コミケ(C90)告知〜りきおの寄稿分

 C90こと2016年夏コミには落選してしまいましたが、またいくつか寄稿してありますのでお知らせします。

 羽海野渉さん主催のサークル「LandScape Plus」より発行される、水島努評論集に、「侵略!イカ娘」記事で参加しています。
 内容ですが、

水島努監督の萌え(アニメ)とは何か?を教えてくれた『侵略!イカ娘』」

 という内容です。まあ、いつものブログ記事っぽい内容ですが、ガルパンSHIROBAKOなどでキャラ萌えアニメとしてもヒットさせた水島努監督の、キャラ萌えの原点はイカ娘だった、というポイントから色々と書いております。
 僕以外の書き手さんも充実していますので、僕以外で興味がある場合でもお求めください。

タイトル:PRANK! Vol.3 Side-B 水島努評論集
体裁:B5判 全202ページ
発行日:2016年8月14日
発行者:羽海野渉(@WataruUmino)
表紙イラスト:むっく(@moochrim)
発行所:LandScape plus
イベント特別価格:税込各800円
先行頒布:1日目(12日)西J18a M.O.M.発行準備組合
本頒布:3日目(14日)東ポ13b LandScape Plus
http://wataruumino.hatenablog.jp/entry/2016/07/23/043151

 です。なお、Side-Aは水島精二監督の評論集ですので、興味のある方はこちらもどうぞ(うちのブログに来るような方ではあまり需要が無いかもしれませんが。。)。

  • Fani通2015下半期

 超弩級アニメクロスレビュー同人誌Fani通2015下半期」に今回も参加しています。
 と言ってもレビューのほうだけですが、今回は24作品をレビューして、24作品全てコメントも書きました。

超弩級アニメクロスレビュー同人誌Fani通2015下半期は、168作品を対象に
B5版292頁のボリュームで 夏コミC90 12日 西j18a M.O.M.発行準備組合他で頒布予定!
試し読み:http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=58324977
F会:http://d.hatena.ne.jp/f-kai/

 だそうです。面白い内容になっていますので、こちらもどうぞよろしくお願いします。

                                    • -

 以上です。2つだけかよ! って言われそうですが、こんなものですね。。
 ちなみに夏コミですが、1日目から上京しているはずですが、ビッグサイトに行くのは3日目のみ、しかも何処にいるかはわかりません。特にどこかで売り子をやっていることも無さそうです。
 では、よろしくお願いします。コミケでの皆様のご武運もお祈りします。

『ガールズ&パンツァー劇場版』は何故ロングラン上映になり、かつ大ヒットしたのか?

 興行収入やディスクの記録的な数字となった『ガールズ&パンツァー劇場版』ですが、当初はここまでのヒットになるとも思いませんでしたし、ここまでずっと映画館で上映されることになるとも思っていませんでした。それは1ファンである僕だけではなく、制作関係者もそうだったのではないでしょうか。
 ロングラン上映になった理由の1つとして挙げられるのが「映画館でこそ映える音響の作り込み」や「3DXや各種特殊上映スタイルと合致した内容」などがあるのでしょうが、それが再現できないBD/DVDの売上については説明できません。深夜アニメの劇場版としては『魔法少女まどか☆マギカ』や『けいおん!』などを超え、この上にはもう『ラブライブ!』くらいしか見当たらないの大ヒットとなったわけですが、テレビシリーズの円盤の売上については、原作付きの『けいおん!』はともかくとして、『まどマギ』あたりには遠く及ばない数字でしかありませんでした。
 では、どうして『ガルパン劇場版』は記録的な大ヒットとなったのでしょうか? 『けいおん!』や『まどマギ』などとも比較しながら考えてみたいと思います。

  • 劇場版上映開始前の知名度の低さ

 『ガルパン』で一番思うのは、テレビシリーズやアンツィオOVAの特別上映の頃は、さほどファンが多くなかったことです。テレビシリーズの円盤が3万以上売れていてそれはないだろう、と言われそうですが、売上ほどみんな観ているわけではない、というのが個人的な感触でした。観た人は、一度は大洗にも足を運んでみたりと熱心なファンになりやすく、恐らくはテレビシリーズを観てる人のうち、円盤まで買ったという割合は相当高いものになったような感じだと観ています。要は、好きだけど円盤まで買うようなライトなファンが少なく、コアな人気のアニメだったんじゃないかと思うわけです。何せ、知り合いで劇場版観に行った人が多いどころの話ではなく、ある程度アニメを観てる人の中で、観に行ってない人のほうが圧倒的に少ないくらいの感じでしたから。
 それが、劇場版上映開始当初に流行った「ガルパンはいいぞ」ブームからのリピーター続出……までは、深夜アニメの劇場版あるあるだったと思いますし、興行収入もそれなりのものでしかありませんでした。ただ、何処かで潮目が変わったのか、あるいは客入りが何時まで経っても衰えないからか、徐々にテレビシリーズは観ていない層が興味をもつようになってきたように見えました。そして「テレビシリーズは観てないけど劇場版観に行った」的な報告が増えて、そこからテレビシリーズやOVAを観たりするようになり、気がつけばかなりの数の二次創作が生み出されるようになってました。
 二次創作は人気のバロメーターになると思っていて、例えば『けいおん!』や『まどマギ』だと、テレビシリーズの頃からかなりの数の同人誌が出ていたわけです。特に『まどマギ』は最終回後が特に増えましたが、放送中からすごかったように記憶しています。ところが『ガルパン』は、テレビシリーズの放送中や最終回の放送後に出た同人誌は本当に少なくて、あっても戦車の解説本とか用語集みたいなお堅い内容のものがメインで、キャラクターに焦点を当てていたり、ましてやカップリング本なんて本当に少なかったと思います。どんなに男性向けな作品だとしても、同人誌を描く人のかなりの割合は女性なわけですが、テレビシリーズ当時のファンといえばほとんどが男だったことを考えると、同人誌を描くような女性が、劇場版以降にかなり入ってきたのではないか、と推察することが出来ます。女性だけではなく男性もですが、二次創作に需要ありということで、そこから更にファンが増えたのではないかとも思います。
 話を戻しまして、結果的に円盤がこれだけ売れたのですから、ライトなファンばかりを増やしたことにはならないんじゃないの? と言われそうですが、あくまでそれは劇場版の円盤の話です。劇場版公開後に、アンツィオOVAやテレビシリーズの円盤もじわじわと売上を伸ばしてはいるものの、劇場版の数字には遠く及びません。テレビシリーズ+OVAが入ったBD-BOXを出したらめちゃくちゃ売れそうではありますが、それでも高価なBOXが10万セットも売れるとは考えにくいと思います。
 深夜アニメで、テレビシリーズの円盤と比較して、総集編じゃない劇場版の円盤が数倍以上売れること自体は普通です。これは、何も劇場版効果でファンが増えているわけではなく、テレビシリーズの円盤を揃えるほとお金は無いけど、劇場版の円盤だけなら買える(買う)ような人が多い、のだろうと観ています。
 ただ『ガルパン』の場合、テレビシリーズやOVAの売上と劇場版の売上の差があまりにも大きいので、テレビシリーズから好きだったけど円盤までは買ってないファン+劇場版から入ったファンの合算でより大きい数字になったのではないでしょうか。
(注:統計など何も取っておらず、あくまでも僕の観察範囲での推測です。あしからず)

