恋愛関係を描かない、ハーレムっぽいのにハーレムじゃない『この素晴らしい世界に祝福を!』

 原作未読ですが、今期アニメの「このすば」こと「この素晴らしい世界に祝福を!」が面白いですね。当初は全く期待していなかったのですが、1話の変なテンションと妙な感覚が面白くって、今期は「昭和元禄落語心中」とともに最も楽しみにしているくらいのアニメになっていました。雨宮天さん演じる、女神アクアの喜怒哀楽とかテンション(ともちろんお尻)を眺めているだけで飽きないというのもありますが、ぽんこつな4人のパーティーの仲の良さみたいなものも観ていてほっとするなあ、と思っています。アニメの円盤はまだどうなるかわかりませんが、原作は相当な勢いで売れているようですし、今期を代表するアニメと言っても過言ではないのでしょう。
 そんな4人パーティーですが、ちょっと特徴的なんじゃないかって思う部分があります。それは、キャラの性別的な配置だけからすると、男が主人公1人だけの、女は3人という典型的なハーレムものだと思うのですが、そうはなっていないという点です。つまるところ、パーティーを組んでいる他の3人の女キャラが、主人公に恋愛感情を抱いていないどころか、フラグすら立っていないのです。男として観られているかどうかも、馬小屋で主人公と寝泊まりしているアクアを観ていると疑問ですよね。
 原作のこの先の展開がどうなっているのか、あるいは主人公へ何かしらフラグが立つことがあるのか、それはちょっとわかりませんが、このパーティーが恋愛感情が無いまま進行することそのものが、この「このすば」というアニメの人気を生み出しているのではないかと考えています。

  • テンプレ的なハーレムものと一線を画している

 さきほども書きましたが、主人公の取り合いだとか女キャラ同士が恋敵になる展開だとか、そういうよくあるハーレムもののラノベ原作アニメにはなっていない、というところは素直に良い点なんだろうと思います。もちろん、これまでにそういう作品が無かったわけではなく、斬新な設定なわけでもないのでしょうが、こういったRPGモチーフの冒険もの(?)では珍しい設定だったのかもしれません。

  • ヒロインキャラがデレて魅力半減するのを防止できる

 以前にとある友人から持論として聴いたことなのですが、「ヒロインキャラが主人公にデレた瞬間から一気に魅力を感じなくなる」ということが防げる、と思います。
 この持論(?)ついても反論等あるかと思いますが、でも確かにデレるまでの関係性のほうが魅力的なケースは数多く挙げられるような気がしますし、あの堕ちるまでの関係性の緊張感みたいなものが面白かったりすることもあると思います。
 要は、例えば日常もののように、変わらない関係性をのんびりと楽しむことが出来るとも言い換えられるのではないでしょうか。

  • 恋人同士や誰が好きだとかっていう内容よりも、男女の友人関係が楽しい

 恋人同士になってしまう作品がそれほど多いとも思えませんが、恋愛感情を持ったり、そういう描写があったりしないほうが友人関係のままでいられるということで、より楽しいと感じる視聴者が少なくないのではないか、と考えています。
 日常系と呼ばれるアニメでは、同性同士(女の子同士)の友情がメインで描かれるわけですが、男女でだとどうしても恋愛だとか片思い展開を描きがちです。そこを、このすばでは誰にも片思いなどをさせず、更に言えば主人公が女性キャラに対してキョドったり照れたりせず、何よりあまり女の子扱いをしていないことで、より恋愛関係からは遠く、でも仲間としての距離の近さを描けていると思います。友情とは違うかもしれませんが、仲の良さはしっかり描けていますし、それが妙な心地よさを生み出しているのではないかと考えています。

  • 恋愛と食い合わせの悪いギャグを思う存分描ける

 これは持論なのですが、恋愛展開とギャグって相性が悪いと思っています。ギャグアニメといえばで名前が出てくる水島努監督の『よんでますよ、アザゼルさん。』や『監獄学園』などは、男女ともに出てくるアニメではありますが、メインキャラ間に恋愛関係だとか片思い的な描写はほとんど無かったと記憶しています。
 個人的には恋愛とギャグは食い合わせの悪さを感じてしまいます。具体的なタイトルは伏せますが、恋愛とか片思いみたいなものが入ってしまうと、笑わせるためだけのネタを入れる展開になりにくいと思っています。あっても勘違いネタとか鈍感主人公みたいなもの止まりになってしまうように思います。
 このすばではそうはなってないですよね。恋愛関係みたいなものは描いていないので、思う存分笑いの方向にも振り切った展開になっていると思います。1話の労働のところとか、まさにそんな感じでしたよね。

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 とまあ色々と書いてみましたが、原作やアニメのこの先の展開で、恋愛的なものが描かれるのかどうかはわかりません。ただ『これはゾンビですか?』でも男女の家族的な関係性を描いていた金崎貴臣監督なので、意識的に男女が同時に出てくるけどそこに色恋的なものは描かないようにしたい、という意識もあるような気がします。このすばエンディングは完全に家族ですからね。なので敢えて薄めているような気がしなくもありません。
 もう少し笑える展開が欲しいなあと思いつつも、この先もこのすばには注目していきたいと思います。