涼元悠一氏がKeyを去ったのは正解だったのか?!

 Wikiを眺めていたんですが、涼元悠一氏がアクアプラスLeaf)に移籍してたんですね…。全然知らなかったです。ただ、移籍後一年以上経っているのに、まだシナリオ担当として作品は発表してないですよね? ライトノベル作家としては何か出しているみたいなのですが。

 さて、改めて涼元さんがKeyから去って、Keyには都乃河さん一人しかライターがいなくなったわけですが、涼元さんがKey退社時に言っていた「Keyをクビになりました」が本当だとすると、Key・あるいはVA馬場社長がKeyから外す事を決断したわけで、それが現状、正解だったかどうなのか? Keyにおける涼元さんシナリオを振り返りながら考えて見ましょう。

 そもそも、あまりサンプルがありません。AIRではシナリオアシスタントをしていたそうですが、過去編(Summer編)を担当していたとかどうとかっていう未確認情報があります。もしそうだとしたら、すごく納得なんですけどね。起承転結はしっかりしているし、単体でも十分読み応えがありましたし。そして何より、登場人物が非常に生き生きと描かれていたり、笑いも泣きも含まれていたり。個人的には、AIRにはSUMMER編が無ければ、物凄く評価を下げていたと思うんで、あのシナリオを書いていたとしたら、涼元さんスゲー、って思います。
 CLANNADでは、ことみシナリオを担当していたことはご存知のとおりです。京アニ版ではかなりのハイスピードで飛ばされてますが…。ただ、オリジナル版の完成度は高く、さらに思ったのは、他人が作ったキャラを、サブキャラとしてあれだけ上手くシナリオに絡ませて、シナリオにふくらみを持たせたあたりの手法は見事としか言いようがありませんでした。
 そしてplanetarianですが、これはまんま小説でしたよね。この小説を、すずきけいこさんの声や絵、音楽で彩った感じで。小説としては非常に出来が良かったですし、さすがに読ませる内容だったと思います。

 ただ、色々と問題も。
 まず、Keyでは、一つのゲームで2キャラ以上を担当することはありませんでした。CLANNADでは、麻枝さんと並ぶメインライターとして、ことみの他に、美佐枝さんとかゆきねえとかも担当するはずだったのに、結局それらを放棄したという前例があったり。
 planetarianでも、結局は一つのシナリオ、エンディングしか描いていないわけで。つまり、何人かのヒロインのシナリオを描くには、まだ涼元さんの技量とかってのは未知数なんじゃないかって思うわけですよ。
 ギャルゲーのシナリオを書く際には、同じ世界観をベースにした数キャラのシナリオを書かないといけないのですが、涼元さんにはその能力があるのかどうか? CLANNADで見せた遅筆ぶりというか、1キャラに集中しすぎたところが、その辺に大いに疑問を抱かせるのです。ギャルゲのシナリオで、1キャラしか描けないのだとすれば、それは外注さんとあまり変わらないわけで。
 もちろん、涼元さんのシナリオのクオリティはかなり高いわけですけれど、やはり、そのゲームの大本となるシナリオがしっかりしていて、それをサブキャラのシナリオで固めていく、みたいなシナリオが理想でしょうから、世界観の構築やメインシナリオのクオリティを追求するだけじゃなく、サブキャラのシナリオも描けなければ、ライターとしては失格とも言えるわけで。
 その辺で思ったのは「小説家という肩書き(出身畑)の足かせ」です。小説家って、一つの世界観を構築すれば、それに沿った一つのシナリオを描けばいいわけじゃないですか。でも、ギャルゲのライターに求められているのはそうじゃないですよね。その辺で、いったん小説家として認められた人が、ギャルゲのライターとして柔軟性を持って活動できるんかなあ、って。もちろん、独特の世界観とかが一般ウケすれば全然構わないんでしょうけど、麻枝さんみたいに、総合的にプロデュースできるだけの力があるかどうかもわかりませんしね。
 planetarianは涼元さん企画だったわけですけど、あれはKey的に、あるいはユーザー的には成功だったのかどうか…。個人的には、普通に面白く読めたのですが、「ギャルゲー」としては失格だったかと。萌えの追求はイマイチだし、Keyに求めていた話のジャンルというか方向性がまるで違っていたというか。

 遅筆ぶりはともかくとして、複数キャラのシナリオが描けるかどうかとか、柔軟性(妥協できるかどうか?)の問題などから、Keyから出されたのかもしれませんし。理由はよくわかりませんが。
 今のKeyにも、絶対に必要かどうかはわかりませんからね。もちろん、涼元さんが1キャラ担当していたら、そのキャラのシナリオの評価は高いでしょう。しかし、今回は外注であるはずの城桐さんや樫田さんのシナリオに評価が集まっているわけで、あのクオリティが外注さんで出せるのであれば(もちろん、麻枝さんが一定以上レベルのシナリオを書ける人を知っていたからこそできたわけですけど)、絶対に涼元さんが残らなければならなかったわけでも無さそうです。

 涼元さんのアクアプラスデビュー作はどうなるんでしょうか? その作品がどんな形式になるのか? 涼元さんの評価も決めることになるでしょうし、アクアプラスLeaf大阪開発室)の将来も決めることになるでしょう。特にアクアプラスの大阪開発室は、全く持ってヒット作が出てませんから。それこそ東鳩以来。アクアプラスとしては、看板ライターになってもらうつもりでのスカウティング(? 自薦かもしれませんけど)だと思うので、期待はかなり大きくなっていると思うのですが…。それに応えられるのか? 情報、早く発表されないかなあ…。