  • 劇場版がテレビシリーズと同じ構成だった〜作品に入りやすかった?

 以前にも記事にしましたが、劇場版がテレビシリーズと同じということで、「ストーリー的には見どころが無かった」だとか、「また廃校ネタかよ」という話は複数出ていたと思います。見どころが無かったとまでは思いませんが、僕も初見では、構成的には同じなんだなあ、とは思いました。
 劇場版観た直後に、この構成の意味するところを考えた時は「テレビシリーズからのファン向けムービー」として作りたかったからだと思いましたし、テレビシリーズのスペシャル版を目指したんだろうなあと思っていました。キャラクターも、テレビシリーズやOVAで出てきた主要なキャラを勢揃いさせたオールスターズ的なものにした上に、劇場版から登場した新キャラも加わるなどしたためキャラの数が膨大になり、代わりにストーリーのほうを出来るだけシンプルにしたかった意図もあったのだろうとも思いました。なのですごく納得していたわけですが、先ほどの項でも書いたとおり、劇場版からの新規ファンが大量に参入した、あるいはテレビシリーズの頃にはそこまでハマっていなかったような人が劇場版のリピーターになった理由にはならない気がします。なので、実はそのストーリーが同じようなものだったことが、より新規ファンを集められた理由の1つになっているのではないかと考えてみました
 簡単に結論を書くと、「劇場版を観ればテレビシリーズの流れとか面白さをある程度味わうことが出来る」ということだったのかな、と考えています。先ほど、テレビシリーズと同じ構成だったと書きましたが、ある程度駆け足かつ、テレビシリーズよりも段階を踏んではいませんが、

「エキシビジョンでの大洗市街戦」
     ↓
「日常パート(戦車戦してない時のパート」
     ↓
「決戦(決勝戦)」

という流れは、テレビシリーズを観なくとも劇場版だけ観てもわかるものです。そしてシンプルこの上ありません。そして、『ガルパン』の最大の見せ場はストーリーではなく、もちろん戦車戦です。その戦車戦を楽しませるために、ストーリーが邪魔になってもいけないわけです。そして、戦車戦を最大の見せ場とするための構成が、テレビシリーズのそれだったとすると、そこをいじることで『ガルパン』という作品の面白さを損なうおそれもあるわけです。それを避けるために、敢えていじらない決断をしたのだろうと考えています。
 結果的には、二次創作ほかでキャラクターの人気に火がついて、その中でも新キャラの人気が高くなったことから、劇場版の成功がより証明されたのだろうと思うと同時に、新規で入ってきた人たちの影響も大きいのだろうなとも思っています。
 では逆に、テレビシリーズの構成をいじった場合はどうなっていたのでしょうか? こちらはたらればになるのでわかりませんが、もし例えば、大洗女子側が負けてバッドエンド的なものだったら……と考えると、これほどまでにリピーターがついたとはとても思えません。
 他の作品の例を挙げると、例えば前述の『まどマギ』や『けいおん』です。『まどマギ』では、テレビシリーズではまどかが神様みたいになりハッピーエンド(?)的なものでしたが、劇場版ではそのまどかをほむらが取り込んで、また別の世界が出来た、みたいな終わり方でした。構成的には、前半のぬるい魔法少女ものからの、テレビシリーズ以上にハードに魔法少女同士がやり合ったりして、ハッピーエンドで終わりそう……という流れでしたから、テレビシリーズとそこまで大きくは違わなかったのかなとも思います。『けいおん』では、まずテレビシリーズの最終回の後に続く後日談でもありませんでした。そしてテレビシリーズでも旅行には行っていたとはいえ、日本を離れてイギリスに行ってしまうという展開に。後半は学校に戻ってきてあれこれ……でしたが、個人的にはテレビシリーズとは違うものを見せられている感がありました。
 どちらも、リピーターがつかなかったわけではありませんが、テレビシリーズからのファンの多さや、劇場版公開しての初動からの興行収入の伸びや円盤の売上に関しては、『ガルパン』に及ばないという数字でした。順番が逆なのでどうかはわかりませんが、これら2作品に関して言えば、テレビシリーズと異なることをやった結果、思ったほど伸びなかったのかな、と観ています。結果として『ガルパン』がテレビシリーズと同じ構成を取ったのは、『映画けいおん!』の脚本も書いた吉田玲子さんあたりの意見もあったのかもしれませんね(そんなことが表に出てくることも無さそうですが)。
 ちなみに、『けいおん』は1度しか観に行ってませんが、『まどマギ』は3,4回観に行ったくらいには好きなんですけどね。

