Angel Beats!を出発点として観る「戦姫絶唱シンフォギア」
2012年の最初のクールが始まりました。ここまでで大体のアニメの放送がスタートしたわけですが、オリジナルあり原作ものありとなかなかバラエティに富んだラインナップの中、異彩を放っているのが「戦姫絶唱シンフォギア」ではないでしょうか。
1話からかなりぶっ飛んだ内容になってましたけど、この作品は放送前からElements Gardenの上松範康氏がシナリオも手がけるということでも話題になりました。上松氏はもちろん作詞作曲家ではありますが、シナリオ執筆に関しては全くの素人ということでどうなるか……という注目もされていましたが、さすがに常識かかっていない感じがありましたよね。
この作品はアニプレックスとキングレコードがタッグを組んで企画されたようなのですが、上松氏を音楽限定ではなくシナリオの根幹部分にまで関わらせるように仕向けたのは企画意図からも明らかで、そこには何か明確な狙いが感じられるとともに、何か前例でもあったのかと考えてみたくなります。そこで今回は、シンフォギアという作品がどういう流れや意図から生まれたものかを考えて、加えて狙いや勝算がどの辺にあるのかも考えてみたいと思います。
- Angel Beats!からの非アニメ専業ライターによるアニメ化の流れ
アニプレックスといえば昨年の魔法少女まどか☆マギカの前に、Angel Beats!という作品がありました。麻枝准氏によるアニメで、ストーリー的には色々と言われましたが商業的には非常に成功した作品だったのは間違いないでしょう。このAngel Beats!という企画は当時ではかなり無謀というか無茶だと言われていたわけですが、その理由の一つが「アニメ素人の人間による全話脚本」という部分だったかと思います。
今でこそアニメ業界以外からの転身組も増えましたが、それでも初めてのアニメでいきなり全話脚本というのはかなり無謀だったと思いますが、まあともあれAngel Beats!はかなりのブームを引き起こして成功したわけです。その流れにアニプレックスが載らないわけには行かないだろう、というのが一つの流れです。魔法少女まどか☆マギカは……以前からあった企画のようですが、アイドルマスターの再アニメ化はキャラデザ・アニメーターでアニメの監督はこれが初の錦織敦史氏だったりと、脚本畑以外からの起用もされているような気がします。アイマスが成功しているかどうかはわかりませんが、その流れの一つが、作曲家である上松氏の原案によるアニメを作ることだったように感じます。そしてシリーズ構成・脚本もアニメ素人の金子彰史氏なんですからかなり思い切った企画だと思いますが、こういう企画が通るのは、Angel Beats!という企画が成功したからと言っても言い過ぎではないかと思います。
- Angel Beats!からの音楽アニメの流れ
Angel Beats!といえば、シナリオは色々と言われていますが、音楽に関しては昨年のどのアニメの音楽CDの売り上げをも遥かに上回る凄いセールスを挙げたことは記憶に新しいのではないでしょうか? 昨年大ヒットしたまどか☆マギカの主題歌「コネクト」と劇中歌CDの3作が同じような売り上げだったと書くとその凄さがわかると思います。主題歌だった「My Soul,Your Beats!/Brave Song」は日本レコード協会のゴールド認定をされており、累計では30万枚を達成したことにもなります。10万枚売り上げるのも至難の業なのに30万枚は、今のアニソンというか音楽業界でもなかなか難しいことだろうと思います(AKBとかジャニーズとか除く)。
売り上げだけではなく楽曲そのものの評価も高く、サントラも年末に出た劇中バンド「ガルデモ」によるシングルも数万枚売り上げるなどその人気は維持されたままプロジェクト自体は終了しました。劇中歌もそうですが主題歌も、それほど流れてはいないんですよね。主題歌飛ばしは終盤に行くにつれて多くなってましたし、劇中歌CDも最初の方は割と流していたのに最後は練習で音出ししてただけの曲がシングルとして出たりという具合でしたが。
個人的に凄くポイントだと思うのが、物語と音楽を同じ人が作り出していた、という部分なのではないかと考えています。Angel Beats!は世界観設定から全話脚本まで麻枝氏が手がけていたわけですが、同時にそれを彩る主題歌も劇中歌も手がけていたわけです。Angel Beats!の音楽が評価されているのは、物語と歌とが非常に近い距離というか一緒になっているところだったのではないでしょうか。普通のアニメだと、シナリオと音楽は当然分業化されているわけです。シナリオにも音楽にもそれぞれ専門家がいるわけですからね。それに、普通のシナリオライターでは音楽制作など出来ませんし(やれて歌詞くらい)、逆に作曲家がシナリオを書くというのもあまりありません。麻枝氏はライターが本業で音楽はサブ……というわけでもないのですがアニメやる前から既に両立させていたかなり珍しいクリエイターと言えるでしょう。
アニプレックスとしても、物語と音楽を同じ人でやるアニメを作りたいという願望があったのかもしれない、と考えています。ただ麻枝氏のようなクリエイターは恐らくいないでしょうし、シナリオライターがいきなり音楽始めても聴くほうが納得するようなものが出来るとは思えません。だとしたら、作曲家がシナリオを書くというのは……となったのではないでしょうか? wikiを観てると上松氏自身が音楽と物語が一体となったようなアニメを作りたいとか考えていたようなので、その辺の思惑が合致してのアニメ化だったのかもしれないと思ってます。シナリオであれば、面白いアイデアさえあれば素人でも何とかなる、なんて思いが少しでもあったとするともにょっとしますけども。
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シンフォギアが今後どうなるかはわかりません。1話からいきなり主人公らしき子が死んだところから始まったりしてますし、今後は落ち着いていくのか、まだまだハチャメチャな展開で進んでいくのかはわかりませんし、歌と物語が一体となってよりよい作品に昇華できるかどうかも未知数です。楽曲はとにかく凄い上松氏なので(うたプリで散々聴きましたw)、悠木碧さんや水樹奈々さんらの歌声と演技によって何か別なものが生まれれば、Angel Beats!を超える化学反応も生まれるのかもしれません。本音は、期待半分不安半分ですが。