フラクタルがとても面白い件

 ヤマカンが引退するとかどうこうが目立つ形になり、作品そのものを見る目がおかしくなっていたんじゃないかと思う「フラクタル」です。とりあえず僕はその辺どうでもいいので作品に集中しながら観ていたんですが、3話で思いっきり引きこまれました。これはめちゃくちゃ面白いです。3話Bパートの雰囲気が一気に変わるあの辺りから……ではなく、3話のAパートから「やべえ……これ超面白いんだけど……。ネッサ可愛すぎだろ……」とまあ、全く買うつもりのなかったBDも買っちゃおうかとか、主題歌CD発売が3月とか遠いな……とか、積極的に集めようかと思うくらいにハマりました。
 3話の段階でようやく助走が終わり、世界観やそれぞれのキャラクターの立ち位置や所属、ストーリーがどう動きそうなのかが見えてきたという段階ではありますし、1,2話の描き方は3話を描くための布石だったということがわかりましたが、それ故にオリジナルアニメの1話としては非常に弱く、今後も観てもらおうとするには情報量も不足していたように思います。まあ、全話観るという視聴者にとってはむしろ、詰め込み感の無い序盤だったのが心地良い感じではありましたし、3話まで観て1話に戻ると色々と新鮮な気持ちにもなれるでしょうしね。
 ただ、今期の話題をさらっている「魔法少女まどか☆マギカ」などと比較すると、表面上のとっつきにくさと難解さがフラクタルにはあるので、そこが楽しむ上での障害になってしまっているって人ももしかしたらいるのかもしれません。
 なので今回は、フラクタルのどの辺が面白いと思うのかとか、難解さを少しでも薄れさせるような見方を紹介していきたいと思います。

  • ヒロイン力の高さ

 僕のお気に入りはどう考えてもネッサですが、花澤ボイスが極限までに生かされたキャラ作りに、無垢で自由な小動物的な属性ってどう考えても俺得ですし、イカ娘やけいおん!!平沢唯という感じですよね。しかし設定では10歳……w みつどもえキャラよりも年下なんですねえ……。
 そしてエンリ。小動物的なネッサと絡むインなんとかさんって……小動物×小動物じゃないですかあ!! と、この2人の掛け合いを観ていてどうも自分の中で弾けてしまったわけですが……(そこでした)。イイですよね。しっかりしていそうでドジっ子。ツンツンしていそうで悪くもなりきれなさそうな感じで、上手くキャラが立っていると思いますし、妹属性付きでブラコンっぽいですし。死亡フラグが立ちそうな気がして少し怖いのですが……。
 フリュネもイイですよね。あの世間知らずながらも圧倒的に凛々しいところが。ジブリっぽいのは恐らく彼女のせいかと思います。ジブリヒロインたちの強さみたいなものが相通じるところがあるようにも……。ただ、彼女はフラクタルシステムの運用というか、洗脳するためのデータを送る側の人間のようですし、スンダやエンリたちのグループとは正反対の位置に立っているはずです。4話以降、クレインとはどういうスタンスで接していくのかが見えてきません。故郷を飛び出してきた理由とか、クレインの集めたロストテクノロジー(アンティークなもの)に魅力を感じたり。ネッサ(ドッペル)と妹?のネッサとの関係性も含めて、ちょっと謎めいたところも魅力なのかもしれませんね。
 主人公のクレインもそうですが、彼女たちがどういうキャラで、どういう魅力があるのかが物凄くわかりやすいと思うんですよね。数は少ないまでも、属性がしっかり付いているし、ストーリーとは直接関係の無い部分でもどういうキャラかを描写していますしね。3話まででストーリーとしては1話分くらいしか無かったようにも思いますが、世界観の説明と並行してキャラの魅力は凄く描けていたように感じています。3話Aパート観終わった時点では、この作品はキャラ萌えなのか! とか思っていたくらいですのでw
 個人的には、今期No.1ともいえる「まどか☆マギカ」よりも、キャラの魅力については断然上だと思っています。向こうはストーリーを進める上で必要な最小限のキャラ描写に留まっており、キャラ萌え的要素はそれこそ見た目レベルで留まっていると思います。それと比較すると、フラクタルのキャラ描写はかなり冴えていると思うのですが……。ストーリーが進めばさらに魅力的になるんじゃないかという期待感は持っています。