                  • -

 とまあ、スタッフインタビューとかもほとんど観れてませんので、ほぼ推測で書いてしまいましたがどうでしょうか。
 個人的に、水島努監督は割と商業的なことを気にしていて、他のヒットした作品の動向なども観ながらジャッジしてると思っていますので、そんなに大きくハズれているとは思いません。ただ、公式の見解では無いので、あくまでも1ファンが言ってることに留めておいてほしいと思います。
 この『ガルパン劇場版』の大ヒットを受けて、続く作品があるのかが今はとても気になってます。さすがに、色んな幸運が重なったり、映画というコンテンツでこそ映える要素をいくつも持っているようなアニメが、テレビシリーズからヒットすることも難しいことだとも思いますが。

ガールズ&パンツァー 劇場版 コンプリートブック

ガールズ&パンツァー 劇場版 コンプリートブック

ガルパンのお嬢様キャラから観る、ガルパン世界の極端な世界観と、その常識・非常識の線引き

 ガルパン劇場版の円盤がすごく売れているようですね。興行収入の伸びは、色んな上映形態やリピート客の頻度の高さだけではないことを示してくれたように思います。
 さて、ガルパンキャラで個人的に好きで気になっているのが、お嬢様キャラたちです。大洗女子には五十鈴華が、聖グロリアーナ女学院にはダージリンが(聖グロ自体がお嬢様学校という設定でもある)、劇場版で登場した大学選抜チームには島田愛里寿が、それぞれ該当するかと思いますが、日常アニメなら1人くらいしかいないお嬢様キャラがこれだけ居るというのは、キャラクターの多さを差し引いてもかなりのものだと思います。普通は「お嬢様キャラ」という設定だけで個性にもなってしまうので、複数居るというのは各キャラの個性や印象が薄まってしまうのではないか……と懸念してしまいたくなるはずが、ガルパンでのお嬢様キャラの個性や印象は薄まるどころか、劇場版を経て更に際立ったようにも感じます。
 個性的なのはもちろんなのですが、個人的にはそれ以上に、このガルパンという作品の様々なものを示していたり、あるいは映し出す重要なパーツにもなっていると思っています。そんなお嬢様キャラたちがどういう描かれ方をしているのか、自分なりに考えてみたいと思います。

常識/非常識の境界線〜世界観を伝える役目としてのお嬢様キャラ、という視点
 ガルパンの世界観は結構無茶苦茶だと思っていますが(合ってますよね?)、そんな無茶苦茶な世界観の中で、どこまでが普通(常識的)なのかの指標として、それぞれのお嬢様キャラたちを使っているように感じます。

 まず五十鈴華の場合だと、主にテレビシリーズでの常識的なボーダーラインとして描かれていました。大食らいなところ……は、途中からはスタッフが遊びで盛りまくったという話も聴いているのでどうかわかりませんが、ガルパンの、少なくとも大洗女子では、あの華さん盛りに対して誰もツッコミを入れていなかったところを観ると、あれくらい食べる女の子がいるのは変ではない、という世界観だと描いているのかもしれません。大食いのお嬢様キャラといえば、アイマス四条貴音がいますが、何か関係はあるのでしょうか……。
 大食い設定はともかく、名前の通り華道を嗜んでいる、という設定は大きいような気がします。何せ「◯◯道」で戦車道にも繋がるようなことを嗜んでいるキャラなわけですから。そしてそんな華さんは、最初は操縦手を担当してみますが、その後砲撃手に転身すると、見事にサンダース高校のフラッグ車を撃破してみせました。その後も数々の軍功を上げる活躍を見せましたが、どうして華さんが砲撃手として優れているのかという説明は無かったように思います。推測になるのですが、やはり華さんが華道を嗜んでいて、そこで培われてきたものが戦車道の砲撃手のスキル(適性)にも生かされている、ということなのかなあとぼんやりと考えています。集中力なのか、創造力なのか、あるいは……。華道がどうして戦車道に繋がるのか、ほとんど無理やりだしこじつけですが、その道を極める人間は他の道に置いても強い、ということを示しているのかなあと考えたりしています。
 身近にいる、違和感を持たれない程度のチートっぽい存在、それが五十鈴華というキャラクターなのかなあと思っています。

 ダージリンの場合はもっと極端ですよね。実のところ、どんな家の出なのかとかは一切触れられていないどころか、本名すらわからないというのがそもそもすごいと思います。戦車に乗りながら紅茶を飲むことは自然で当たり前のこと……となっていますが、4DXを観に行かれたからならわかると思いますが、あの振動(本当はもっと凄いのでしょう)の中で紅茶を一滴もこぼさずに飲む、とかおかしいにも程があります。そして自身は紅茶を飲みながら指示を出すだけで、操縦などは何もしていません。が、ここについては、車長というものはそういうものらしく、大洗女子の会長である角谷杏が干しいも食ってるのと近いのかもしれません。
 個人的に、ダージリンというか聖グロリアーナで一番気になっているのが、ダージリンが「様」付けで呼ばれていることです。特に、同学年と思われるアッサムが「ダージリン様」と呼んでいることを考えると、チームの隊長に対しての呼び方なのかもしれない……と思うしか無いのでしょうか。ダージリンの気品とか漂わせているオーラとかを考えると、聖グロリアーナ戦車道チームの隊長……というだけではなく、生徒会長を兼任しているとか、あるいは身分そのものが高いのか、と想像してしまいます。積極的に外交をしている姿とかも観ていると、どうにも王家のお姫様っぽい感じもするんですよね。なので「様」付けされているのかなと。同じ高校生が「様」付けされて呼ばれている光景にも、驚くキャラは特にはいないことを考えると、これもまたこの世界においては、あり得ること、ということになるのでしょう。直接関係ないですが、聖グロリアーナ女学院という学校はお嬢様学校らしい、ということは、アッサムやオレンジペコはともかく、ローズヒップもお嬢様、ということになるのですよね……。その中でも、よりダージリンがお嬢様かつトップに立つキャラクターとして描かれているので、お嬢様の中でも色々ある、という世界観としても描いているのでしょうか。
 ちなみに、ダージリンオレンジペコを連れて大洗女子の試合を観戦しにきたり、みほに助太刀しにきたりしているのは、ダージリンがみほのファンだからなのかなあと考えていますがどうでしょうか。

