魔獣とは? 最終回Cパートで描かれた真意とは? そもそもハッピーエンドなのか? 〜魔法少女まどか☆マギカ最終回考察

 まどマギBD1巻がまだ発送されていない管理人です。ソウルジェムが濁ってます。
 さて、前回の記事から更にまどか☆マギカ最終回の結末を考えてみましたが、ある程度自分の中で繋がったものが出てきたのでご紹介したいと思います。
 この前の記事では「魔獣」の存在とそのカラーリングである白、それとほむらが最後に纏っていた黒い翼との比較を書きましたが、そこから更に踏み込んで、両者が対照的な色をしていることと、そもそも魔獣とは何かについて考えてみることにします。

■参考:「魔法少女まどか☆マギカ 最終回Cパートの描いた未来とは?」(前回記事)
 

  • 魔獣とは何か?

 魔獣が白であることとオッサン顔であることを考えると、2つの意味が透けて見えてきます。それは、魔獣が「男性」を象徴しているのではないかということと、魔獣が「キュゥべえ」に近い存在ではないかということです。
 魔獣がキュゥべえに近いというのは、同じ白であることと、「獣」であることでしょうか。キュゥべえも赤の模様は入ってますがカラーリングとしては白ですよね。あと獣ですよね。そして、魔獣がやたらオッサンっぽかったのに対し、キュゥべえはどちらかと言えば幼い外見ですよね。なのであれは、インキュベーターたちの大人になった姿、あるいは成れの果てという考え方が出来ると思います。
 もう一つの魔獣が男性であることですが、今までは「魔法少女」が「魔女」になっていたので魔女は当然のことながら女性です。ですが魔女が生まれなくなった世界なので、男性が魔獣になったのではないか?という考え方が出来ると思います。ただ、少年が「魔法少年」あるいは「魔法使い」になって魔女化と同じように魔獣化する、と考えることも出来るのは出来ますが、あくまでも推測の域を出ませんし、そう言うには本編で描かれなさすぎでもありますのであまり強くは推せない考え方です。そういえば、上条君のカラーリングって実は白ベースなんですよね。制服がそうなだけではありますが……。髪の色もグレーですしね。
 実はもう一つ有力な答えがあるのですが、そちらは後で描きます。

  • まどかがしていること、しようとしていることとは? そして世界がどうなっている?

 神様のようになったまどかがしていることは、魔法少女たちの魔女化防止です。魔法少女たちが穢れを溜め込んだり絶望したりした際に発生する穢れをまどかが受け止めることで、彼女たちの悲惨な結末を回避し安らかなる死を与えることが、まどかがやっていることの全てです。このことで、魔法少女として契約した少女たちは魔女になることなく消滅していくわけです。
 しかしながら、そのことで本来なら発生するはずの悲劇や憎しみから生まれる感情の力をインキュベーターたちが回収することなくまどかに持って行かれることとなりますし、魔女になって得られる絶望という感情の力も、魔女が人間や魔法少女を襲うことで得られる負の感情の力も全て生まれないことになってしまいます。12話Bパートの新キュゥべえにほむらがグリーフシードっぽいものを渡していたように、魔獣を倒しても恐らくはグリーフシードを落とすっぽいので、また別の負の感情の発生と回収方法もあるのでしょうが、どうやらキュゥべえたちが本来構築していたはずのシステムとは全くの別物のようです。
 9話でまどかにキュゥべえが説明した話から想像するに、魔法少女の魔女化が最もエントロピーを得やすい仕組みのようですし、それを使って世界を維持・発展させているようなので、ここのサイクルをまどかがぶった斬ったことにもなりますので、得られるはずのエントロピーが足りなくなってしまう恐れがあります。どうかと思う例えを挙げますが、原子力発電所が危ないからと言ってまどか神がいきなり止めて、そしたら電力不足に陥って生産や日常生活が停滞し、それに反抗して原子力発電所を再び動かすために邪魔なほむらを倒すために魔獣が現れたような状態、という感じなんだろうと思います。ほむらが阻止し続けた結果、文明が滅びてしまい、それでもなおまどか神とその願いを実現させるために立ち続けるほむらを倒すために魔獣が現れ続けているのだろうという感じです。
 つまりは、まどかがやろうとしてやっていることは、あくまで原子力発電所を止めるまでのことであって、じゃあ代わりに自然エネルギーで発電する……ような仕組みまでは考えていないんですよね。同じく自然破壊な火力発電所を作ることもまどかは望んでいないんでしょうが、そういう代替の仕組みまで考えが及んでいないからこそ、12話Cパートのように世界が荒野と化してしまっているんでしょう。
 Cパートにキュゥべえがいないのも象徴的ですよね。どういう経緯でいなくなったのかはよくわかりませんが、魔法少女→魔女ほどにエントロピーを得られなくなったり、男性狩りが横行する世界になってしまい地球を見限ったのだろうと考えられます。それによりキュゥべえが担っていたエントロピーの回収と世界を維持していく仕組みが崩壊してしまったのも世界が荒野と化した理由に繋がっていると思います。

