迷走する夏のMBSオリジナルアニメ勢(輪るピングドラム・BLOOD-C・セイクリッドセブン)は何処へ行くのか

 MBSこと、関西のTBS系かつアニメ制作の雄でもある毎日放送制作の夏のオリジナルアニメが迷走しています。MBS制作のオリジナルアニメといえば、スタドラなどの腐向けアニメ、Angel Beats!魔法少女まどか☆マギカなどの業界を揺るがした(AB!の場合は関連CDの売上が異常だったという意味でも)作品を多く輩出しているわけで、現在も放送中の「TIGER&BUNNY」もBD/DVDセールス的には大ヒットと言っていいレベルです。しかしながら今期(夏…7月放送開始)アニメの動向が芳しくないからか、各陣営とも非常にブレた戦略を取り始めています。
 輪るピングドラムBLOOD-Cは、TBS限定で5〜7話を深夜帯に枠を作って3日連続で再放送するという試みをしたようです。そしてピンドラはBD/DVD発売まで1ヶ月を切ろうかというタイミングでの発売延期→特典内容を変更してより充実させました。
 セイクリッドセブンに関しては、バンダイチャンネルを使っての振り返り配信を2度ほど行っていて、よりテコ入れを図っていることがわかるのですが、それだけではなく、制作局だった関西のMBSではなく、6日遅れだったTOKYO MXで深夜にもう1話放送して最速放送局を変更してしまうということまでやってしまいました。最速放送局が放送途中で変更されることはこれまでもなくはなかったのですが、大抵は放送局の編成上の都合で、今回のような制作側の戦略的な最速放送局変更はあまり聴いたことがありません。ではなぜ、ここまでMBS制作のオリジナルアニメがテコ入れを図っているのでしょうか?
 もちろん、それはBD/DVDの予約状況が芳しくないからに尽きると思います。輪るピングドラムは一時amazonのアニメBD/DVDランキングの上位に立ちましたがその後ランキング的には失速して、現在はアニメ限定のランキングで40〜70位くらいをウロウロしています。セイクリッドセブンは更に低く、最高位でアニメ60位くらい、しばらくは100位圏外も続いていたのでなかなか厳しい状態じゃないかと思います。BLOOD-Cに至っては浮上する気配すらないのでもはや数字が出るかどうかの状態ではないでしょうか。という具合に、それぞれの陣営共にそれなりに厳しい状態であることが伺えると思います。あくまでもamazonでのランキング推移だけを観てのものではありますが、ピングドラムを除いてはさほどamazon以外での売上も期待できない感じの作品と特典展開ですので、amazonでのランキングがそのまま売上にも反映されるのではないかと思います。
ピングドラムの法人別特典と商品仕様
http://penguindrum.jp/category/news/p-products/
 輪るピングドラムの場合、恐らくは5000本くらいの売上は現段階でも期待できるような推移ではあります。ですが、一時amazonランキングで2位くらいまで上り詰め、ほぼ今期はこれで決まりだとまで言われた作品の割にはその後の順位の落ち方が酷いです。BD/DVD発売延期は内容の不備や特典の充実だけではなく、更に1ヶ月観てもらえればもう少し買おうとする人が増えるのではないかと考えているのと、あとはアニメBD/DVDを買う人の傾向も考えているのではないかと思うのです。
 アニメBD/DVDを買うときって、自分が好きな話数の巻だけを買ったりオリジナル回だけを買うという人もいるかと思いますが、これまでに発売されて来たほかの作品の傾向からしてそれは少数だと思います。やはり、1巻を買うかどうか。1巻の発売時に購入を見送ったような作品は、なかなか後追いで買う人が続出するわけではないでしょう。タイバニやシュタゲは1巻発売後の盛り上がりから、未だに初期の巻が売れ続けているとはいえ2倍とかにはなっていないわけです(タイバニは1巻限定版の生産数を絞ったことで数字が小さくなってしまった。2巻以降は安定)。ピングドラムが後半型だとしてもそこまで派手に売れる展開を持ってくるような作品ではないでしょうから、やはり1巻の数字を重要視しているのだと思います。
 とはいえ、特典充実させて少しは浮上したとはいえ、ピングドラムでさえ厳しい状態であることには変わらないようです。発売が10月に延びることで発売までにたくさんの話数を見せることは出来ましたが、生産数を決めなければならない発売1ヶ月前を目前にしてもさほど巻き返せていないのです。また延期したことで、10月から始まる新しいアニメとも比較されるようになってしまいます。発売1ヶ月前までに予約するような人ばかりではなく直前にポチる人の割合もそれなりにあることを考えると、ピンドラの直前に放送されるP4や、UN-GOのようなオリジナルアニメ勢に晒されるのはかなり不利な気がします。
 セイクリッドセブンの最速放送局変更も、効果があったのかどうかはよくわかりません。Twitterでフォロワーさんを観る限り、かなり直前で放送変更が告知されたせいで、深夜に回ったほうの話数を録り逃したという話をいくつか聴いています。MBSとしても、最速でなくなることで下がる視聴率よりもBD/DVDが売れたほうがいいに決まってるので最速でなくなる提案を受け入れたのだろうとは思うのですが、今まで一番遅かったMXでのこの前の最速放送時に実況してる人が増えてたので、まあ意味はあったのかなとは思います。ただこう、最速でなくなった地域の身からすれば複雑です。
セイクリッドセブン公式HP
http://www.sacred7.jp/
■監督の大橋誉志光さんのツイート
http://twitter.com/#!/yoohmish/status/108556090194669568
 いずれも非常に小手先の手段ですし、大きく売れるようになるための仕掛けとは思えません。実際にさほど動いていませんし、セイクリの最速放送局変更は最速でなくなる地域の切り捨てにも思えてしまいます。ピンドラの発売日延期については、もともと買おうと思ってた人には特典の充実でプラスになるのかもしれませんが、新規で買う人を増やす集団としては一長一短かなと思います。
 どちらにしても、作品の内容そのものの問題という気もするんですよね。購入しようと思うかどうかは。特典充実させるのも、買おうかどうか迷ってる層に対しては有効でも、そもそも買うなんて考えてないような層には効果はないでしょうし。なので、放送が始まってからの路線変更は、フットワークの軽さは感じたりもしますけど、陣営の焦りとかが見えてしまいますね。
 そしてあまり動きのないBLOOD-C陣営は逆に「どうなってるんだ?」ともなりますが。BD1巻が安いわけでもなく、イベント券が入ってるわけでもなく、ここ数回が底なしに面白いわけでもなく、ジャケ絵もさほど惹かれるようなデザインでもないとなると……。もはや見捨てられたように感じてしまいます。

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 オリジナルアニメは、原作がアニメですから本が売れるかどうかよりもアニメBD/DVDが売れてくれないとどうしようもないという事情もあるとは思いますが、こういう動きは微妙です。制作側主導の動きだったセイクリッドセブンみたいなパターンが出てくると、視聴者側も身構えるようになってしまわないかと心配です。

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