  • 島田愛里寿の場合

 島田愛里寿の場合は、ダージリンとかと違って本名のようですが、13歳でも飛び級で大学に入れる、というあたりは、この世界でも凄いことではあるけれど、あり得ることとして描かれているように感じます。また、13歳の天才少女隊長に、大学生のお姉さんたちが付き従っている姿も面白いですよね。こういうシチュエーションだと、やっかみが入ったり、どこか信用されない部分があったりとかしそうなものですが、全幅の信頼を持って戦っていたと思います。このことから分かるのが、ガルパンの世界はあくまでも実力主義なんだということでしょう。これは他のどのチームでも言えることなのですが、隊長になっているキャラクターは、いずれもその才覚をメンバーに認められて隊長になっている、ということでもあると思います。その一番の極端な例が、大学選抜チームの島田愛里寿なのではないかと考えています。何せ、いきなりボコの歌を歌い出しても、許容するどころか、本気モード全開の合図だと喜んでいるくらいですからね……。お姉さんたちも、その才覚に惚れている証拠なんでしょう。

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 何かもっと色んなことを指摘したかったのですけど、長くなったのでこのくらいで。ただ、お嬢様キャラというキャラ設定を、ガルパンの世界観を構築する上で、あるいは作品そのものの面白さにも関与するという意味では、非常に考えられた使い方をしているように感じています。
 今回挙げなかったキャラクターでも、例えばプラウダ高校のカチューシャとノンナは、他のプラウダ高校のメンバーと違って訛りが無かったりするなど、田舎高校では特別な存在なのかなと思ってしまいますし、知波単学園の西隊長も育ちの良さを感じる部分があります。
 身分差とかがあるわけでもないと思ったりもするわけですが、そういうところにも差異をつけたキャラ設定なのかな、と思うと、よりガルパンが面白く感じられるかもしれないので、注目していきたい部分だと思っています。

『ガールズ&パンツァー劇場版』は、何故テレビシリーズの焼き直しのような話だったのか?

 『ガールズ&パンツァー劇場版』(以下ガルパン劇場版)は通常版を2回、4DX版を1回観に行きました。ガルパンおじさんたちの足元にも及ばない回数でしたが毎回すごく楽しませてもらいました。通常版でも映画館で観るのに最適化された内容だったのですが、4DX版がまた面白かったです。お金を出す価値のある内容になっていると思いますので、機会がある方は是非試してみてください。
 さてそんなガルパン劇場版ですが、特に公開直後あたりにはこんな感想がしばしば流れてきました。

「劇場版ってストーリー的にはテレビ版と同じことやってるんじゃない?」

 確かに、エキシビションマッチからの試合だったり、廃校危機再燃に大洗女子側が勝つところまで、物語の構成上はテレビシリーズも劇場版もほぼ同じと言っていいと思います。なので、ストーリー的にはあまり見どころはない、戦車戦を楽しむためのおまけみたいなものだ、という感想も見かけました。それは極端なものかもしれませんが、そう思われても致し方無いのかなとも思っていました。
 ただ、ストーリー的に見せたいのであればそうすることも出来たでしょうし、予想に反するような展開(例えば大洗女子側が負ける、だとか)を持ってきて、観に来たファンを驚かせるようなものにも出来たとは思います。ただ、それを制作陣は敢えてやらずに、テレビシリーズと同じような構成に敢えてやった、のだろうと考えています。恐らくは、こうした「テレビシリーズと話的には一緒」という感想というか批判が出るのも織り込み済みだったのではないかとも考えられます。
 では、劇場版のストーリーをテレビシリーズの焼き直しのようにした理由や狙いは一体何処にあったのでしょうか。インタビューではあまり語られているのを観たことはありませんが、自分なりに考えてみたいと思います。

  • ガルパンというアニメの面白さとは? の追求から

 ガルパンというアニメって結局のところ、どう面白かったのか、という部分について追求した結果なのかな、と考えています。
 テレビシリーズのBD各巻についていたOVAのような内容でも、アンツィオOVAのような形でも、ごくごく一部でしかなかったと思います。エキシビジョンに本戦の戦い、日常風景に国際色豊かな描写、様々なミリタリー要素に聖地・大洗の風景……。それらを一通り全て描いてこそ、ガルパンなのではないか、という感じで制作されたのだろうと思っています。
 廃校危機の再燃……はちょっと安直かなとも思うわけですが、「『ガルパン』ミリタリー生コメンタリー上映会」で言われてたという、

大洗の女の子たちは強くなるために戦っているわけではないので、モチベーションを持たせるために再度学校を困難に陥れた。
『ガルパン』ミリタリー生コメンタリー上映会で判明したこととは? 笑いと驚きの連続だった2時間をレポート」(「電撃オンライン」記事より)

 以上のような理由なら納得が行くかもしれません。
 ただ、同じく廃校危機でも、テレビシリーズではあまり表立った動きは描かれなかった会長が、裏でどれだけ尽力していたのかという部分を劇場版では描けましたし、そこから、主人公である西住みほの母親のしほが、戦車道の家元としてどのような立ち位置なのかという部分にも踏み込めましたし、ガルパンの世界観をより立体的に描くことに繋がったような気がします。
 エキシビジョンにしてもそうです。知波単学園や継続高校という新キャラも出せましたし、ダージリンとカチューシャがタッグを組んで大洗女子と戦うのも、テレビシリーズで個別に会って話をしていたというエピソードを利用したものでしたし、ちゃんと繋がっているんですよね。
 大洗の色々な場所を登場させてより派手に市街戦をやったり、他にも色々とありましたが、テレビシリーズで面白かったことを再度描いていても、より膨らみのあるものとして描き出した、というのがガルパン劇場版だったのではないかと思っています。