  • ほむらVS魔獣の真意

 以前に「大人と男が悪として描かれている……」という記事を書きましたが、決定権は無いもののまどかママと早乙女先生を観てる限り大人は悪というわけではなさそうです。が、男が悪という可能性は最後まで貫かれていたような気がします。それは、ほむら&まどかが戦っている相手が魔獣……男の象徴でもある存在だからです。
 そもそも魔法少女まどか☆マギカという作品は、男性の象徴であるキュゥべえに少女たちが「騙された」ことから始まっているのがわかるように、魔法少女たちにとって男は忌まわしい存在になっています。杏子やさやかが男の幸せを願った結果、杏子は家族を失い、さやかは自分自身を破滅させてしまいました。さやかの場合、最後はまどかに上条君のことを諦めさせ、まどかに導かれるようにして締めくくったりもしてますし、魔女になったさやかは杏子とともに消えたりもしましたので、魔法少女たちは同じく魔法少女……女の子にしか救えないという仕組みみたいなものがあるように思います。まどか自身も、ほとんどまどかの心理に干渉しないパパよりもママに影響されているように、あくまでも女の子の中で完結した関係性のようにも思えます。
 更に、魔法少女と魔女って共に「女」ですよね。少女たちとかつて少女だったものとが戦い、殺し殺され、その中でだけ悲しみや絶望、憎悪の感情が生まれていたわけです。そういう女の子たちだけの犠牲から生まれる感情のエネルギーで世界は維持発展されていたのがこの作品の世界観でした。そしてその仕組みを構築し運営していたのが、男の象徴であるキュゥべえインキュベーターなんですよね。彼女らの犠牲を強い、それを糧に世界を動かしていたわけで、そうした仕組みをまどか神がぶっ壊したわけです。つまりは、少女たちの犠牲を無くしたかった、女の子だけが悲しい思いをする仕組みを壊したかったのだろうと思います。
 しかしそうした仕組みが壊された結果、女の子だけにあった悲しみや絶望が生まれる仕組みが女の子だけのものではなくなった……のがあの魔獣なんだろうと思います。もし魔法少女→魔女化だけが女の子にもたらされる絶望を運んでくる最も悪い仕組みなのだとしたら、魔獣はやはり男性の象徴と言えると思いますし、ほむらが戦っているあの姿は「女VS男」の代理戦争みたいな感じなのかもしれません。
 魔獣がキュゥべえっぽいということを書きましたが、もしそうなのだとしたら、今度はまどか神とそれを支持し推進するほむらと、旧システムを復活させたいインキュベーターとの戦いにも当てはまるように思います。まどか神がやっているのは旧システム破壊ですし、ほむらは復活の動きを阻止するような戦いでもありますからね。魔獣たちは旧システム復活のための障害であるほむらを倒すためだけの存在である可能性もあるのでしょう。12話Bパートではキュゥべえとほむらは仲良さそうでしたし、その時でも魔獣は出てはいましたが、あの時のほむらの羽根はまだ白かったことから、その時にはまだエントロピー回収の上で破綻していなかったか、まどか神とほむらが男性そのものとの全面戦争にまでは至っていなかったのだろうと考えています。
 これ、男性側からすると、あるいは世界そのものからすると、キュゥべえが10話の1ルート目でほむらのあんな願い事を叶えてしまったからこそ起きる悲劇とも言えてしまいますので、誰かがループしてキュゥべえに「その子と契約してはダメぇぇぇ〜〜〜っ!!」と4ルート目のほむらみたいなことを言わないとダメという気さえしてきますよね。ループを重ねすぎて強くなりすぎたまどかがああいう願い事をして……結果としてキュゥべえたちや男性にとって都合のいい世界が崩壊してしまったわけですからね。こういう表裏一体な関係がまどか☆マギカの世界観なのかもしれませんね。

