僕らの放課後ティータイムはスクリーンでも放課後だった〜劇場版けいおん!感想

 公開初日にさっそく行って来ました。感想は一言「よかったあ」でした。まさに記事タイトルのように、僕らの知ってる、僕らが好きで好きでたまらなかった放課後ティータイムのみんながスクリーンでも通常運転だったな、とそれしかありませんでした。
 絶賛の前に気になった点をいくつか先に挙げておきます。
 一番気になったのが、尺の使い方と1時間半くらいになったことによる話の切り方や繋げ方、テンポ自体ですが、この辺はあまり良くなかったかなと思いました。よくある子ども向けアニメの劇場版みたく、日常回的なものと非日常的なものとをドッキングさせるやり方ですが、特に日常回的な前半部分は、テレビシリーズなら1話30分弱、1話の中でもAパートとBパートの単位でそれぞれ一旦区切りのある作りになりますが、劇場版ではそうした区切りがない。そのために、ややだらだらとした印象が前半部分は強かったように感じました。まあ、テレビシリーズの振り返りや、和や憂に純、そして唯のクラスメイトたちにオカ研のふたりなど、本編に出てきたキャラをほぼ登場させてしまう作りだったことを考えると、どうしても間延びしたような感じになってしまうのだろうとは思いますけどね。テレビシリーズなら数話分のエピソードをごちゃ混ぜにしてやるような感じに見えました。
 これも序盤で気になったことなのですが、開始当初にキャラクターたちの声とか効果音に違和感があったことですね。「あれ? 声変わった?」くらいに感じましたし、どんな物音にもいちいちSEが入るのに少し変な感じがしました。とはいえ、この部分も話が進んでいく中でどんどん気にならなくなって、馴染んできたのですけども。この辺は劇場版仕様にするために仕方のない部分だったんでしょうね。音響の凄い劇場だと全然迫力が違うという話も聴いているので、複数の劇場で観て聴いて確かめてみるのも面白いのかもしれません。


 そんなことはともかくとして、非常に堪能させて頂きました。その中でも、個人的に凄くスタッフさんいい仕事した!と思える部分を挙げたいと思います。

  • 姫子ちゃん!

 一部の方には凄く納得していただけると思いますが、2期から加わった原作では未登場?で、唯の隣の席にいるヤンキー風の女の子が姫子ちゃんこと立花姫子です。まあまさか劇場版でセリフがあるとは思えなかったのでそれだけでも嬉しいのですが、またそのセリフや行動がいちいち良かったですよね。詳しくは覚えてませんが、登校日に唯と会えることを嬉しいと言ってみたり、ライブの時には後ろの方で観ていたのを前に出してもらって喜んでいたりと、この2シーンくらいしか登場はしてないのですが、隣にいる平沢唯という女の子が気になってしようがない、気づくと平沢唯という女の子を追っている、眩しく輝いている平沢唯という女の子が隣にいて幸せ、という感じの妄想をしている唯×姫子好きな自分のような人間にとっては最高にご褒美でした。同人誌でも少数ながら見かけるマニアックなカップリングではありますが(唯×ムギあたりよりはメジャー?)、それをしっかり公式がやってくれるのはさすがとしか言いようがありません。妄想でも何でもなく、姫子ちゃんは唯のことが大好きなんですよ。ただ、軽音部メンバーの結束は固いしそこに割って入ろうとも唯とこれ以上仲良くなろうとも思っていない。少し離れた距離で、でも唯の一番近くにいられる幸せを感じているのが姫子ちゃんなのです。というか、山田監督なのか吉田玲子さんなのかはわかりませんが、やっぱりちゃんとそういうシチュで描かれていたんだなあと思いました。たぶんアニメスタッフさんたちであれば、姫子ちゃん視点で余裕で1話作れると勝手に思ってますw それは妄想ですが、さすがだなあとしか思えませんでした。
 姫子ちゃんに限らず、他のクラスメイトたちや軽音部との関係性なんかも本編以上に描いていたように感じました。愛されてるなあと伝わって来ましたよね。