  • テレビシリーズと違うことを描きたくなかった〜ファン向けムービーとしての劇場版

 テレビシリーズからの劇場版アニメといえば色々とありますが、中にはテレビシリーズとは毛色の違う劇場版に仕立てていた作品もありました(『魔法少女まどか☆マギカ』なんかは、流れとしては近いようであっても、ややバッドエンド的な結末だったあたりが随分と違うのかなと)し、京都アニメーション山田尚子監督作品『たまこまーけっと』は、劇場版では『たまこラブストーリー』とタイトルすら変えた、テレビシリーズとはジャンルからして異なる内容のものでした。水島努監督が手がけた『クレヨンしんちゃん』の映画版なんかも、本編とは全く毛色の違う内容になっていました。
 個人的には、ガルパンではそうはしたくなかったのではないかと考えています。理由は上記(「ガルパンというアニメの面白さとは? の追求から」の項)の通りなんですが、あくまでも、テレビシリーズのファンに向けて作るものなんだ、という方針みたいなものが見えてきます。要は、これがガルパン初見な人にはどう見えるのか、面白いのか、という部分については全く考慮されていないというか、それを映画冒頭の「3分でわかる……」に丸投げしてしまった感が満載だと思うわけです。その代わり、先ほどの項でも触れた、テレビシリーズで触れていたネタの数々を伏線としたような内容を、いくつも劇場版に取り入れているのだろうと思います。
 当初は、テレビシリーズやアンツィオOVAを観てきた、コアなファンに観てもらえたら良い、くらいの感じで作られていたと思いますし、実際に公開されてから何週かは特典を付けて、特典目当てで観に来てくれたら良い、という、いわゆるオタクアニメ映画という位置づけだったのだろうと思っています。
 ここまで興行収入が伸びるとは、誰も想像すらしていなかったと思っていますが……。

 最初の項と被りますが、テレビシリーズのパワーアップ版というか、全てにおいてスペシャル感を出したかったのだろうと考えています。
 内容についてもそうなんですが、例えばこのキャラクター数。テレビシリーズのほとんどのキャラを登場させるだけではなく、出てきたキャラはセリフも喋っています。しかしそれだけにとどまらず、新しく登場した知波単学園や継続高校、そして大学選抜チームのメンバーたちが新キャラとして登場してきます。テレビシリーズのキャラ数でも、1クールアニメとしてはかなり多いくらいの数だったにも関わらず、映画というわずか2時間くらいのボリュームの中に、あれだけのキャラクターを登場させることで、ある種のスペシャル感というか「オールスター」的な映画になったのではないかと感じるのです。『プリキュア』シリーズであれば過去に何作もあった中から登場してオールスターになるわけですが、ガルパンの場合だと所詮1クール+OVAというボリュームに新キャラを加えただけでオールスター感を出しているわけです。結構凄いことだと思います。ガルパンキャラは劇場版公開後に様々な二次創作が出てきましたが、キャラクターの濃さがそのオールスターさを際立たせてくれているようにも感じました。
 戦車の数や種類もさらに増えました。超大型戦車が出てきたり、それもう戦車ちゃう……というヤツも出てきたりと、こちらもオールスターのような様相を呈していたと思います(ミリタリー関係には疎いのであまり触れません)。戦車のディテールも細かくなったと聴いています。
 他にも、音響関係がとんでもなく作り込まれていたということで、立川シネマシティなど音響自慢の映画館が聖地化するというのも、結果的にはスペシャル感を生み出したことになると思いますし、戦車の挙動の細かさや戦車戦のシーンを極限まで増やしたことにより、後日4DX上映が決定してかつ、その良さを存分に引き出すことにも繋がっていきました。その4DX上映も話題になりました、奇しくもアニメファンに4DXの面白さを伝播することにもなるのも興味深いことだと思いました。

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 劇場版で、とことんまでスペシャル感を追求した結果として、ファン向けムービーを目指して作られていたものが、初見を取り込んでファン拡大に繋がったのですから、何がどう転ぶのか本当にわからないなと思いました。

【関連記事】
劇場版ガールズ&パンツァーで、西住まほが実家近くで犬を散歩させていたことに対する考察
(当ブログの過去記事)

2016年春期オリジナルアニメ、6本の展望と予想

 3月も終わりに近づいてきて、そろそろ来期アニメが気になり始める頃ではないでしょうか。このブログでもその来期アニメの1つ「迷家-マヨイガ-」を真っ先に取り上げましたが、他にもいくつか気になるタイトルがありますし、さすがに年度替わりでもあり、各社とも力の入った作品をスタンバイさせているようです。
 原作もののアニメは、原作を知らないこともあって何とも言い難いところがありますが、オリジナルアニメであればスタッフ構成とかジャンルである程度見通せるんじゃないかと勝手に考えています。なので、原作もののアニメは他の方に任せるとして、ここでは気になっている来期のオリジナルアニメについての展望とかを書いていきたいと思います。

 以前にも展望とかを書きましたが、改めて。
 個人的には、水島努監督×シリーズ構成岡田麿里というタッグがどうというよりは、アイドルでもない、スポーツものでもロボットものでもない、あまり被るものが無さそうな内容という点が強みになるような気がしています。というのも、例えば「ガールズ&パンツァー」や「SHIROBAKO」がヒットした理由の1つとして挙げられるのは、「他にはない内容(ジャンル)だった」ことではないでしょうか。その意味では、この迷家も十二分に差別化されているのではないか、と現時点で既に感じています。
 もちろん、内容が面白いかどうかについては全くわかりませんし、いくら水島努監督といえどダメかもしれません。でもまあ、観ておいて損は無さそうな気がしています。
 キャラデザの井出直美さんは「艦これ」アニメでもキャラデザをされていましたが、色んな絵師さんの絵を取り込んで、かなり可愛いキャラに仕上げていたように感じました。「迷家」ではもちろん可愛いだけのデザインでもなくなってますが、パッと観た感じでは良さそうなキャラデになっているような気がしています。そこから動いてどうなるか、楽しみです。
迷家 公式HP>http://mayoiga.tv/
■関連記事「水島努×岡田麿里の新作アニメ『迷家』の展望とか期待とか」