  • ほむらは幸せなのかどうか

 あとは、この結末はほむらにとって幸せなのかどうか? です。まどかは、魔法少女たちが魔女にならないようにと願ったわけで、その願いを叶え続けるために自らが魔法少女たちが抱く負の感情を吸い取り続ける生き方を選択したわけですが、ほむら自身はどうなんでしょうか?
 ほむらはまどか神の願いを叶え続けるべく戦っているわけで、その戦いは永遠のものに近いわけです。はっきり言って相当過酷ですし、無限地獄に近いものがあるように思います。ほむらが纏った羽根の色が禍々しい黒になっているのも、彼女自身か、あるいは穢れを受け続けているまどかのものが流れ込んでいるのかはわかりませんが、ほむらが穢れを受けていることを示しているのだと思います。また、最後にはまどかから受け継いだリボンが落ちる描写もあることから、あの直後かあるいは近い将来、ずいぶん先のことかもしれませんが、いずれほむら自身の戦いも終わることは示されていると思います。それがどういう意味なのかは推測の推測になってしまうので書きませんが。
 そもそも、ほむらの願い事は何だったのでしょう? 「まどかとの出会いをやり直したい!」--この願い事は時間巻き戻しで何度か実現していますよね。「まどかを守る自分になりたい」--この願い事はどうでしょう? 実は叶え続けているんですよね。まどかの存在を忘れないことや、まどかとの絆を保ち続けていることもそうですが、まどかが選んだ道や、まどかが叶えたい願い事を守る自分で居続けてるんですよね。
 ほむらって当初はマミさんやまどかがそうであったように、正義の為に魔法少女をしてた面もあったんだと思います。それが3ルート目で、まどかに自分だけ助けてもらった上に「魔女になりたくない」というまどかの願いを叶えるべく、まどかをこの手で殺すという辛い最後を迎えてしまいました。そしてその後はまどか自身の死亡や魔女化を自分の手で防ぎたい、ということしか頭に無かったはずですし、3ルート目での自分だけ助けてもらうところでまどかに「一緒に魔女になってこんな世界めちゃくちゃにしちゃおうか」と言ってしまうあたり、世界そのものにあまりこだわりも無さそうですし、まどかさえ良ければ、まどかさえ一緒であればたぶんどうなってもほむら自身は幸せなんだろうと思います。それが「魔女になりたくない」というまどかの願いから、まどかが最終的に魔女になってしまうことこそが最悪で、それを防ぐためには自分すら捨ててしまって構わない、くらいに変質してしまったのだろうと思います。なので、メガネを外し、三つ編みを解くことで過去の自分とも決別したのでしょう。ここからの彼女はもはや人ではないですよね。
 ほむらって、幸せ家族がいるまどかやさやかなんかと比べると、自らが守りたいと思えるほどにこの街や世界にこだわりはないと思うんですよね。何せ身寄りも無さそうですし、親友や友達と言えるのは、散っていった魔法少女たちくらいしかいないわけですし。むしろ世界よりもまどかを選ぶくらいじゃないかと思うわけです。それが11話で「魔法……少女?」と絶句してしまったあの重火器やタンクローリーの仕込みや総攻撃をワルプルギスの夜に食らわせたあの場面に繋がるわけです。いくらワルプルギスの夜が強大だからと言っても、ほむらのしてる攻撃そのものが街を一部破壊しているんですよね。もちろんどのみちワルプルギスの夜によって壊滅的になる街ではありますが、それでも街を守りたいのであればもっと違う方法を考えそうなものだと思うのですが……。これって、一部の犠牲で世界が救われるって言ってるキュゥべえとやってることは近いですよね。
 何でここまでしてワルプルギスの夜を倒さないといけないかと言えば、自分が倒さなければ、まどかが魔法少女として契約してしまうからなんですよね。ワルプルギスの夜さえほむらの手だけで倒してしまえば、まどかが魔法少女として契約せずに済むかもしれない。それにあれだけ魔法少女になることへのマイナス面を叩き込んでいるわけですしね。
 ……と、まあまどかのためだけにどんなことでもしてきたほむらなので、「まどかが魔女にならず」「まどかを守る自分になれている」今の状態はもの凄く幸せなのかもしれません。コネクト冒頭の歌詞の「交わした約束忘れないよ」でもありますしね。それに、まどかの一部だったリボンを装備したことで(?)まどかの声まで聴こえるわけですから。恐らく、彼女自身が思い描いていたハッピーエンドとは相当異なっているとは思いますが、それでも悪くないエンディングだったんだろうな、と。例え、まどかの願い事を叶え続けることが世界を滅ぼしたり、世界の仕組みそのものと戦うことになろうとも。

  • ハッピーエンドかどうか

 これはよくわかりません。少なくともほむらにとっては悪くない終わり方だったとしか言えません。ただ、世界にとってはバッドエンドに近いのかもしれませんね。

                                                            • -

 とまあ長々と書いてきましたが、だいたい書きたいことは書きました。虚淵さんすげえ、ですw なんて後味の悪い結末をこんな大人気作品のラストに持ってきたのかと。人気が出るかどうかなんてわからないときに描いたでしょうし、こういう終わらせ方をさせたことで「ご都合主義的ハッピーエンド」を許さなかったことは凄く個人的には気持ちが良いと思っています。
 この解釈が正しいのかどうかはわかりませんが、少なくとも個人的にはこういう物語かつ結末だったんだなあ、と考えていますがどうでしょうか?

Web拍手送信