 あずにゃんは唯にほとんど触れさせてませんでしたけど、それでも飛行機の中とかではしっかりくっついてたりとかホテルは同室だったりとかで、しっかり公式での「ゆいあず(唯梓)」アピールもしていたように思いました。そういや梓がノーマルであるというアピールをしていましたが、唯はどうなんでしょうね……? 唯は梓という個体が好きなのであって、性別の好きのレベルをたぶん超越しちゃってるところにあるんだろうなあと思うと、梓は大変だなあとも思うわけですがそれはさておき。
 律が「部長」という肩書きを意識しなくても良くなったからかわかりませんが、律と唯のレベルが同じくらいで、英語力の低さやボケの息が凄く合ってたのも面白かったです。2期では部長であることを意識するあまり、唯に同調してボケるよりも諫めることのほうが多かった気がするのですが、こうやって唯と同レベルでボケて調子に乗って、というのはより原作に近いノリでもありますよね。
 個人的には、ムギがさり気なくおいしい思いをしていたのは見逃せませんでしたけども。唯にも梓にも身体を預けて寝られてましたから。ムギの持つ安心感みたいなものを描きたかったのかなあと思いましたが。
 律と澪の相変わらずの夫婦っぷりもありましたが、全体的にベタベタしてるシーンが多かった気がします。最後のライブ後(最後の登校日ではなく)のピークにあるタイミングでの旅行だっただけに必然かなあとも思いました。

  • 相変わらずの軽音部メンバーたち

 序盤では梓が「私がしっかりしないと」って気を張り、イギリスに入国後も序盤は頑張ってましたが、律や唯の暴走は止められないし、そこまで前に出てくるわけでもないのでだんだんとペースをコントロールできなくなるあたりはそのまんまでしたね。
 梓の代わりに頼りになったのは澪でしたね。割と高いリスニング力と、梓ほどではないにしてもちゃんと下調べしてきた知識とで非常に頼もしく見えました。彼女の場合、人見知りしたりするあたりがネックなわけですが、それもずいぶんと克服してきたみたいですね。自立も近い……? いや、これは単に頼りにはならないけど安心できる仲間に囲まれているからこその度胸なんでしょうね。
 案外役に立たなかったのは圧倒的にムギでしょう。海外渡航経験は豊富ですし、知識もあるでしょうし英語くらい出来るんじゃないかと思うわけですが、そういう肝心な場面では決して前に出てくることはなく、むしろハプニング的なイベント発生を心待ちにしている感すらありました。唯の暴走についても、全く止める気はなくむしろその暴走やボケに全力で乗っかる姿は2期のまんまでしたね。その一方で、他の4人が自分の楽器を持ってきた(律はスティックだけ?)のにムギだけが持って来なかったあたりのズレ方とかもしっかり描かれていてムギ好きとしては満足行きました。まあスタッフさん人気が高い証拠でもありますけどね。
 それにしても、唯と律の役立たなさというか放って置くと大変なことになる感じは、外国に行くことで更に際立ってましたね……w 軽音部の部室では危なっかしいとは思わないのに。

  • 勝手に動いているかのようなキャラクターたち

 テレビシリーズの2期でもそう感じましたが、この劇場版ではより軽音部メンバーたちが自由に動き回っていたなあという印象を強く持ちました。それこそ山田監督も吉田玲子さんも、彼女たちに「イギリス旅行」というイベントや、突如のライブという「イベント」、そして夜にはホテルに戻るという大まかなスケジュールだけを与えているだけのようなイメージでした。あとはそのイベントに遭遇した時にどう動くかと、どんなことを誰が喋るのかを頭の中でキャラを動かしてみて出てきたセリフや行動をフィードバックしてるような感じではないかと思います。その際のセリフもきっちり描かれているわけではなく、声優さんたちのアドリブもかなり入っているのではないかと思うくらいに、無駄がないとは言い難い掛け合いだったり行動でしたよね。でも、それがけいおん!の持ち味だとも思ってます。必要最低限なセリフとか合理的な行動とか、そういうのは求められていないと思うんですよね。良い意味での緩さ。そういうものが劇場版でもしっかり描かれていたように思いますし、だからこそ生きているかのような温もりすら感じられるのではないかと思うわけです。イギリスにいながらもちゃんと軽音部してます、とは山田監督か吉田玲子さんのインタビューでありましたが、まさに平常運行でしたね。

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 語ればまだまだたくさんありますが、とりあえず個人的に面白かったのはこの辺でした。まだ1度しか観てないので十分に堪能したとは言い切れない部分が多いのでまた観に行きますが、何度か観ても全然楽しめそうな、非常に内容も濃い作品にはなったのではないかと思います。
 これで京アニによる「けいおん!」シリーズは一旦終了になってしまうと思うと寂しいのですが、これまでのシリーズや劇場版のBDなども発売されるでしょうから、最後までしゃぶりつくしたいと思います。

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