 「SHIROBAKO」や「ハルチカ」などを制作したP.A.WORKSが、満を持して送り出すロボットもののオリジナルアニメです。監督は、PA作品で頻繁に絵コンテとして参加している岡村天斎さんということで、PAのファンの方からするとようやっと監督作が来たか、という感じなのでしょうか。個人的に岡村天斎監督といえば「世界征服〜謀略のズヴィズダー」にかなりがっかりした記憶しかないので不安は不安です。それに今さら、ここ最近ではヒット作を観ないロボットものをわざわざ作るという企画意図も、ちょっと時流を読めてない感じがしてしまいます。この作品のシリーズ構成である檜垣亮さんは、オリジナルアニメの脚本家としては未知数な点も不安視しています。
 ただし楽しみな点もあります。それは、PAの社長でもありアイデアマンとしても有名な堀川憲司さんがロボットものをやろうとしている、というところです。堀川さんといえばかつて「エヴァンゲリオン」の制作進行として修羅場をくぐってきた経験もありますが、PAで制作してきた「Angel Beats!」や「花咲くいろは」「TARI TARI」そして「SHIROBAKO」など、さまざまなオリジナルアニメも企画段階から関わり続けています。特に「SHIROBAKO」などは、やろうと言う人はいても、それを本当に制作するところまでは行かないような企画を通し、そしてヒット作にしてしまうのですから、アイデアマンとしてもプロデューサーとしても非常に優れているのだろうと思います。
 そんな堀川さんが満を持してロボットアニメを作るというのですから、ただのロボットアニメではないのではないか? と考えてしまいます。大本のアイデアを出したのは堀川さんではないかもしれませんが、最近のロボットアニメに対する何かしらのメッセージ的なものも込められるような作品になるんじゃないかと、ロボットものに飽き飽きしている自分みたいな人間は期待してしまうのです。どっちに転ぶのでしょうか。
クロムクロ 公式HP>http://kuromukuro.com/

 ガルパンの軍事考証をやっている鈴木貴昭さんが原案で、吉田玲子さんがシリーズ構成、キャラクター原案を「のんのんびより」のあっと先生が担当するオリジナルアニメです。監督があまり経験の多くない人なのがどうなのか、とは思ってしまいますが、日常系っぽく見せる外見と、どことなく海系のミリタリーものの匂いがするような気がするあたりから、ポストガルパンを意識したアニメになるんじゃないかという感じで観ています。CGもガルパンと同じグラフィニカですからね。「艦これ」のような戦争的なものが含まれるのか、ガルパンのようにあくまでもスポーツ的なものなのか、あるいは日常系なのかで大きく観られ方が変わりそうな気がしています。
 個人的には、OPの「Try Sail」が気になっています。これが受け入れられるのかどうか。キャストにも3人ともに入っているので、ゴリ押し感みたいなもので敬遠されないかどうか、です。ただ、Try Sailの「Sail」って舟の帆って意味でもあるんですよね……。その意味では、上手くハマる可能性もありそうですから、ブレイクする可能性もあるのかもしれません。
はいふり 公式HP>http://www.hai-furi.com/

 「岡田麿里×TRIGGER」を前面に出すオリジナルアニメです。岡田麿里さんがシリーズ構成だけではなく原作にもクレジットがあるため、相当にマリー節全開の作品になりそうなのが、吉と出るかどうかってところなのかもしれません。CM観た感じではどんなアニメになるか全くわからないんですけどね。
 監督は小林寛さん。これがアニメ初監督ということで監督の手腕としては未知数なのですが、岡田麿里さんとは「ブラック★ロックシューター」のTVアニメ版で脚本と絵コンテ・演出として組んだことがありました。BRSもだったと思いますが、「キルラキル」でも非常に素晴らしい演出をしていた回を担当していたりしたので、TRIGGERとの相性も良さそうですし、演出面ではかなり期待できそうです。あとはストーリー面でマリーがしっかりしたものを書いていてくれさえすれば……(そこが肝心なのですけど)。
キズナイーバー 公式HP>http://kiznaiver.jp/
■関連記事「ブラックロックシューター4話のスマホのバックライトの演出が素晴らしい」

 「進撃の巨人」の荒木哲郎監督が「ギルティクラウン」に続いて送り出すオリジナルアニメです。進撃の巨人立体機動装置みたいなものが出てきているあたりがどうなのでしょうか……。
 個人的には、キャラクター原案に美樹本晴彦さんを起用したあたりがやや微妙です。PV観る限り、男性キャラに関しては悪くないものの、女性キャラに関してはやや古くさいという印象を持ちました。何となく目が小さすぎる感じがして……。ただここに関しては、作品的に今風のアニメの女キャラでは違和感が出る点かもしれませんし、癖の強い感じのキャラデザにもなっていませんから、そう気になるようなところではないのかもしれません。
 問題は、進撃っぽいと言われそうな最大のポイントである、澤野弘之さんの音楽かなあと思っています。何というか、だいたいどれも同じイメージになってしまうというか、あまり引き出しが多いように聞こえないんですよね。新鮮なうちは良いのですが、作品数を重ねるごとに新鮮味がどんどん失われてしまうとも思います。そこで、進撃っぽいところとどう差別化していくのか、という部分で荒木監督がこれから羽ばたいていくのか、あるいはオリジナルは微妙なままなのかって分かれていくと思っています。
 大型企画だとは思うのですが、WIT STUDIOのオリジナルアニメ企画のプロデュース力も問われそうな気がしていますがどうなりますか。
甲鉄城のカバネリ 公式HP>http://kabaneri.com/

 期待している方も多いのかもしれませんが、河森正治関連企画×アイドルものってところで割とどうでも良くなっています。
 ガンダムものも頭打ちになっている世の中ですから、マクロスシリーズだから! というのもなかなか通用しなくなっているんじゃないんですかね。
マクロスΔ (デルタ) 公式HP(マクロスシリーズのポータルサイトです)>http://macross.jp/

