放浪息子は面白いのにあまり幅広く観られていない理由とは?

 関東では最終回を迎えたノイタミナ枠の2作品目である「放浪息子」ですが、関西ではまだ10話までしか放送されていないとはいえ、非常に面白いと思っています。原作そのものの面白さもあるのでしょうが、淡い色彩のキャラデザや、背景や光の効果などの映像美や演出、メインキャラの声優にリアル中学生を起用するあたりの冒険心、そして何よりも非常に丁寧かつ効果的な演出の数々と、アニメならではの良さを最大限に生かした作りだと思います。また、描きたいテーマみたいなものもさほど難しいわけではなく、むしろ観る方向性としては非常にわかりやすい部類に入るのではないかとさえ思いました。
 ただ、観続けている割とディープなアニメファンからは絶賛されている一方で、よくあるノイタミナ枠の他のアニメと同じく、あまり主要な深夜アニメ視聴者には観られていないようです。個人的には、他の流行る深夜アニメと同じような要素をかなり秘めている作品だと思ってますので正直意外ではあるのですが、ではどうして幅広く観られていないのでしょうか? その辺を考えていきたいと思います。

  • 間口が狭い

 まずはタイトルからして、一般の深夜アニメファンに対しては「守備範囲外」に思われてしまわないかと思います。個人的にも、このタイトルから自分が好きそうな要素を見出すのは、放送前では難しかったですしね。
 あの淡い色彩のキャラデザも、パッと観た感じでは普通の深夜アニメとは毛色が違うことがわかりますし、ライトなアニメファンには反応されにくい気がしました。

  • メインキャラの声優がいわゆるプロ声優さんではなかった

 間口が狭いにも含まれますが、ここで引っかかる人は多かったように思います。個人的にはこの仕掛けが心地良く感じるだけに意外ですし、別にヘタではなくむしろリアリティを生んでいるというプラスに働いている部分もあるだけに、ここで引かれるのは勿体無いなあ、と思っています。
 ただ、芸能人が声優をやるようなアニメが声優さん含めて観る深夜アニメファンからすればイマイチに映るように、この放浪息子も同じような目で観られているような気がします。やはり、声優さんの名前は観る動機付けにはなりますからね。

  • テーマや世界観的にファンタジー要素や人間関係以外の要素が無かった

 放浪息子という作品は、あくまで二鳥君や高槻さん、千葉さんらを中心とした中学校での、あるいはその外での人間関係の移り変わりを描いています。逆に言えばそれ以外はほとんど描いていないということでもあります。この作品は、重厚な人間関係とその移り変わりに特化した作品なだけに面白いのですが、ともすれば地味にも映るのかなーとも思ったりします。
 例えば「けいおん!」のように日常系でありながら音楽があったりだとか、女の子しか出てこない感じで百合な感じとか、何か他に要素があればもう少し入る動機にもなったように思いますが、そういうものがこの作品の場合「女の子になりたい男の子と男の子になりたい女の子」という割と曖昧な部分だけでしたからね。

 割と意外なんですが、ヤマカンさんの発言もあって非常に不人気だったフラクタルの後にやっているデメリットもあるような気がしています。フラクタルを観なくなって同時に放浪息子も観なくなったという人を複数聞いているんですよね。録画派であれば取捨選択しながら観るんでしょうが、リアルタイム視聴派からすれば「どっちも観る」か「どっちも観ない」になっているように思うんですよね。なので、途中で切られたフラクタルと同じようにして放浪息子も切られたケースがそれなりにあるように感じています。
 録画の場合でも、セットで観ようという人がフラクタルを切ったのと同時に放浪息子も切ったりしてるみたいなので、この点でもフラクタルに引きずり下ろされたって気がしないでもありません。「ノイタミナ枠」という括りでセットで考えられている感じもありますからね。内容としては全然違うものなわけですけど。

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 個人的には、キャラ萌えもカップリング萌えも出来ますし、二鳥君が可愛かったり高槻さんがかっこよかったり、千葉さおりんが可愛かったりとか、千葉さんと高槻さんのふたりの仲が良くなりすぎていてお前らもう付き合っちゃえよ状態だったり(女の子同士です)、BL趣味な人も百合趣味な人もニヤニヤできる要素が満載だったような気がしましたし、他の萌えアニメと同じように観られたと思います。原作とアニメでは展開も違うらしいので、その意味でもアニメは差別化の意味でも良かったんじゃないかと思ってます。
 言いたいことは……もう少し観る人が多かったら良かったのになあ、ということです。個人的には過去に観たアニメの中でも相当上位に入る名作だと思ってます。BSフジではまだ半分くらいなのでよろしければどうぞ。

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