アグネスタキオン急死に問う、社台スタリオンの種牡馬稼業と管理

 アグネスタキオンが急死したようです。まだ11歳と言う若さです。早くから種牡馬入りしていたので、遺した産駒世代は8世代とまずまずいますし、ダービー馬ディープスカイ皐月賞キャプテントゥーレなど、後継種牡馬となれる逸材も遺していますから、あまり血が絶える心配は無いのですが…そういう問題ではありません。
 と言うのも、アグネスタキオンをはじめ、社台での人気種牡馬たちはほとんどが、1年で200頭以上の種付けを行っています。アグネスタキオンはその中で突出した数ではありませんが、ここ2年は200頭越えをこなしています。しっかり体調管理やデータなども取って「可能な数字」として行われているのだとは思うのですが、それでも、以前から考えると「多すぎる」印象が強いです。種付けが多いのは、すなわち種付け料としての収入が見込めるからなのは目に見えているでしょう。もう一つ理由はあると思いますが。
 かつて社台で種付けを行っていた種牡馬の中には、早世した馬が少なくありません。わずか3世代で急逝したエルコンドルパサーに、こちらも3世代だけのナリタトップロード、4世代しか遺せなかったアドマイヤベガ、日本で種付けしてから3世代で急死したエンドスウィープ…。もちろん、驚異的な種付け数をこなしていたダンスインザダークとか、日本でも、1年の半分は南半球でも種付けをこなしたフジキセキなど、絶倫種牡馬ももちろんいます。が、これだけの名馬・新進気鋭の種牡馬たちが若くして急死しているスタリオンは、日本では他にあまり見当たりません(ま、有名な馬が多いから目立つだけなのかもしれませんが)。
 
 そもそも、社台グループの「血の独占」と「血の買占め」は酷いものがあります。例えば、社台系種牡馬の種付け過多は、社台による血の寡占とも言えなく無いでしょうか? つまり、種牡馬には負担を強いて、他所のスタリオンの種牡馬繁殖牝馬を回さないよう、自分のところの種牡馬だけで繁殖牝馬を独占しようと言うような…そんな方針にも見えます。
 社台以外では、日高のブリーダーズSSや優駿SS、ビックレットF、そして最近ではダーレージャパンなどもあるのですが、2008年のリーディングサイアーでは、6位にブライアンズタイムが入っている以外はベスト10はすべて社台系種牡馬で占められてます。2009年も現在まで、12位のステイゴールドが最上位という結果になっていて、もはや社台の種牡馬で無いとGIは勝てない…とまで言い切れるくらいの状況になっています。もちろん、社台にいる種牡馬の能力が高いのは確かですが、血統背景のいい繁殖牝馬を集めてそれらを多い種付け数で独占してしまっているのですから、社台系以外の種牡馬から生まれる産駒がGIを勝てる馬を出す確率はもの凄く低くなってしまってるんですよね。大げさに言えば、より繁殖牝馬種牡馬の質が低い青森など東北産や、九州産にも通じるような格差が、北海道内で生まれてしまっているわけです。
 広範な地域同士がある程度勝負になる競争をしてこそ、競走馬全体のレベルアップに繋がるかと思うのですが、それも行われないようになってしまえば、日本の競馬界にとっても大きな損失になるのですが…。
 そしてそんな競走馬生産の場を、名種牡馬・新進気鋭の種牡馬を早世させてしまうことで定評のある社台グループが寡占しようとしているわけですから…。リスク分散と言う意味でも、もう少し社台には自制してもらいたいんですけどねえ…。もう行き着くところまで行ってるから無理なんでしょうか…。