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 事前予想としては、個人的には、

迷家-マヨイガ-
キズナイーバー
甲鉄城のカバネリ
はいふり
クロムクロ

 ですね。
 マリー案件のワンツーとなってしまいましたが、前者は企画やストーリー面で期待できそうな点と、後者は映像面のパワーも期待できそうなところで推しています。
 カバネリは、覇権も爆死もあるような怖い企画ですね。かっちり噛み合えば王道アニメにもなりそうですが。
 はいふりがわからないんですよね。このアニメにどういう期待をすれば良いのかどうか、という点まで。ガルパンはあくまでも水島努監督のタクトがあってこそのヒットだったと思うので、鈴木貴昭さんと吉田玲子さんだと「マジェスティックプリンス」みたいなものもあったわけで(それなりには面白かったですけどね)。
 クロムクロは今のところ、期待よりは不安のほうが大きいということで。
 僕の展望とか予想が当たるとも思えませんが、1つ来期のオリジナルアニメの視聴の参考になれば幸いです。
※参考
【2016春アニメ】 から7作品。気になった作品を紹介します(その2)
(ひそかブログ)
原作付きアニメの紹介が詳しいですので参考までに。

恋愛関係を描かない、ハーレムっぽいのにハーレムじゃない『この素晴らしい世界に祝福を!』

 原作未読ですが、今期アニメの「このすば」こと「この素晴らしい世界に祝福を!」が面白いですね。当初は全く期待していなかったのですが、1話の変なテンションと妙な感覚が面白くって、今期は「昭和元禄落語心中」とともに最も楽しみにしているくらいのアニメになっていました。雨宮天さん演じる、女神アクアの喜怒哀楽とかテンション(ともちろんお尻)を眺めているだけで飽きないというのもありますが、ぽんこつな4人のパーティーの仲の良さみたいなものも観ていてほっとするなあ、と思っています。アニメの円盤はまだどうなるかわかりませんが、原作は相当な勢いで売れているようですし、今期を代表するアニメと言っても過言ではないのでしょう。
 そんな4人パーティーですが、ちょっと特徴的なんじゃないかって思う部分があります。それは、キャラの性別的な配置だけからすると、男が主人公1人だけの、女は3人という典型的なハーレムものだと思うのですが、そうはなっていないという点です。つまるところ、パーティーを組んでいる他の3人の女キャラが、主人公に恋愛感情を抱いていないどころか、フラグすら立っていないのです。男として観られているかどうかも、馬小屋で主人公と寝泊まりしているアクアを観ていると疑問ですよね。
 原作のこの先の展開がどうなっているのか、あるいは主人公へ何かしらフラグが立つことがあるのか、それはちょっとわかりませんが、このパーティーが恋愛感情が無いまま進行することそのものが、この「このすば」というアニメの人気を生み出しているのではないかと考えています。

  • テンプレ的なハーレムものと一線を画している

 さきほども書きましたが、主人公の取り合いだとか女キャラ同士が恋敵になる展開だとか、そういうよくあるハーレムもののラノベ原作アニメにはなっていない、というところは素直に良い点なんだろうと思います。もちろん、これまでにそういう作品が無かったわけではなく、斬新な設定なわけでもないのでしょうが、こういったRPGモチーフの冒険もの(?)では珍しい設定だったのかもしれません。

  • ヒロインキャラがデレて魅力半減するのを防止できる

 以前にとある友人から持論として聴いたことなのですが、「ヒロインキャラが主人公にデレた瞬間から一気に魅力を感じなくなる」ということが防げる、と思います。
 この持論(?)ついても反論等あるかと思いますが、でも確かにデレるまでの関係性のほうが魅力的なケースは数多く挙げられるような気がしますし、あの堕ちるまでの関係性の緊張感みたいなものが面白かったりすることもあると思います。
 要は、例えば日常もののように、変わらない関係性をのんびりと楽しむことが出来るとも言い換えられるのではないでしょうか。

  • 恋人同士や誰が好きだとかっていう内容よりも、男女の友人関係が楽しい

 恋人同士になってしまう作品がそれほど多いとも思えませんが、恋愛感情を持ったり、そういう描写があったりしないほうが友人関係のままでいられるということで、より楽しいと感じる視聴者が少なくないのではないか、と考えています。
 日常系と呼ばれるアニメでは、同性同士(女の子同士)の友情がメインで描かれるわけですが、男女でだとどうしても恋愛だとか片思い展開を描きがちです。そこを、このすばでは誰にも片思いなどをさせず、更に言えば主人公が女性キャラに対してキョドったり照れたりせず、何よりあまり女の子扱いをしていないことで、より恋愛関係からは遠く、でも仲間としての距離の近さを描けていると思います。友情とは違うかもしれませんが、仲の良さはしっかり描けていますし、それが妙な心地よさを生み出しているのではないかと考えています。

  • 恋愛と食い合わせの悪いギャグを思う存分描ける

 これは持論なのですが、恋愛展開とギャグって相性が悪いと思っています。ギャグアニメといえばで名前が出てくる水島努監督の『よんでますよ、アザゼルさん。』や『監獄学園』などは、男女ともに出てくるアニメではありますが、メインキャラ間に恋愛関係だとか片思い的な描写はほとんど無かったと記憶しています。
 個人的には恋愛とギャグは食い合わせの悪さを感じてしまいます。具体的なタイトルは伏せますが、恋愛とか片思いみたいなものが入ってしまうと、笑わせるためだけのネタを入れる展開になりにくいと思っています。あっても勘違いネタとか鈍感主人公みたいなもの止まりになってしまうように思います。
 このすばではそうはなってないですよね。恋愛関係みたいなものは描いていないので、思う存分笑いの方向にも振り切った展開になっていると思います。1話の労働のところとか、まさにそんな感じでしたよね。

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 とまあ色々と書いてみましたが、原作やアニメのこの先の展開で、恋愛的なものが描かれるのかどうかはわかりません。ただ『これはゾンビですか?』でも男女の家族的な関係性を描いていた金崎貴臣監督なので、意識的に男女が同時に出てくるけどそこに色恋的なものは描かないようにしたい、という意識もあるような気がします。このすばエンディングは完全に家族ですからね。なので敢えて薄めているような気がしなくもありません。
 もう少し笑える展開が欲しいなあと思いつつも、この先もこのすばには注目していきたいと思います。

劇場版ガールズ&パンツァーで、西住まほが実家近くで犬を散歩させていたことに対する考察

 2度目の『劇場版ガールズ&パンツァー』観てきました。そして、先日発売になった「ガルパンFebri」買ってきて読んでるんですが面白いですね。スタッフインタビューではほぼ全員が「監督が……」ってことを言ってますし、恐らくは水島努監督の意向がかなり反映されたんだろうなあと思っています。

