Go!プリンセスプリキュア、天ノ川きららのモデル設定の妥当性とそこから見える想定視聴者

 今年も新しいプリキュアとして「Go!プリンセスプリキュア」(以下プリプリ)が始まりました。これまでのプリキュアシリーズでも評価の高い話数を担当していた田中裕太さんがシリーズディレクター(普通のアニメでいうところの監督?)で、田中仁さんがシリーズ構成を担当するということで期待していましたが、ここまでなかなかの力の入りようで凄く楽しませてもらってます。キャラデザも非常に良いですし、凄く華やかな感じがして、これから我々おっさん勢だけでなくお子さんにもウケるんじゃないかと思わせてくれるくらいです。
 さて今回は、タイトルの通り天ノ川きららのモデル設定についてです。最新話でモデルやってることが明らかになったわけですが、何故モデルなのかというところにまず疑問が行くかと思います。というか女の子が憧れる職業と言ったらアイドルとかなわけですから普通はアイドルやってる設定にすれば良いわけです。まあアイドルやってたプリキュアは過去にもいたわけですが……。でもまあ、ピンポイントに現役モデルを持ってきたわけで、そこに凄く意図的なものを感じるのです。今回はそんなモデル設定について考えてみたいと思います。

  • 母親層にも子どもにも身近に感じやすい設定

 モデルというのが身近に感じやすいと考えています。まず母親層ですが、ファッション誌などを読んでいたりする人はかなりいそうですし、若かりし頃にそういう存在に憧れたりした経験を持つことも多いのではないかと思います(まだ十二分に若いお母さんもたくさんいるでしょうけど)。そういった層に、天ノ川きららのトップモデルを目指しているという設定は非常にわかりやすいものなのではないかと考えています。
 また、最近では現役モデルやモデル出身のタレントさんの活躍が目立つことも挙げられるかもしれません。トップモデルの冨永愛さんなんかもトーク番組でよく見かけますし、「いきなり!黄金伝説。 芸能人サバイバル大賞」なんかでも持ち前の豪快さでやり遂げるSHELLYとかがよく出てますし、他のモデル出身のタレントとして過去には土屋アンナあたりも出ていたりとかテレビでの露出はかなり多いと思います。
 子ども層への影響力や認知度も無視できません。前述のサバイバル大賞でも特に人気なのが、よゐこ濱口優ですが、「とったどー」は子どもにもかなり認知されています。よって彼が色んな番組で呼ばれることとなっているわけですが、それが呼び水になっているのか、あるいは番組の評判自体が良いのかわかりませんが、幅広い年齢層の視聴者が観る番組にもなっています。ファミリー向け番組ということなのですが、親と一緒に子どもも観ているようなんですよね。そこに出てくる大人の女性が、芸人でなければ多くの確率でモデル出身のタレントさんなわけで、モデルという職業が子どもにも何となく身近に感じられるのではないかと思うわけです。この番組だけでなく他のバラエティ番組にも頻繁に出演していることから、子どもにもモデルという職業が認知されやすいのではないかという見方も出来るかと思います。
 そんな観点からも、モデル設定のプリキュアを登場させた意味や意義が非常に理解できると思うわけです。

  • アイドルではなくモデル設定なのは?

 でもまあ、何となく「わかりやすい」アイドル設定ではなく若干「わかりにくい」モデル設定な理由の決め手には欠けるかもしれません。ですが、アイドル設定と比較するとモデル設定はわかりやすいのではないかと考えています。というのも、現在におけるアイドルという存在の認識がターゲット層でもあるお母さん世代にはどうなっているのかが曖昧になっているのではないか、というのがあります。というのも、現時点でアイドルといえばAKB48とか関連するグループ、あるいはモーニング娘。などですが、いずれもグループ単位なんですよね。リアルアイドルだけでなくアニメのアイドルものに目を向けても、ソロで活躍するアイドルを描いているアニメやアイドルキャラというと稀な存在になってしまっています。なので思い浮かぶアイドル像といえばグループやユニットものだと思うのですよね。となると、プリキュアでそうした流行りのアイドル像を落とし込んだキャラを描こうとしたら、プリキュア全員でアイドルユニットとなる、あるいはアイドルユニットに属するキャラをプリキュアとして描く、という感じになると思いますが、そうなると前者だとももクロみたいな感じになるのかなあと思いますし、後者だとメインで動かしにくくなるので難しいのかなと思います。
 それとモデル設定を比較すると、ソロで目立たせるのが容易だと感じるのが一番大きいかなと思います。モデルはあくまでも自身の魅力と技量がすべての世界でしょうし、単独で輝いていればそれが至高なわけです。そういうキャラクターを1人プリキュアにするのは非常にわかりやすいですし、キメ顔なんかも入れやすいのではないかとも思うわけです。
 アイドル設定だとグループ単位になるのもそうですが、ユニットの構成員的な立ち位置を要求されることが多いのが最近の傾向なのかなあとも思います。いわゆるグループの部品として、あるいはあくまでもユニットの完成度を高めるための存在……となると、1人輝いているのは思い浮かべられるリアルなアイドルとは齟齬が生じるのではないかとも感じます。
 そうした点でも、モデル設定だとその辺の問題が起きにくいという点でも、単独で目立つ職業だという意味でも、あるいは中学生で目指す職業という意味でも割と妥当性があるのかなあと思っています。


キュアトゥインクルの変身シーン。そのシーンの多くのポーズでキメ顔してます。

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 直接この件とは関係ないのですが、主人公が習うバレエは今でもお子さんに習わせる習い事として人気が高いですし、母親層にも馴染み深いものでもありますよね。こうした点も含め、出来るだけ想定視聴者である幼女の母親層へもより興味を持ってもらえやすい作りを目指しているのではないか、と考えています。他にも、女子生徒同士でルームメイトがいる設定(寄宿舎?)にも関わらず女子しかいないわけではなく共学だったりするのも、女子校的なものがどんどん無くなっている今っぽい感覚で描いていて受け入れてもらいやすい方向性を目指しているのがわかるかと思います。
 きららさんのモデルとしてのステップアップが描かれるのか、芸能界デビューしたりする展開があるのかはわかりませんが、今後もわかりやすい設定が出てくるのか注目して観たいと思います。