ライターを外注に頼る中での、都乃河氏のポジションと今後のKeyの路線とは?

 リトバスEXまで、麻枝准がライターを卒業するKeyですが、次回の新作Rewriteでは、自前のライターがメインではなく外注ということになってしまいました。
 メインライターが外注ってゲーム自体は珍しくありませんし、これまでのKeyの歴史から考えると、シナリオを外注に任せることもそれほどおかしな話ではありません。が、メインライターが外注というのはこれまで無かったことですし、ちょっと不安な面があります。以前のエントリでも書きましたけどね。
 今までのKey作品を振り返ってみると…MOON.やONEといったTactics時代〜Kanonまでは、麻枝・久弥というツートップがシナリオをすべて書いていたので外注参加は無かったんですが、AIRでは途中でライターが一人離脱(脱走?)した関係で、VA内から魁氏などが、Key内部では涼元氏らが参加しています。CLANNADでは最初から魁氏がいくつかのキャラを担当することになっていて、これが初めての外注前提のゲームになったのかもしれません。丘野氏はヘルプのヘルプっぽい感じでもありましたが。
 智代アフターでも、サブライターとして樫田レオ氏が参加していますが、彼も外注とのことで。ちなみに、魁氏や丘野氏らがVAの他ブランドでメインライターをしていた、既に商業で作品を残していた人たちなのに対し、樫田氏はそういう実績の無い外注さんという、ちょっと新しい起用法でした。
 そしてリトルバスターズ!では、樫田氏に城桐央氏が外注として3キャラを担当し、Key所属のライターとしては麻枝氏が1キャラ、都乃河氏が2キャラ担当でかつ初めて名のあるライターとして参加した、と言うことになります。
 こうして見てみると、案外外注に頼っているKeyの姿勢がよくわかると思います。自前のライターとして育てた(?)のも、結局は麻枝さんしかいないですし(育てたというよりは勝手に伸びたって感じも、最初から完成されていたとも言えますけど)。確かな実力があった涼元氏も辞めさせてますし、都乃河氏まで自前のライターを育てようと言う感じも無かったですしね。
 そして思うのが、ライターを育てようとしないのは、麻枝氏なのかVAなのか、ということです。
 つまり、麻枝さん個人が育てるのが上手くない(AIR以降で入った2氏が共にKeyを去ったところとか)のか、あるいはゲームの完成度を優先すべく、VA本体が即戦力の助っ人で穴埋めを図ろうとしていたのか? ってことが疑問なのです。
 AIRCLANNADはある意味で仕方なかったと思います。途中でライターが抜ける、あるいは著しい進行遅延があったため、外の人の助けが無ければ、ゲームを完成まで持っていくことは出来なかったでしょうから。ただ智代アフター以降はどうでしょう? 途中からは都乃河氏を加入させて、シナリオアシスタントからライターなどとして起用しています。が、リトルバスターズ!はキャラの半数が外注さんの手によるシナリオになっています。CLANNADも半分くらいがKeyではない人のシナリオでしたが、AfterのボリュームからあくまでKeyのライターが主体になったゲームと言えます。そしてRewrite。もはやKey外のライターが中心になっています。
 そしてもう一つ思うのが、企画です。これまでのKey作品は、Kanonの久弥氏、planetarianの涼元氏を除いては、すべて麻枝氏が企画をしています。他のゲーム会社であれば、シナリオだけではなく企画まで外注さんがやっているところもありますが、これまでのKey作品はすべてKey所属のライターさんが企画をしていました。その慣行もRewriteでは破ってしまうわけです。
 何が引っかかるかといえば、やはり都乃河氏へのシフトが遅れている、あるいは軽い、というところでしょう。涼元氏の場合、AIRCLANNAD(しかもことみシナリオのみ)の実績だけで1本のゲームの企画を任されているのにも関わらず、都乃河氏にはまだメインライターとしての起用がありません。リトルバスターズ!EXの開発と並行してもう一本のゲームのラインを動かすには、外注さんをメインにする必要があった、ともいえますし、Rewriteが今までのKey作品とは違ったキッカケで動いている、と言うことも言えますけど、それにしては中途半端です。
 個人的には都乃河氏の扱いが非常に中途半端」だと思うのです。
 もし都乃河氏を麻枝後のKeyのメインライターとして扱うのであれば、最低限でもEXの新キャラ(昇格キャラではなく)を担当するとかしなければいけないでしょう。それか、EXでの負担を減らして、Rewriteでメインの一角を担わなければならないでしょう。しかしどちらも中途半端なのが現状です。それどころか、Keyの象徴だった麻枝准は、EXを最後に企画もシナリオも降りてしまいますし、過渡期と言えるゲームを残さずじまいに終わりそう。そして企画シナリオに関すれば、Keyらしさを継承していく相手が育たないままになってしまいます。
 本来であれば、都乃河氏企画のゲームを出して、それを麻枝氏がサポートするような形で一度やるべきだと思います。そしてその作品で、麻枝後のKeyの軸を見せて、更に、都乃河勇人がこれからのKeyを担っていくと言う意志表示をすれば良いのです。
 それをしないのは、あるいは田中ロミオ氏らRewrite制作ライターさんたちに、これからのKeyのシナリオを任せる…というわけでも無いでしょうから、場当たり的に力のある外注さんに作ってもらうことを意味しているのでしょうか? ちょっとそれでは、Keyと言うブランドのゲームを買い続ける動機にはとてもなりません。
 問題は、VAにもあります。Keyと言うブランド単位でもそうでしょうが、VAとしても、Keyと言う金の成る木をそう簡単に潰すことはしないでしょうし、麻枝氏が描かなくなることで離れるユーザーを、田中ロミオ竜騎士07というビッグネームを起用することで食い止める(あるいは新規に取り込む)ことも狙っているでしょう。リトバスEXにしても、ライター引退を表明していた麻枝氏をもう一度引っ張り出して書かせることによって、従来の鍵っ子にも訴求力を高めようとしているのがわかりますし。ただ、あまりに場当たり的な感じもあります。
 場当たり的といえば、リトバスEXにしてもそうです。18禁化という安易な手を使ってユーザーを取り込もうとしているわけですから。VAが本気でKeyで金儲けをしようとしている一連の動きを考えると、わからないでもありません。
 ただ長い目で見れば、Keyの麻枝准に代わる柱を育て、これからのKeyの路線を確定させなければ、5年後とかにはどうなっているかわからないわけで。今回のRewriteが例え好評だったとしても、次もまたあの二名がKeyのゲームを作ることになるかはわからないわけです。ですので、Keyの昔からの根強いユーザーが残っている早い段階で、都乃河企画orメインライターの作品を出すべきなのです。多少の売り上げ減は仕方ないでしょうし、それでユーザーが離れてしまえば、その時期が早まっただけになるわけですしね。
 個人的に、まだ都乃河氏は企画をしていないわけで、その企画力を見るまでは見限れないと思っているのですが、Key(麻枝氏)が、あるいはVA(馬場社長)が、都乃河企画を「まだ早い」と見ているのか、あるいは「その力は無い」と見ているのか、それも何らかの形ではっきりしてもらいたいような気がしてます。
 それがわかるのは、Rewrite発売後〜次回作発表時でしょうから…あと1年以上先になりそうですけど。

関連「外注に頼るKeyと都乃河勇人への不安」(かぎにっき)