ガルパンFebri

ガルパンFebri

 その中でも、音響監督の岩浪美和さんのインタビュー記事が非常に興味深くて面白かったのですが、そこで語られていた以下の部分に「おっ」となってしまいました。

(劇場版でみほが実家に帰ったときに……)まほの横にすごくうれしそうにしている犬がいるじゃないですか。尻尾をブンブン振って、ハァハァしている性格のよさそうな犬。何も考えないと、あそこに「ハァハァ」って犬の息をつけてしまうのですが、それをしてしまうと、視聴者がまほじゃなくて犬を見てしまう。見せたいのは、あくまで妹が帰ってきたときの姉の表情なので、それを理解している小山さん(音響効果の小山恭正さんのこと)は犬に音をつけてこない。「何を見せたいか?」というのを映像からきちんと読み取って音に変換する工夫は、そういうところにもあります。
ガルパンFebri043ページより>

 ちょっと長々と引用してしまいましたが、音響チームというのがここまでコンテなどを理解して音をつけたりつけなかったりという取捨選択をしているのか、と感心してしまいました。
 そこでふと思ったのですが、なぜ「西住まほは犬を連れていた(散歩させていた)」のか、という部分です。あるいはなぜ「犬」だったのか、という部分でもあります。ということで、劇場版のこの、みほが帰省してきた時に姉であるまほが犬を散歩させていたこの1カットの意味について考えてみたいと思います。

  • 何故、西住まほは「犬」を散歩させていたのか?

 まずは何故、まほが犬を散歩させていたのか、について考えてみたいと思います。

 というか、統率の取れたチームを率いていて、基本的には忠犬みたいな人間しかいない黒森峰女学園を観ていると、そんな西住家が犬を飼っているというのは非常に納得がいきます。というか、西住家で猫を飼っているというのはあまり想像が出来ません。ついでに言うと、この犬は子犬という風には見えないので、つい数カ月前に大洗女子に転校してきたみほが、実家にいた頃からいた可能性が高いとも考えられます。となると、久々の再開に喜んで飛びかかってくる……というシーンがあっても良さそうなものでしょうが、ここはあくまでも岩浪さんのインタビューの引用部分の通り、姉妹の再会のほうがメインになるわけですし、だからここでの犬はまるで置物のようにアクションを起こさなかったのだろうと思います(そもそもみほが実家で犬を飼っていたエピソードなんてテレビシリーズでは1度も出てきてなかったはずですしね)。
 西住家で飼われている犬が、柴犬風な感じだったのは意外でした。ママンや黒森峰のイメージからするとドーベルマンくらい飼っていたほうが似合っているように思うからです。が、ここは西住家は西住流の家元ではあるけど、島田流の島田家のようなお金持ちではない、という設定が生かされている部分なんだろうと思います。さすがに一般家庭でドーベルマンみたいな犬はなかなか飼わないでしょうしね。普通の家庭であることの1つの象徴が、この普通の犬に表れているのだろうと思っています(戦車道でやらかしたから娘を勘当するような家庭の何処が普通なんだ、というツッコミも当然あるでしょうが)。
 また、みほが正面から家に帰りづらいという事情をまほは知っていて、外で散歩でもしながら妹の帰りを待っていた可能性も高いと思います。結局のところ、この帰省中にみほは母親とは顔を合わせていないんですが、そのくらい避けているような状態なんですよね。なのでまほは、大洗女子の会長あたりからみほがいつくらいに帰省してくるかを予め聞いていて、頃合いに犬の散歩をしつつ、みほが家の中に入れるように待っていたのではないか、という妄想をしています(実際にはどうかわかりませんが)。

  • まほが「犬」を散歩させる必要性があったのか?

 犬の考察についてはともかく、まほが犬を散歩させている途中でみほと再会する、というシーンで本当に「犬」は必要だったのでしょうか? そもそも、姉妹の再会がメインで、アクションというか音すらつけないような犬がそもそもいなくても良かったのではないか? という疑問が湧いてきます。そこで、犬の散歩ではない、外で偶然落ち合うシチュエーションを考えてみました。
 まず、犬なしで1人で散歩しているケース。おばちゃんかっ! 女子高生が1人でウォーキングしているのは微妙な気がします。
 ジョギングをしているケース。黒森峰のエースですしストイックさもあると思いますから、トレーニングを欠かさないという描写を込みで良いんじゃないかと思うわけですが……。ただテレビシリーズや劇場版を通して、ガルパンでトレーニングをしているといえば、アリクイさんチーム(ネトゲ)くらいだと思うんですよね。しかも、引きこもりのゲーマーだったのが一念発起してトレーニングを始めるという、ギャグ寄りの描写になっていましたし、まほがトレーニングをしているシーンを入れるとそっち寄りの印象を持たれてしまう可能性があるような気がします。よって、ジョギング中に再会する、というのも使いにくいと思います。
 自転車で出かけているケース。買い物などで出かけているという意味では自然なのですが、自転車という「乗りもの」が出てきているところが微妙です。戦車を始め、作中で出てきてる乗りものはほとんどエンジンのついてる乗りものなんですよね。なのでここでまほが自転車に乗っているシチュエーションというのも、敢えて入れる必要がないと考えられます。
 そう考えると、犬の散歩をしている、というシチュエーションであれば、西住家なら犬を飼っていそうだとか、犬種からして普通な家なのかな、とか色んな意味付けもしつつ、想像も広がるようなものになるでしょうから、一石二鳥にも三鳥にもなる非常に効果的なものだった、ということなのだろうと推測しています。

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 色々と見ていきましたが、以上のような理由から、まほは犬を散歩させていたのだろうと考えられます。というか、このくらいはきっと考えて犬を出したのだろうとも思います。
 この犬のくだりだけでこれだけ色々と考えられるんですから、ガルパンの、それも劇場版の各エピソードは色んなネタを仕込んでいるのだろうと思うんですよね。なので、早く円盤が発売してくれないかなあ……とも思ってます。

これはサントラですね。