだとは思いますが、学生でもある彼らにお金などどのくらいあるのでしょうか。あの装飾や小物類などから貧困に喘いでるというわけではなさそうですが、少なくとも特売のキャベツを探したり1万円のぬいぐるみを躊躇うくらいの世帯である以上、海外で手術を受けさせるほどのお金なんて無いと考えるのが適当ではないでしょうか? なので「お金なんて……」というのは非常に場当たり的な発言のように聴こえます。
 他にも矛盾はたくさんあります。例えば朝食。ご飯は弟の晶馬が専門で作ってて、兄の冠葉は特に何もしていません(陽毬が生き返って以降には風呂掃除とゴミ出しを命じられてますが)。なのに妹の陽毬には自分の手柄みたいなことを自慢気に話したりしています。また、陽毬がいったん死んでしまった後におじさんに連絡すると言ったり、「事実をありのままに受け止めているだけだ」とか言ってますが、あの表札のガムテープから想像するに両親の死を受け入れられていないこの兄弟が大切なはずの妹の死をあっさりと受け入れられるはずがありません。どうもこの冠葉はええ格好したいだけのキャラに思えてしまいます。最後に眠る陽毬にキスをする場面とも繋がってきませんからね。彼の思考や行動などは今後の展開に大きく影響してくるでしょうし、そんな冠葉のハリボテが壊れるような展開になるのか、あるいは虚飾しすぎて本来の自分を失ってしまうような展開になるのかを考えるとどちらでも面白くなりそうですね。
 それからすると、晶馬は凄く素直なキャラですよね。家計をやりくりしたり、食事を美味しく作ろうとしたり、冠葉の女癖の悪さに溜息ついたりと普通のキャラです。ペンギンについても、受け入れられている冠葉と違いなかなか売れ入れられていないあたりも普通っぽさが強調させている気がします。この兄弟の裏表的な部分も、虚飾(冠葉)と現実(晶馬)の対比と表裏一体のものであることを示しているのであれば本当に面白いですね。

 ペンギンが高倉家の人間以外に見えていないあたりとか、個人的にはまず冠葉の虚飾がどうなっていくのかがポイントになっていくのかなーと感じています。まあそれ以外にも2クールありますし色々ありそうですが、色んな楽しみ方が出来そうな作品になる予感だけはしています。これから楽しみですね。


Web拍手送信