  • わかりやすいストーリー

 難しい世界観に邪魔されがちですが、ストーリーとしてはここまで凄くわかりやすいですよね。ボーイミーツガール的な1話があって、1話最後に出てきた謎の少女が2話丸々はしゃいで、3話で1話ではお邪魔だった集団や1,2話のメインヒロインたちがそれぞれどういう立場のキャラかが判明して、かつ1,2話で違和感に感じた世界観のネタ明かしがされた、という感じでしょうか。世界観難しい、ってだけで立ち止まると前に進んでいきませんが、そこを通過するとやってることは凄く単純明快なんですよね。
 恐らくテーマは「自分の存在意義・生きる意味を探しに行く」ことなんだろうと思いますが、これが最初にフラクタルが「冒険もの」だという話で「冒険しないじゃなイカ!」と2話までで思っていた部分と繋がってくると思います。要は「自分探しの旅」なんでしょうね。テーマとしては割と王道でもあると思います。
 ただ、これはバトル物になるのかどうかがわからないんですよね。スンダたちと同行して巫女たちを倒していくテロ行為に加担していくことになるのか、あるいは距離を置くのか。要はクレインにとっての正義とは何? ということです。正義がハッキリしてないままに戦うのもアリですが、スンダたちの敵にあたるフリュネやネッサ(実体)の存在の関係や距離感も気になるところで……。
 そんな感じで、ここまで非常にわかりやすいストーリーだとは思いますが、各キャラの立ち位置が判明してからも、まだ今のところどう持って行こうとしているのかが読みにくいあたりが面白いですね。4話を観れば判明しそうですが、「クレインの自分探しの旅」に各キャラがどう絡んでいくのかも楽しみなのかもしれません。

  • 謎な部分を残している

 1話でフリュネがクレインに渡したアクセサリーがありましたが、あれは「フリュネが笑顔を絶やさない理由」であり「クレインの笑顔を守るため」に半ば押し付けた形になりました。それがネッサ(ドッペル)になったわけですが……。2話でクレインがネッサに触れなくなった時には、クレインがネッサの笑顔を「怖い」と感じてしまうようになったからで、笑顔の源のような存在であることが窺い知れます。あの天真爛漫さですからねw ただ現実の、姉妹関係にあると思われるネッサとドッペルのネッサはイコールなのかどうかとか、フリュネはあのデータ化してドッペルとして具現化しないままのネッサをどういうものとして感じていたのか……。
 そもそも、ネッサ(ドッペル)の感受性は計り知れないところにありますし、行動力やその影響力もよくわかりません。
 フリュネが飛び出してきた理由とか、クレインの集めたロストテクノロジーや思い出に触れて泣いたことなども関係してくるとは思いますが、その辺についてはまだまだ明かされていませんし、これまで描かれた情報からは推察することが難しいと思います。
 わかりやすいストーリーながら、しっかりと謎な部分を残しながら進めており、個人的にはその辺に興味を持たせながらストーリーを追わせてくれる心地良さを感じています。わかりやすさと謎とをはっきり区別しながら描いているまどか☆マギカに比べると、そこの差がわかりにくいのかもしれませんが……。それでも、近い感覚はあるように思っています。まどマギには「魔法少女モノ」であるという下地があって、フラクタルにはその下地が無いだけの違いのような気がします。

  • 世界観の見方

 「フラクタルシステム」とか色々と固有名詞が出てきて難しく感じてしまいますが、仕組み自体は難しいものの、クレインが置かれている状況や世界は、ある程度現実世界のとある状態にも置き換えられるものではないかと思います。
 人と接さなくても何とかなる世界、働かなくても暮らしていける均等な所得の割り振りがされていて、これ以上の幸せを求めることを諦める考え、などなど色々とありましたが、この世界の人々はそれを得ることと引き換えに均質的な考え方を刷り込まれていたり、そのことを洗脳されているとも思わないという世界のようで、それに反抗しているのがスンダたちのグループのようです。
 これってつまり、現代社会の行き着く先、みたいな描き方でもありますよね。突出して富を得られる人がおらず、働くことは趣味みたいなものだとか、人付き合いは面倒なことだからしなくなったり、実現するしないに関わらず夢なんて持たないほうがいい、とかそんな。
 主人公のクレインは、夢なんて持たず、好奇心もアンティーク趣味に限定されていたり、人付き合いに不慣れだったり、そういうキャラって割に現代の普通の少年にでもいそうな気がします。恐らくは汗をかくことも無く、傷つくことも無かったんでしょう。
 フラクタルがこんな小難しい設定で描かれている理由はよくわかりませんが、オリジナルであるが故に、より描きたいものを描くための箱庭やルールなんかが描きやすい世界観にしたかったからなのかもしれません。現代劇であれば現実との相違点などを色々とツッコまれてしまいますが、ずいぶんと先の未来であるこの作品世界の中であれば、作者の都合の良いルールを築けますしね。それでいて、割と現実でも当てはまるような描き方をされているところを観ると、あまりその世界観に囚われてしまうと本質的な面白さを見失うんじゃないかとも思いました。

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 さて、長々と書きましたが、フラクタルを敬遠していた方がここまで読んでくれているかは非常に謎です。が、個人的にはまどか☆マギカと比べても遜色ないか、最終的には逆転するかも知れないと思うくらいに面白い作品だと思いますので、ぜひぜひ余計なフィルターを取り除いて観て欲しいと思います。ネッサの抱き枕カバーとか出たら欲しいです(ぇ。

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